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【衆院選】アベノミクス功罪 株式市場には恩恵 成長戦略道半ば
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【衆院選】アベノミクスによる経済指標の変化=2014年11月21日。※消費者物価指数、現金給与総額、実質消費支出は前年同月比増減率。2014年9月の消費者物価指数は消費税増税分を除く。 安倍晋三首相はアベノミクスを衆院選最大の争点と位置づけた。日銀の大規模な金融緩和は大幅な円安株高を実現し、財政出動は景気を下支えしたが、成長戦略は道半ばだ。景気回復の恩恵は地方まで十分に波及せず、家計や中小企業に円安の副作用が広がる。期待の輸出はなかなか回復せず、人手不足という課題にも直面、消費税増税の高い壁を乗り越えられなかった。
安倍首相は21日の記者会見で「アベノミクスを前に進めるのか、それとも止めてしまうのか、それを問う選挙であります」と言い切った。
デフレ脱却を最大の目標に据えたアベノミクスは、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁の就任とともに動きだした。2013年4月4日、黒田総裁は「2年で2%の物価上昇」を目指し、大規模な金融緩和策を導入。今年10月31日には約1年半の沈黙を破り、電撃的な追加金融緩和に踏み切った。
その規模は予想を超え、市場は活況に沸いた。政権発足前日の12年12月25日終値で1万80円だった日経平均株価は21日、約1.7倍の1万7357円で取引を終えた。円相場も1ドル=84円台から117円台まで約4割下落した。
アベノミクスは「円安で企業の競争力が高まり、輸出が伸びて外貨を稼ぐ。これが国内の設備投資を刺激し、雇用が増える。大企業がもうかれば恩恵は底辺にまで染み出す」(首相)仕組みだ。
だが大企業の生産拠点の海外移転が想定以上に進んでおり、輸出が伸びなかったのが誤算だった。下請け中小企業の受注は伸びず、原材料のコスト増だけがのしかかり、円安倒産も増えた。
急速な円安で電力料金や原材料、食品の価格が上昇し中小企業や家計も直撃した。雇用や所得は増えたが、物価高や増税負担を補うには力不足で、消費者は節約志向を強めている。農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「円安の負担は地方経済や家計に大きくマイナス面が目立ち始めている」と指摘する。
安倍政権は12、13年度とも公共事業を中心とする大規模な補正予算を編成し、14年度当初予算も95兆9000億円規模と過去最大に膨らんだ。
財政出動で経済を支える姿勢を鮮明にした。公共事業の拡大は地方経済の浮揚に一役買ったが、人手不足で工事は遅れた。国の借金は増えたが、公共事業の景気刺激効果は十分に発揮されなかった。
成長戦略では「岩盤規制を打ち破る」(首相)ため地域限定で規制緩和を認める「国家戦略特区」は衆院解散で関連法案が廃案となった。
一方、期待以上だったのが「観光立国」だ。ビザ発給要件緩和や円安で、今年1~10月の訪日外国人は約1100万人と前年同期比27%増え、百貨店や宿泊施設に恩恵をもたらした。
安倍首相は記者会見で、「厳しい地方経済へと景気回復の温かい風を送り届けてこそ、アベノミクスは完成する」と決意を示した。
≪再増税延期で自動車取得税廃止先送り 予算日程タイトに≫
衆院解散により来年度の予算編成は越年する。景気に悪影響を与えないよう政府は来年3月末までの予算成立を目指すが、綱渡りの作業となる。消費税の再増税が延期されたことで、同時廃止を予定していた自動車取得税は存続が固まった。社会保障の充実策も一部先送りが検討され、支援を期待した世帯には肩すかしとなる可能性がある。自動車取得税は車を買う際に価格の一定割合を納める。消費税率10%への再増税が予定された来年10月の廃止が決まっていたが、再増税延期により棚上げとなる。
来年度に始まる法人税の実効税率引き下げにも余波が広がりそうだ。初年度の下げ幅は宮沢洋一経済産業相が表明した「2.5%以上」を軸に調整が進んでいた。再増税延期による財源不足の帳尻を合わせるため、法人税の下げ幅圧縮が検討される可能性がある。
消費税の増税分を充てる計画だった社会保障の充実策をめぐっては、麻生太郎財務相が21日「優先順位をつけてやらざるを得ない」と語った。子育て支援策は優先的に確保する方向だが、年金関連など一部は先送りされる可能性が出てきた。
与党は選挙に勝った後、短期集中で税制、予算を取りまとめる日程を描く。まずは経済対策を年内につくり、2014年度補正予算案を年明け早々に決定する。自民、公明両党の税制調査会は来年1月9日に税制改正大綱を決定する日取りを確認済みだが、国会の審議日程を考慮し年内に前倒しする案も出ている。
予算案は来年1月中旬の閣議決定を目指す。選挙の結果次第でいずれの日程も流動的で、予算案の国会提出が遅れれば審議時間が足りず、14年度中の成立があやうくなる。年度内に成立しなければ、必要最低限の支出を計上する暫定予算を編成することになる。(SANKEI EXPRESS)