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ウクライナ停戦きょう発効 解けぬ緊張 「露は次々と兵力供給」
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ウクライナ東部デバリツェボ近くの村で、前線に向かう準備をする親ロシア派の戦闘員=2015年2月13日(AP) ウクライナ政府軍と親ロシア派武装組織の戦闘収拾を目指してロシア、ウクライナ、ドイツ、フランスの4首脳が発表した停戦合意がキエフ時間の15日午前0時(日本時間15日午前7時)に発効、昨年4月から約10カ月で5000人を超す死者を出した紛争は和平への正念場を迎えた。ウクライナ東部では12日の停戦合意後も戦闘による死者が出ており、実際に戦闘が終結するかは予断を許さない。
タス通信によると、ウクライナ東部の親ロシア派武装組織「ルガンスク人民共和国」幹部は14日、前線から重火器の撤去を始めたと述べた。
一方、日米など先進7カ国(G7)首脳は13日、紛争をめぐり共同声明を発表。停戦合意後も東部ドネツク州の交通の要衝デバリツェボ周辺で戦闘が続き、市民に多数の犠牲が出ているとして懸念を表明した。
声明は親露派が攻勢をかけているとの認識を示した上で、当事者すべてが行動を自制し停戦を順守するよう要求。対露制裁強化を念頭に、合意に違反すれば「適切な措置を取る用意がある」と警告した。
ウクライナ政権側と親露派は昨年9月にも停戦に合意したが、その後、戦闘が再燃して年明けから激化した。今回の合意も守られなければ紛争は泥沼化し、欧米と親露派の後ろ盾であるロシアの対立も一層の先鋭化が避けられない。
タス通信によると、親露派「ドネツク人民共和国」は今月13~14日、拠点都市ドネツクなどがウクライナ軍の砲撃を受け、4人が死亡、9人が負傷したと発表した。
米国務省のサキ報道官は13日の記者会見で、ロシア軍がこの数日間、デバリツェボ周辺に大量の多連装ロケット砲などを配備しウクライナ軍を砲撃していると明言。国境沿いで親露派への大量の支援物資を準備していると非難した。
ウクライナのポロシェンコ大統領、ロシアのプーチン大統領、ドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領の4首脳による停戦合意は、15日の発効後2日以内に重火器の撤去を始め、2週間以内に完了、双方の支配地域の間に緩衝地帯を設けることなどを盛り込んだ。(共同/SANKEI EXPRESS)
≪解けぬ緊張 「露は次々と兵力供給」≫
15日発効のウクライナ東部の停戦合意が確実に履行されるかは事実上、ロシアの出方にかかっている。ロシアが親ロシア派武装組織を支援するため武器や戦闘員を送り込んでいることが、戦闘がやまない原因とみられているためだ。ウクライナも応戦する構えで、停戦発効後も緊張が続くのは必至だ。
オーストラリアの兵器研究機関は昨年11月、ロシアやウクライナの報道映像や画像などを検証し、親露派の武器からT72B3戦車やORLAN10無人機など、ロシア軍しか持っていないはずの装備が見つかったとの報告書をまとめた。
親露派は保有する武器について当初、ウクライナ軍の武器庫などから奪って入手したと主張。だがウクライナ軍がいくら親露派部隊を撃破しても、次々に最新鋭の武器を持った戦闘員が現れ、次第に防戦一方になっていった。
ロシアのテレビ局は最近、親露派が攻撃機を使って空爆を実施したと報道。昨年7月に撃ち落としたウクライナ軍機を修理したとしている。真偽は不明だが、事実なら維持管理や離着陸など、正規軍の関与がなければ難しいとみられる。
「停戦合意が守られるか確証が持てる者はいない」。ウクライナのポロシェンコ大統領は13日、首都キエフ近郊の軍施設で兵士らを前にこう述べ、自ら選んだ外国製の新たな装甲車や無人機を早期に東部の紛争地帯に送ると発表した。
ロシアは依然として紛争への組織的関与を否定。ペスコフ大統領報道官は、欧米から停戦合意の履行を求められていることについて「ロシアは紛争当事者ではない」と反論。戦闘に関わっていない以上、「合意を履行するのは不可能だ」と主張している。
これに対し、欧州安保協力機構(OSCE)は数日以内にウクライナ東部の監視団要員を約230人から約350人に増強し本格的な停戦監視を始める予定だ。ただ監視団には強制調査の権限がなく、治安の改善が不可欠で親露派の協力が得られるかどうかが活動の鍵を握る。
OSCEは監視団を今月末までにウクライナ全土で500人に増やし、一層の増員も検討する。現在2機投入している無人機を増強するほか、衛星写真を使うなどして、治安上の問題で立ち入れない場所の監視を実施する方針。
しかし、監視活動はこれまでも戦闘による治安の悪化や法的強制力の欠如に妨げられてきた。ロシアから親露派に武器などが流入しているとウクライナ政権側が主張するロシア国境でもトラックの積み荷を検査できず、実効性ある監視はできない状況だった。(共同/SANKEI EXPRESS)