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政治
「無法」ドローン 官邸の限界破る 微量セシウム検出、放射線マークも
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首相官邸の屋上ヘリポートで発見された小型無人機を調べる捜査員ら=2015年4月22日、東京都千代田区永田町(酒巻俊介撮影) 東京都千代田区永田町の首相官邸の屋上ヘリポートで22日、小型の無人飛行機「ドローン」1機が見つかった。ドローン周辺で微量の放射性セシウムが検出され、弱い放射線を測定した。機体には放射線を示すマークのある容器が積まれており、中に液体が入っていた。警視庁公安部などは何者かが意図的に侵入させた疑いがあるとみて捜査本部を設置し捜査を始めた。
厳重な警備体制が敷かれている官邸に誰にも気づかれることなく侵入を許したことで、国内外で急速に普及するドローンへの警備に加え、規制や取り締まりの困難さが改めて浮き彫りになった。誰が何の目的で侵入させたのか。関係者の間に衝撃が広がっている。
警視庁によると、ドローンは22日午前10時20分ごろに官邸職員が発見した。直径約50センチで、プロペラ4つを備えたヘリコプター型。容器のほか、小型カメラと発煙筒のようなものが2本積まれていた。
容器には、放射線を示すマークとともに「RADIOACTIVE」と表記されたシールが張られていた。大きさは直径3センチ、高さ10センチ。プラスチックのような材質で、ふたがしてあった。表面が茶色で中は見えないという。周辺で検出されたのはセシウム134、137で、放射線は人体に影響のないレベルだという。
犯行声明などは確認されておらず、その目的は不明だ。ただ、放射性物質が検出されたことから、「反原発」のメッセージとの見方も出ている。
国内では来年、主要国首脳会議(サミット)が開催予定で、2020年には東京五輪・パラリンピックという大イベントも控えており、警戒感が強まっている。
「意図が分からないが、不安をあおる極めて悪質な行為。背景や動機を明らかにしなければならない」と、捜査関係者は強調する。
周辺から検出されたセシウム134、137は、2011年3月の東京電力福島第1原発事故で大気中に放出された放射性物質と同じ種類だ。事件に関与した人物が「原発」に対して何らかの主張を伝えようとした可能性がある。
首相官邸という最重要施設へのドローンの侵入を許したうえ、放射性物質も検出されるという重大事態を受け、警視庁は思想犯を捜査する公安部を中心に捜査本部を設置し全容解明を進める方針だ。
一方で、現在の日本の航空法には、ドローンが低空で飛ぶ際の規制はほとんどない。空港周辺を除けば航空機のルート下は150メートル未満、それ以外は250メートル未満の低空なら届け出なしで飛ばすことができる。操縦免許の制度もなく「無法状態」との指摘もある。
警察庁幹部は「存在そのものが脅威」と危機感を強める。また、別の捜査幹部は「規制をかけても、悪意ある人物によって突然、空から侵入されたら打つ手がない」と指摘した。
「サミットや東京五輪の開催が迫る中で喫緊な対応が必要なリスクがはっきりと現れた。法整備や規制を急ぐべきだ」。国際テロリズムに詳しい公共政策調査会の板橋功氏は、早急な検討の必要性を強調した。(SANKEI EXPRESS)