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2014年度旅行収支 55年ぶり黒字 中国人観光客の「爆買い」原動力

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2014年度旅行収支 55年ぶり黒字 中国人観光客の「爆買い」原動力

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家電量販店で買い物する春節休暇中の中国人旅行客=2015年2月20日、東京都千代田区(共同)  財務省が13日発表した2014年度の国際収支速報によると、海外とのモノやサービス、投資の取引状況を示す経常収支の黒字額は7兆8100億円となった。前年度(1兆4715億円)を上回り、4年ぶりに拡大した。旅行者のお金の出入りを示す「旅行収支」は2099億円の黒字。訪日旅行者の増加で、1959年度以来55年ぶりに黒字となった。

 旅行収支が黒字になったのは、円安が進み急増した訪日観光客の買い物が大きく伸びた一方、海外旅行する日本人が減ったためだ。査証(ビザ)発給の要件緩和や消費税の免税対象の拡大といった政府の誘致策も後押しし、14年度の訪日旅行者は前年度比33.6%増の約1467万人と過去最大だった。

 経常収支の改善は、原油価格の下落や円安効果による貿易赤字の縮小に加え、海外投資から得る利子や配当を示す第1次所得収支が伸びたことが貢献した。

 14年度の貿易収支の赤字額は6兆5708億円となり、前年度より4兆4479億円減った。輸入は液化天然ガス(LNG)が増え、前年度比1.8%増の82兆1839億円。輸出は自動車が好調で8.4%増の75兆6132億円だった。

 第1次所得収支の黒字額は10.1%増の19兆1369億円で、比較可能な85年度以降で最大。貨物輸送や旅行に伴うサービス収支は2兆8102億円の赤字だった。

 同時に発表した15年3月の経常収支の黒字額は2兆7953億円となり、前年同月と比べ2兆6646億円増えた。9カ月連続の黒字。サービス収支は初めて黒字となった。黒字額は1678億円だった。

 ≪中国人観光客の「爆買い」原動力≫

 2014年度に外国人旅行者が日本で使ったお金が、日本人が海外で使ったお金を55年ぶりに上回った。旅行収支が黒字になった牽引(けんいん)役は、ブランド品をまとめて購入するなどの中国人観光客の「爆買い」だ。消費低迷に苦しむ小売業界を潤しているが、訪問先は東京、京都といった定番コースに偏っている。外国人客を地方に誘致するには、観光地の情報発信が鍵を握る。

 人気支える口コミ情報

 「日本での買い物が大好き。年に2~3回は、化粧品やブランド品を買いに来ます」。12日に東京・銀座の松屋銀座店を訪れた中国人旅行者の謝燕雪さん(27)は、高級ブランド品の売り場で目を輝かせた。日本で買う理由は「売り場がきれいで、偽物がないから安心」と話す。商品を持ち帰るため、空のスーツケースを3つも用意してきたという。

 家電量販店を展開するエディオンは今年2月、東京・秋葉原の店舗の1、2階を外国人専用に改装した。外国人旅行者の購入額はこの店舗全体の約6割に達する。

 観光庁の推計では、14年に外国人が訪日旅行で使ったお金は前年比43.1%増の2兆278億円と、過去最高を記録した。中でも中国人客は5583億円と全体の27.5%を占めた。円安に加え、消費税の免税対象が食品や化粧品に拡大されたことや、ビザ(査証)の発給要件が緩和されたことも追い風になった。

 中国・上海にある旅行会社は今年、団体旅行で前年比2.5倍の5万人を日本に送り込む計画を立てている。人気を支えるのは「接客サービスが良く、食事がおいしい」「モノが安い」といった口コミ情報だ。日本ブランドの服やバッグを購入するのが目的の顧客も増えた。

 「ドラマで見た東京・歌舞伎町のホストクラブを体験したい」(20代女性)、「野球漫画に出てきた甲子園に行きたい」(30代男性)。日本のポップカルチャーを現地で体験するため日本を目指す若者も目立つ。旅行会社の幹部は「20年の東京五輪まではこの勢いが続くだろう」とそろばんをはじく。

 偏る観光地、地方誘致課題

 ただ、こうした活況は大都市や伝統的な観光地に偏っている。外国人が14年にホテルや旅館に宿泊した回数を都道府県別にみると、トップは東京都で、大阪府、北海道、京都府が続く。

 大手百貨店の三越伊勢丹HDでも、売上高に占める外国人の購入額の割合は、14年度は銀座店が12%程度だったのに対し、新潟市、広島市、高松市の店は0.2%以下にとどまった。

 政府は、地方空港を利用して周遊できる観光ルートの開発や、免税店を地方に広げる取り組みを進めているが、地方の観光地の知名度をどう上げていくかが課題だ。

 長野県内で外国人客が多く訪れる旅館を経営する男性は「外国人がタブレット端末で地図を見ながら田舎町にたどり着く時代になった」と指摘する。「インターネットをうまく使って情報発信すれば、外国人客を引き寄せられる」と話す。

 一方、地方で多くの家電量販店を展開するケーズホールディングスの遠藤裕之社長は「(中国などからの)外国人客はやがて自国の商品を買うようになる。今は一過性の特需にすぎない」と冷ややかだ。急増する訪日外国人が地域活性化の切り札になるのか、見方は分かれている。(SANKEI EXPRESS

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