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経済
「背水」サムスン 新型スマホ日本投入 アップル中心の市場 風穴開くか
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日本市場でのシェアが低迷する韓国サムスン電子は、「ギャラクシー」の最新モデルで巻き返しを狙う=2015年4月8日、東京都中央区日本橋(高橋寛次撮影) 韓国サムスン電子は8日、スマートフォンの新製品「ギャラクシーS6エッジ」を23日に発売すると発表した。日本国内におけるサムスン製スマホのシェアは約5%と低迷しており、サムスンの課題になっている。新製品で米アップルの「iPhone(アイフォーン)」との国内シェア差を縮め、世界市場でのシェア競争を優位に運ぶ考えだ。
新製品はNTTドコモとKDDI(au)を通じて発売する。価格はドコモが未定。auは2年契約を前提に端末代金を割り引く「実質価格」が4万4280円から。
S6エッジは画面の左右両端が湾曲して有機ELディスプレーを使っており、正面からは縁がないように見える。端末のサイズを抑えながら画面が大きく見えるように工夫している。
「このように、暗い場所でクオリティーの差が表れます」
東京都内で開いた発表会でサムスンは、「S6エッジ」とアップルの「アイフォーン6」で撮影した静止画や動画を大型スクリーンで比較し、画質の良さをアピールした。
サムスンがアップルへの対抗心を剥き出しにするのは、昨年10~12月期のスマホ世界販売台数でアップルに抜かれ2位に転落したからだけではない。日本ではアップルに完全に水をあけられているためだ。
IDCジャパンによると昨年の国内スマホ市場のシェアは、アップルが約6割を占めた。対するサムスンはその10分の1以下だ。携帯各社がアイフォーンを「実質0円」で販売するなかで、不利な競争を強いられた面もある。
サムスン電子ジャパンの石井圭介専務は、日本市場について「最重点エリアと位置づけ、販促費や広告宣伝費など、多大な投資を行う」と強調する。携帯販売店に専門のコーナーを設置するほか、説明員も数倍に増やしたという。
サムスンが日本市場にこだわるもう一つの理由が2020年の東京五輪だ。サムスンは最高位の五輪スポンサーだけに、石井専務は「今のようなシェアで開催を迎えることはできない」といい、スマホに端を発した業績不振からの脱却を急ぐ。
≪アップル中心の市場 風穴開くか≫
サムスン電子の最新スマートフォン「ギャラクシーS6」シリーズは、革新的なデザインが評価される一方で、販売する携帯電話会社からは「(米グーグルのOS『アンドロイド』を搭載した)数ある端末の一つにすぎない」との本音も聞こえる。日本でのシェア奪還に意気込むサムスンとの“温度差”は否めない。
かつて、サムスンが日本で高いシェアを誇った背景には、NTTドコモが携帯電話販売の重点をサムスンとソニーの2社に置く「ツートップ戦略」の後押しがあった。だが、ドコモは2013年秋にアイフォーンの販売を開始。携帯大手3社がアイフォーンの販売に集中し、結果的にアップルがシェアを拡大した。
ギャラクシーS6シリーズは、ドコモとKDDI(au)で初めてデータ通信速度が毎秒225メガビットの新規格「LTEアドバンスト」に対応した端末となる。それでも、アイフォーンの新機種発売時に行ったような「下取りサービス」の予定はない。
MM総研の横田英明取締役は「日本のスマホ市場は、今やアップルを中心に回っている」というだけに、風穴を開けられるかどうかは未知数だ。