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【Q&A】スポーツ庁設置 予算集約できず 縦割り排除疑問
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選手強化の拠点となる東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで会見する世界水泳の日本代表チーム=2015年4月13日、東京都北区・ナショナルトレーニングセンター(今野顕撮影) 国のスポーツ施策を総合的に推進するスポーツ庁の設置法が成立しました。政府は10月1日の発足を目指しています。
Q どんな組織なの
A 2020年東京五輪・パラリンピックに向けたトップ選手の強化や、スポーツを通じた国民の健康増進などのスポーツ振興に専門的に取り組む官庁です。文化庁と同じように文部科学省の外局として設置されます。
Q きっかけは
A 学校体育や武道を中心に発展した日本のスポーツは、長く教育政策の一環と位置づけられてきました。しかし、五輪での獲得メダルを増やすにはスポーツを国策として強力に推進する必要があるとの声が高まり、11年にスポーツ施策の推進を「国の責務」としたスポーツ基本法が成立。13年に東京五輪の開催が決まり、設置への動きは一気に加速しました。
Q 何が変わるの
A スポーツ施策の権限は文科省のほか、施設整備は国土交通省、健康増進は厚生労働省といったように複数の省庁に散らばっています。スポーツ庁は文科省のスポーツ・青少年局を母体にして、他の府省から職員が加わり、120人規模の態勢になります。スポーツ関連事業を持つ省庁間の連携を深め、施策を効率的に進める狙いがあります。
Q スポーツ界の反応は
A 文科省のスポーツ予算は年々増加し、15年度は290億円になりました。ただ、東京五輪では金メダル数世界3位という高い目標があります。日本オリンピック委員会(JOC)や競技団体はスポーツ庁の誕生で、強化費の一層の充実を期待しています。一方で、東西冷戦下の1980年に政府の圧力でモスクワ五輪をボイコットせざるをえなかった苦い経験から、国のスポーツへの関与が強まることを心配する声もあります。
Q 課題は
A 子供のスポーツ離れやスポーツ施設の減少が問題になっている中、トップ選手の競技力向上だけでなく、国民が広くスポーツに親しめる環境の整備も進める必要があります。当初はスポーツ関連事業や予算をスポーツ庁に集約しようとしましたが、各省の反対もあって実現しませんでした。この態勢で本当に縦割りを排除して政策を進められるのか、疑問の声も上がっています。
Q 長官は
A 任命する下村博文(しもむら・はくぶん)文科相はスポーツに精通した指導力のある人物を理想とし、民間から起用する考えです。Jリーグ創設に尽力した日本サッカー協会最高顧問の川淵三郎氏らの名前が候補に挙がっています。
≪メダル量産へ「司令塔」 指導力が鍵≫
2020年東京五輪・パラリンピックの招致成功が追い風となり、スポーツ庁創設が決まった。スポーツ施策の一体化を進めることで国民の健康増進や競技人口の拡大、ひいては日本代表のメダル獲得増に期待が集まる。
ただ、関連事業の権限の多くは各府省が握ったままで、「司令塔」として指導力を発揮できるかが課題となる。
スポーツ庁設置法は当初、昨年秋の臨時国会で成立する見込みだった。政府内のスポーツ関連部署の統合を図ったが、事業や予算を手放すことになる各府省が難色を示して調整が難航。結局、スポーツ庁の役割は政府全体の調整役と位置付けられ、法案提出も今国会にずれ込んだ。
現行制度では、地方自治体が都市公園に整備する野球場や陸上競技場は、国土交通省の補助金の対象。トレーニングジムなどを持つ運動型健康増進施設は厚生労働省が認定している。こうした縦割りを排除し、東京五輪後も見据えた効果的な政策を打ち出せるかが問われることになる。(SANKEI EXPRESS)