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政治
【衆院選】各党公約 経済、安保どう向き合う
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公示前の選挙ポスター掲示場=11月30日(蔵賢斗撮影) 2日に公示される衆院選。各党が政権公約を掲げているが、世論調査では解散・総選挙自体に否定的な声が強く、投票率の低下も懸念されている。衆院選は政権選択の選挙であり、各党が経済政策や安全保障政策といった主要な争点にどう向き合っているかをしっかり見極め、一票を投じたい。
≪アベノミクス≫
最大の争点とされる安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の是非をめぐり、与野党でその評価は鮮明に分かれた。
自民党は公約で、賃上げ率が「過去15年で最高」、倒産件数が「24年ぶりの低水準」とし、アベノミクスの成果を強調する。地方経済の低迷が続いているとの指摘を踏まえ、「地方に実感が届く景気回復を加速させる」とした上で、「日本再生のためにはこの道しかない」と、政策の継続を訴えた。公明党も「経済の好循環を確かなものにする」と評価した。
これに対し、民主党は「実質賃金は15カ月連続マイナス」と指摘。アベノミクスは国民生活を悪化させ、格差を固定化・拡大させたとして路線転換を主張。中小企業対策や非正規労働者の待遇改善など「厚く、豊かな中間層」の創出を目標に掲げた。
維新の党は「金融緩和のみに頼っても国民の生活を守れない」と、アベノミクスの柱の一つである日銀の大規模緩和の修正を主張。次世代の党は基本的方向性に賛同しつつ、金融政策への過度の依存を是正すべきだとした。共産、生活、社民の各党は大企業や富裕層を優遇し格差が拡大したと非難した。
大和総研の熊谷亮丸(くまがい・みつまる)執行役員チーフエコノミストは、野党の大半がアベノミクスの方向性を否定している点を疑問視し、「改善されている点は正しく評価し、地方経済の低迷など不十分な点について訴えるべきだ」と強調する。
≪集団的自衛権≫
安全保障政策では自民、公明、次世代の各党が関連法制の整備を進めることを明記した。ただ、自民党は昨年7月に閣議決定した集団的自衛権の行使容認について直接触れず、「切れ目のない対応を可能とする安保法制を速やかに整備する」との表現にとどめた。党内にも憲法解釈を見直すという手法に対し異論があるためだ。
これに対し、民主党は集団的自衛権について「行使一般を容認する憲法の解釈変更は許さない」とし、閣議決定の撤回を主張した。ただ、やはり党内に賛否両論があり、行使容認自体の是非は示さなかった。
維新の党は「現行憲法下で可能な自衛権行使の在り方を具体化し法整備する」との表現にとどめた。
上智大の中野晃一教授(政治学)は「自民党が国民の意見が分かれる政策を前面に出さないのは、前回選挙から一貫している」と指摘。民主党公約についても「細かく読むと自民党とあまり代わり映えしない。党内で意見が割れているためだろう」と突き放した。
≪地方創生≫
安倍政権が看板に掲げた人口減少対策や地域活性化のための「地方創生」。自民党は地域商品券の発行支援などのほか、目玉策として、自治体が使える自由度の高い交付金の創設を明記。地方への移住や企業移転を後押しし、新たな産業や雇用創出のための規制緩和を進める「地方創生特区」を導入するとした。
民主党は使いやすい「一括交付金」を創設し、自治体への権限・財源移譲を推進するために「国・地方関係抜本改革推進法」を制定するとした。
元愛媛県知事の加戸守行氏は「各党いろいろ書いているが五十歩百歩。結局、お上(かみ、国)が気に入ったものには金を出してやるが、そうでないものには出さないというのが過去の例だから、いずれも実際に効果があるかどうかは未知数。地方の主体性をどこまで尊重しながらやるかの議論を選挙戦で深めてほしい」と注文を付けた。
≪原発再稼働≫
エネルギー政策は原発の推進と撤退に分かれた。自民党は原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、安全性確保を前提に再稼働を推進する方針を示した。公明党は原発新設は認めないとしながらも、「40年運転制限制を厳格運用」とし、既存原発を活用する方向性を示した。
野党では、前回の衆院選から「2030年代原発ゼロ」を掲げている民主党は「政府の責任ある原発の避難計画がなければ再稼働に反対」とした。共産党は「即時原発ゼロを決断」、社民党は「脱原発社会を目指す」、生活の党は「原発再稼働、新増設は一切容認しない」とうたい、維新の党も「原発依存から脱却」を打ち出している。
国際環境経済研究所の澤昭裕所長は野党の公約について、「原発をやめた場合の代替案が書かれていない。国民負担をどう抑えるのか、その方法を示さなければ意味がない」と指摘した。(SANKEI EXPRESS)