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【衆院選】ぼやける争点 投票率低下を懸念

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【衆院選】ぼやける争点 投票率低下を懸念

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衆院を解散し、自民党の両院議員総会で拳を振りかざす安倍晋三(しんぞう)首相(中央)=2014年11月21日午後、国会内(ロイター)  安倍晋三首相(60)は、21日の衆院解散を「アベノミクス解散」と命名し、2年近くの経済政策について国民の信を問う意向を表明した。今回の衆院選ではほかに、集団的自衛権の行使を容認する安全保障法整備や原発再稼働など、与野党の対立軸が明確な懸案も多い。首相が決断した消費税再増税の先送りに全野党が反対しないことで争点がぼやけ、投票率の低下につながると懸念されている。

 この道しかない

 「『アベノミクス隠し』の指摘は間違っている。この経済政策が正しいのか間違いか、他に選択肢はないのか、堂々と問いたい」。首相は21日夕の記者会見で、解散の真意をこう語った。

 「景気回復、この道しかない」

 自民党は21日の選対本部会議で、衆院選のスローガンをこう決定。再増税を1年半先送りし、経済再生を最優先した首相の判断をストレートに表したものだ。

 首相は選対会議で「日本の将来に向けて、どの党がしっかりしたビジョンを持ち、どの党のものが正しいのか。それをいかにわかりやすく説明できるかに勝負がかかっている」と力説し野党との差異を浮き上がらせるようハッパをかけた。

 消費税再増税の「凍結」を決めた民主党は、枝野幸男(ゆきお)幹事長(50)が21日の記者会見で「解散の大義を見いだせないまま解散になった」と訴えた。いわば政策の「争点隠し」を図り、首相の解散判断そのものを問う戦術に出ている。

 「大義なし」前面に

 ただ、本当に争点はないのか。第2次安倍政権を振り返ると、与野党が厳しく対峙(たいじ)する政策は多かった。

 機密を漏らした公務員らへの罰則を強める特定秘密保護法をめぐって、民主党は昨年12月の国会審議で徹底抗戦した。原発再稼働について、自民、民主両党は「条件付き容認」と同じスタンスだが、民主党は再稼働に強く反対する菅直人(かん・なおと)元首相(68)を公認している。

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設問題では、民主党の海江田万里(かいえだ・ばんり)代表(65)が「(与党系現職が敗北した)沖縄県知事選の結果を無視して強引に進めることは許されない」と言及。「結果にかかわらず粛々と移設を進める」(菅義偉(すが・よしひで)官房長官)という政府との違いが際立っている。

 さらに来年の通常国会では、安全保障法制関連法案が10本以上提出される予定だ。法案に絡む与党協議のメンバーだった自民党の中谷元(なかたに・げん)幹事長特別補佐(57)は21日、「今回与党が勝てば『きちんと国民の信任を得て法整備した』と言い切れる」と語った。

 今回の衆院選は、経済政策だけでなく国の将来のあり方に直結する難題を問う選挙でもある。それでも、野党が政策論争よりも「大義のない選挙」を前面に掲げて「争点隠し」に出ることで、投票率が「前回衆院選より世論の関心が低く、55%台まで落ち込む可能性もある」(自民党幹部)とみられている。

 2012年12月の前回衆院選の投票率は59.32%と、03年の衆院選以来6割を切り戦後最低だった。(水内茂幸/SANKEI EXPRESS

 ≪臨時国会 法成立率69.7%≫

 第187臨時国会は21日、衆院解散で閉会し、安倍首相が重要法案と位置付けた女性活躍推進法案をはじめ計10本が廃案となった。政府が提出した33法案のうち地方創生関連法など23本が成立した。30日の会期末を待たずに閉会したため、成立率は前回通常国会の96.5%より低い69.7%。党首討論も開催されなかった。

 女性活躍推進法案と、衆院審議で野党の激しい抵抗を受けた労働者派遣法改正案は、いずれも来年の通常国会で再提出し、成立を目指す。

 五輪担当相を新設する特別措置法案の廃案により、五輪担当相の設置は来春以降になりそうだ。首相は臨時国会で成立させ、遠藤利明元文部科学副大臣(64)を起用する方針だった。

 超党派による議員立法の統合型リゾート施設(IR)整備推進法案は、与党内の反発も強く、審議入りすらできなかった。カジノ推進派が目指す2020年の東京五輪・パラリンピック前の開業は厳しいとされるが、通常国会で再提出する方針だ。

 選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げる議員立法の公職選挙法改正案は、19日に提出されたばかりだった。6月に施行された改正国民投票法が、憲法改正国民投票の投票年齢を18年から「18歳以上」へ引き下げることに伴う措置で、通常国会で再提出し、16年の参院選から適用を目指す。(SANKEI EXPRESS

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