ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
政治
地方で30万人雇用 東京集中是正へ 創生戦略・経済対策を閣議決定
更新
臨時閣議に臨む安倍晋三(しんぞう)首相(左から2人目)と閣僚ら=2014年12月27日午後、首相官邸(宮崎裕士撮影) 政府は27日の臨時閣議で、人口減少問題を克服する5カ年の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」と、地域活性化策を柱とする総額3兆5000億円の経済対策を決定した。3兆1000億円程度の2014年度補正予算案を編成し、総合戦略の一部を先行実施する。安倍政権が重要課題とする地方再生は実行段階に入るが、景気が停滞し、財政にも余裕がない厳しい環境下での船出となる。
安倍晋三首相は閣議前の日本経済再生本部の会合で「個人消費のてこ入れと地域経済の底入れを図り、経済の好循環を全国に拡大していく」と述べた。総合戦略の施策は15年度の税制改正大綱や予算案にも盛り込む。来春の統一地方選を視野に地方重視の姿勢をアピールする。
少子高齢化で日本の人口は急減しており、経済成長や地域社会の維持が困難になる恐れが出ている。
少子化に歯止めをかけ、都市部に流出した企業と人材を地方に呼び戻すには、政府が打ち出した今回の将来ビジョンに、国民の理解と協力を得られるかが鍵を握る。
人口減対策の総合戦略は、地方で若者の雇用を創出する数値目標を掲げた。非正規雇用の正社員化を促し、フリーターを20年時点で13年と比べて58万人減らし、124万人にする方針も示した。ただ、全体に数値目標が目立ち、具体策は各省庁の施策の焼き直しにとどまった。
経済対策では、地方自治体向けの交付金の創設が目玉となる。総額4200億円のうち、移住促進など総合戦略を先行実施する事業費に1700億円を振り向ける。残る2500億円は地域商品券発行などの消費喚起策に活用される。
4月の消費税増税や円安による物価高で家計は苦しく、中小企業の業況回復も遅れており、政府の対策に呼応して消費や投資が活性化するかは見通せない。
政府は27日の臨時閣議で15年度予算編成の基本方針も決定した。14年度補正予算案は来年1月9日に決定する。1月14日に決まる15年度予算案は、高齢化に伴う社会保障費の増加により、一般会計総額が14年度に続いて過去最大になる見通しで、財政面で打つ手は限られてきている。
≪地方で30万人雇用 東京集中是正へ≫
人口減少対策の5カ年計画「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は、地方に若者の雇用を創出、2020年時点で東京圏から地方への転出者を13年より4万人増やすといった数値目標を明記した。東京一極集中に歯止めをかけ、疲弊した地域経済を活性化させる狙いだ。
具体策として、地方の生活情報の提供や就職の相談窓口となる「地域しごと支援センター」の設置や、本社機能を地方に移す企業への税制優遇措置などを打ち出した。
政府は自治体に15年度中に「地方版総合戦略」を作成するよう求めており、小規模市町村への職員派遣や、14年度補正予算で創設する新たな交付金で戦略作成を支援する。ただ、市町村への農地転用許可の権限移譲は「14年度内に検討する」との表現にとどまるなど地方分権への積極姿勢は見られず、「国から地方への政策の押し付け」との指摘も出ている。
総合戦略は、20年までの5年間で地方に30万人分の若者(16~34歳)の雇用を生み出す目標を掲げた。東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川の4都県)からの転出者を13年の37万人から4万人増やし、転入者を47万人から6万人減らして、転出・転入を約41万人で均衡させる。
目標達成に向け、農林水産業で加工から販売まで担う「6次産業化」や輸出の支援、訪日外国人旅行者を2000万人に増やすといった産業別の取り組みを進め、雇用拡大を図る。
地方の中小企業の人材不足を補うため、大企業などで勤務経験がある移住希望者を仲介する「プロフェッショナル人材センター」や、都市住民が地方でも一定期間暮らす2地域居住をPRする「地方居住推進国民会議」も設置する。
戦略とともに決定した人口の将来展望を示す「長期ビジョン」は、女性が生涯に産む子供の数を推計した合計特殊出生率(13年1.43)が30年に1.8、40年に2.07程度に上昇すれば、60年に1億人程度を維持できるとの見通しを示した。(SANKEI EXPRESS)