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「食」がテーマ ミラノ万博、開幕目前 最大規模日本館 しょうゆ・うま味アピール
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ミラノ万博会場の「日本館」で研修に励むアテンダントら=2015年4月20日、イタリア・ミラノ郊外(共同) イタリア北部ミラノで5月1日、「食」をテーマにした国際博覧会(万博)が開幕する。約150の国や国際機関が参加し、最大規模の「日本館」を含む54カ国・機関が独自の展示館を設置。各国が伝統的な食文化の魅力をアピールするほか、飢餓や肥満、食品廃棄など地球規模の問題へのメッセージを発信する。開催期間は10月31日までで、2000万人以上の入場者を見込んでいる。
会場はミラノ中心部から北西の郊外にあり、中心部からは地下鉄や鉄道で約20~30分。約1.1平方キロメートルの敷地内では二つの大通りが交差し、南北を結ぶ「カルド」は開催国イタリアの展示スペースで、東西を結ぶ「デクマーノ」には参加各国の展示館が並ぶ。
イタリアはパスタやチーズなど地域色豊かな食材や料理を紹介し、伝統の食文化を守ることを目指すイタリア発祥の「スローフード」運動も提唱。
日本館は敷地面積約4170平方メートルで、参加国の中で最大規模。「共存する多様性」をテーマに、自然との調和を基本とした農林水産業の取り組みや、「一汁三菜」や発酵食品などの食文化に込められた知恵や技を紹介し、持続可能な食料供給への解決策を提案する。
独自の展示館を持たない国々は、コメやカカオ、コーヒー、スパイスなど食材別の展示館を共同運営する。
開幕が迫り、ミラノ市内では万博のロゴマークや会場への方向を示した標識などが目立ち始め、ムードが盛り上がってきている。
一方、会場の建設は遅れており、突貫工事が続く。ミラノ万博公社のジュゼッペ・サラ代表は「作業員を最大約7500人に増員し、急ピッチで仕上げに掛かっている」と強調するが、開幕当初は混乱も予想される。(共同/SANKEI EXPRESS)
≪最大規模日本館 しょうゆ・うま味アピール≫
ミラノ国際博覧会(万博)に設けられる「日本館」には過去最多の自治体が参加し、和食のもてなしを通じて、日本の農産物の輸出拡大や訪日客の誘致を目指す。食品メーカーも日本が誇るしょうゆや「うま味」をアピールし、販売先を世界中に広げたい考えだ。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された和食は、健康志向も追い風に海外で関心が高まっている。「日本館」では27組35自治体が、特産品や食器などの伝統工芸品を紹介する。田園風景の映像なども織り交ぜ、地域に根差した食文化の魅力を伝える。
海外展開する「和食メーカー」も各種イベントを企画している。
キッコーマンは、京都の料亭「菊乃井」の村田吉弘氏、「京都吉兆」の徳岡邦夫氏ら9人の和食料理人の実演が目玉となる催しを万博関連会場で7月12、13日に開く。キッコーマンの欧州事業の売上高は現時点で世界全体の10%強にとどまるものの、しょうゆ類の年間販売量は過去10年間の平均で11%成長しており、北米やアジアの伸び率を大きく上回る。
欧州各国にしょうゆ製品を出荷するオランダ工場の生産能力を、今年3月末に年間2万5000キロリットルに拡大し、1997年の稼働開始時に比べると約6倍の規模になった。
臼井一起執行役員は「しょうゆが一般家庭にも定着した北米と比べ、欧州市場はまだまだ潜在性が大きい。各国の味覚に合ったレシピも提案しながらしょうゆを普及させたい」と意気込む。
味の素も7月に、和食の特徴である「うま味」をテーマにした討論会を開き、欧州の料理関係者らにアピールする。欧州では日本食レストランで提供するギョーザの人気が高まっており、味の素は4月、ポーランドに冷凍ギョーザの工場を現地企業と合弁で新設した。ギョーザ自体は中国が本場だが、商品名に「Gyoza」(ギョーザ)と日本名を冠して売り込みを強化する。
≪「体験の旅」アテンダントがおもてなし≫
「BENVENUTI(いらっしゃいませ)!」。ミラノ万博開幕を目前に控え、日本館では連日、案内役を務めるアテンダントたちが研修に励んでいる。来館者を温かい笑顔と細やかな気配りで迎え、日本の「おもてなし」の心を伝えるのがモットーだ。
公募で選ばれた10~40代の日本人の男女約110人が、今月5日からミラノ市内のホテルで発声や基礎知識を学び、19日からは館内での実地研修が始まった。オレンジやベージュを基調とした制服は日本の統一美や調和を表現しているという。
日本館は、農業や食文化の多様性、クールジャパンなど5つの区画で構成され、ハイテク設備も導入。来場者が実際に展示に触れながら「食をめぐる旅」を体感できるスタイル。研修でアテンダントたちはグループに分かれ、VIPや車いすの来場者を円滑に誘導するための練習を繰り返し行っていた。
日本館の藤川佳秀運営事務局長は「アテンダントは“日本の顔”として重要な役割を担う」と強調。会場工事が遅れたため館内での研修時間は限られたが、北海道旭川市出身の安住英子さん(35)は「食を通じて世界のみんながつながることを意識し、日本人の精神に立ち返るつもりで取り組んでいる」と話した。
ミラノ万博は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された「和食」をアピールする絶好の機会でもある。フードコートでは多彩なメニューを取りそろえ、併設のイベント広場では期間中に27組35自治体が参加し地元の食文化や伝統工芸を紹介する。
ミラノ万博の加藤辰也日本政府代表は「日本人が普段食べている多様な日本食の魅力を深掘りして発信していきたい」と意気込んでいる。(共同/SANKEI EXPRESS)