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解散・再増税先送り 首相きょう表明 伸び悩む個人消費「反動減でない」
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国内総生産(GDP)速報値の発表を受け、官邸に入る安倍晋(しんぞう)三首相(右)。その胸中やいかに=2014年11月17日、東京都千代田区(酒巻俊介撮影) 安倍晋三首相(60)は17日、一連の外交日程を終えて帰国した。消費税率10%への再引き上げの判断材料となっている7~9月期の国内総生産(GDP)速報値が実質で前期比0.4%減、年率換算で1.6%減となり、首相は18日に記者会見を開いて再増税の先送りを明らかにし、あわせて衆院解散を表明する。衆院選は「12月2日公示-14日投開票」の日程で行われる。
安倍首相は17日に帰国後、公明党の山口那津男(なつお)代表(62)と都内のホテルで会談した。消費税再増税を2017(平成29)年4月まで1年半の先送りを決断し、衆院解散・総選挙に踏み切る考えを伝えたとみられる。その後、官邸に入り、衆院解散に向けて菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)らと最終的な調整に入った。
衆院の解散は、地方創生関連法案を成立させるため、19日から21日までずれ込む可能性がある。
首相は会談後、同じホテルで開かれた公明党結党50周年記念の集会に出席、7~9月期GDPがマイナス成長だったことを受け、消費税再増税に関し、「長く続いたデフレから脱却できるチャンスを手放すわけにはいかない。引き上げるべきか冷静に分析し、判断したい」と述べた。
山口氏は会談に先立ち、国会内で記者団に「国民の理解を得る必要があるかどうかは首相の判断に任せる」と述べ、衆院解散・総選挙を断行する首相の判断を尊重する意向を示した。
菅氏、自民党の谷垣禎一(さだかず)幹事長(69)、公明党の井上義久幹事長(67)らは政府・与党協議会を国会内で開き、衆院解散・総選挙に向けた日程などをめぐって意見交換した。
首相は18日夕に官邸で開かれる経済財政諮問会議に出席し、新たな経済対策の策定を指示する。続いて、山口氏と改めて党首会談を行い、記者会見に臨む。会見では、景気の失速懸念に対応するため、14年度補正予算を編成し、新たな経済対策を実施する考えも表明するとみられる。
≪伸び悩む個人消費「反動減でない」≫
7~9月期のGDPの結果は、4月の消費税増税が日本経済に与えた打撃の大きさを裏付けた。消費税増税に賃金の改善が追いつかず、個人消費の回復が遅れたためだ。円安による輸入物価の上昇も重なって個人消費の回復は鈍い。企業業績は堅調を保っているが、再増税延期で景気の好循環が強まる期待もあるが、先行きは楽観できない。
「財布のヒモが固く、なかなか販売に結びつかない」。首都圏のトヨタ系販売会社では、11月前半の受注実績は前年同月比で半減近くまで落ち込んだ。消費税増税から半年あまり、一定の回復が期待されたが、社幹部は「ここまで落ち込みが長引くと、もう反動減とはいえない」と首をかしげる。
消費税増税後は高額な耐久消費財ほど消費の現場に影響を及ぼしている。パソコンの販売も10月は前年同月比約25%減と落ち込んだ。耐久消費財は単価が下落傾向の中でも、販売が戻らない状況にあり、片岡剛士・三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員は「低所得者が消費税増税でお金がなくなり、耐久消費財を買っていない」と分析する。
一方で、回復の足取りが重かった衣服など身の回りの消費には変化の兆しも出始めている。株高に伴う資産効果で富裕層を中心に需要が戻りつつあるためだ。百貨店では、松屋銀座店の11月売上高(16日現在)が高級ブランドバッグや秋冬物衣類の好調により、前年同月比で10%増加した。
円安を背景に企業の投資意欲にも改善の兆しが見られる。日銀の9月全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業全産業の2014年度の設備投資計画は前年度比8.6%増と7年ぶりの高水準を記録。9月の機械受注統計も、民間設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」の受注額が4カ月連続の増加と回復の兆候を示した。
ただ、先行きの景気リスクは払拭できていない。急速な円安の影響などで食料品の値上げが相次ぎ、家計の負担は増している。第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは「再増税の延期を決めた場合でも、当面の国内景気の持ち直しペースは、緩やかなものにとどまるだろう」とみる。再増税延期後の日本経済も、バラ色一色とは言い切れない。
≪財務省「予定通り」に官邸激怒≫
消費税率10%への再引き上げをめぐり、財務省が来年10月から予定通りに実施するよう固執し、自民党議員に「ご説明」に回った。官邸サイドは「増税容認」で外堀を埋めようとする動きだとして激怒、安倍首相が再増税見送りと衆院解散・総選挙を決意した遠因とされている。
10月下旬、自民党有志でつくる「アベノミクスを成功させる会」会長の山本幸三衆院議員は、出席者が減ったことについて「財務省が根回しをしている」と財務省への不満をみせた。
財務省は特に、再増税に慎重な議員に集中して押しかけた。省幹部は、ある若手議員に再増税をしきりに訴えたという。若手は「景気はかなり悪い」と反論すると、財務省幹部は「景気は回復していきます」と楽観論を振りかざした。その言いぶりは、まさに「上から目線」だったという。(SANKEI EXPRESS)