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【衆院選】補正3兆円 景気下支えへ経済対策

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【衆院選】補正3兆円 景気下支えへ経済対策

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経済財政諮問会議であいさつする安倍晋三(しんぞう)首相(左から2人目)=2014年11月18日午後、首相官邸(酒巻俊介撮影)  安倍晋三首相(61)は18日の経済財政諮問会議で、景気の落ち込みに対処する経済対策の策定とその裏付けとなる2014年度補正予算案の編成を指示した。4月の消費税率引き上げ後、回復が遅れている家計の負担軽減策や円安に伴う燃料費高騰への対策などが柱。景気の腰折れを防ぎ、デフレ脱却を加速させる狙いだ。

 首相は会議で「経済の好循環を確かなものとし、地方にアベノミクスの成果が広く行き渡るようにしなければならない」と述べた。補正予算案の規模は2兆~3兆円を想定。ただ、政府・与党からは景気の早期回復を求めて歳出圧力が強まっており、総額はさらに膨らむ可能性がある。来月の衆院選投開票後に補正予算案の詳細を決定し、来年1月の通常国会に提出する。

 経済対策では、円安による燃料費の高騰に対応し、寒冷地や漁業者などへの補助金を拡充。自動料金収受システム(ETC)を使うトラックを対象に、今年度末で終了予定だった高速道路料金を最大5割引きする制度を来年度も延長する。

 4月の増税後の反動減が続いている住宅需要のてこ入れのため、省エネ性能の高い住宅を新築・改修した人に、商品と交換可能なポイントを付与する「住宅エコポイント」を再開する方向だ。物価上昇で実質賃金が減少している家計に配慮し、年収が一定以下の所得者向けに給付金や商品券の配布を検討する。

 公共事業では、東日本大震災の復興事業のほか、火山・土砂災害の復旧支援を中心に防災・減災対策に絞り込み1兆円程度を計上する予定。

 財源は、13年度決算で余った剰余金1兆4000億円や14年度税収の上振れ分、国債費の利払い費で使い残した予算などを活用する。

 ≪再増税延期 財務省の「敗北」確定≫

 安倍首相が消費税再増税の延期を正式に表明したことで、来年10月の消費税10%への引き上げを目指してきた財務省の“敗北”が確定した。ただ、1000兆円という世界最悪の債務残高を抱える日本が、財政健全化の手綱を緩めることは許されない状況は変わらない。財務省は2020年度の財政健全化目標を照準に、消費税10%超への引き上げをも見据え始めた。

 楽観ムード一転

 「完敗だ…」。今月中旬、ある財務省幹部は大きく肩を落とした。12日、産経新聞が「消費再増税1年半延期」と報じて以降、各紙も相次いで再増税延期を報道。財務省が総力戦で目指してきた再増税の可能性は大きくしぼんだ。

 財務省は官邸に対し、再増税を延期すれば、安倍政権の看板政策である子育て支援策が不可能になると再三、訴えてきた。財務省幹部が自民党の若手議員や大学教授はおろか、雑誌編集者など財政に“門外漢”の人にも財政健全化と消費税再増税の必要性を説いて回った結果、再増税実現に大きな手応えを感じていた。

 さらに10月31日、日銀がこの日追加緩和を決め、日経平均株価は大きく跳ね上がった。黒田東彦(はるひこ)総裁(70)は元財務官で、再増税による財政再建の重要性を力説してきた経緯がある。「市場は再増税を評価している。安倍首相も無視はできない」(幹部)。財務省内には楽観ムードすら漂っていた。

 しかし、結論は全く逆だった。ある幹部は「戦略ミスだった」とこぼす。経済情勢次第で増税を停止できる「景気条項」の撤廃を勝ち取ったのが唯一の収穫で、敗北感は濃い。

 「次の工程勝負」

 ただ、再増税は延期されたが、財政の立て直しには消費税の再増税は避けられない。消費税率を10%に引き上げても、20年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)は11兆円の赤字が残る。この赤字を消費税で穴埋めするには、さらに4%程度の引き上げが必要になる計算だ。

 財務相の諮問機関である財政制度等審議会は今年5月、来年夏までに今後5年間の財政健全化の具体的な工程を示すよう求めている。財務省幹部は「次の勝負はここだ」と話し、財政健全化目標を“錦の御旗”に、消費税再増税へのリベンジを果たそうとしている。(小川真由美/SANKEI EXPRESS

 ≪「来年10月」に賛成6割超≫

 政府は18日、有識者による景気点検会合の最終回を首相官邸で開いた。計5回の会合に45人が出席し、消費税率10%への再増税に関し、6割以上が予定通り来年10月の実施に賛成した。反対または再増税の延期を求めたのは約2割にとどまった。有識者の大半が安倍首相の方針と異なる意見を表明した。

 政府は昨年8月、8%への増税を前に有識者60人を集めて点検会合を開催した。このときは73%に当たる44人が予定通りの実施に賛成した。今回は賛成派の割合が前回より低下。景気回復の遅れなど厳しい経済情勢が影響した。

 賛成派の多くは、医療や年金、少子化対策などの社会保障財源の確保や財政健全化の重要性を強調した。18日の会合では、関根近子資生堂執行役員常務が「子供につけを先送りしないのは現役世代の使命だ」と訴えた。

 反対や延期を主張した有識者は足元の景気を理由に挙げた。首相ブレーンの本田悦朗内閣官房参与は「今はデフレ脱却の千載一遇のチャンスだ」と指摘し、2017年4月までの延期を求めた。(SANKEI EXPRESS

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