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【ウクライナ情勢】停戦合意後も続く衝突 18人死亡

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【ウクライナ情勢】停戦合意後も続く衝突 18人死亡

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ウクライナ東部のデバリツェボ近郊を走行する政府軍の装甲車=2015年2月12日(ロイター)  ウクライナ東部の紛争は、ウクライナ、ロシア、ドイツ、フランスの4カ国首脳らが12日に停戦で合意した後も戦闘が続き、13日までにウクライナ側と親ロシア派武装勢力双方の少なくとも18人が死亡、数十人が負傷した。停戦は15日に発効するが、前線は依然緊迫しているもようだ。

 ウクライナ国防省は13日、ウクライナ軍兵士ら8人が死亡、34人が負傷したと発表。親ロシア派によると、ウクライナ軍の砲撃により拠点都市ドネツク、ルガンスクなどで子供を含む計10人が死亡、多数が負傷した。

 4首脳がウクライナ危機をめぐり新たな停戦に合意したことを受け、欧州連合(EU)は12日、非公式首脳会議を開催、首脳らは合意が履行されなければロシアへの制裁強化を検討すると警告した。

 米政府も12日、停戦合意を歓迎する声明を発表したが、ロシアへの制裁強化やウクライナ軍への殺傷能力のある武器供与の選択肢は排除せず、合意履行へ圧力を維持する方針を示した。

 EUのトゥスク大統領は終了後の記者会見で「紙に書かれた言葉が実際の行動に移されなければならない」とロシアに合意の履行を迫り、「そうでなければ必要な措置をためらわない」と追加制裁の可能性に言及した。

 トゥスク氏らによると、EU外相理事会が発動を16日に延期した在欧資産凍結の制裁追加は予定通り実行される。

 首脳会議で状況を報告したウクライナのポロシェンコ大統領は報道陣に、ウクライナ側は即時停戦を望んだがロシア側が拒否し、15日からになったと指摘。停戦合意後間もなく、親露派が新たな攻撃を始めたとして「停戦の約束を守らせるための圧力が極めて重要だ」と訴えた。(共同/SANKEI EXPRESS

 ≪独仏、緊張緩和優先 「力の外交」米と一線≫

 死者5000人を超えたウクライナ紛争で、ドイツ、フランス両国は、ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力と背後のロシアを軍事力で屈服させようとする米国と一線を画し、ロシアとウクライナとの協議により停戦合意にこぎ着けた。伝統的にロシアとの関係を緊張させないよう努めてきた欧州は外交努力でウクライナ紛争をどう収束させるのか。「欧州独自外交」の正念場だ。

 安保崩壊に危機感

 きっかけはロシアのプーチン大統領の書簡だった。欧州メディアによると、「ウクライナ東部での停戦、親露派支配地域の自治権拡大」などに関する協議の呼び掛けにドイツのメルケル首相が飛びついた。

 ウクライナ東部では再び戦闘が激化し親露派が支配地域を拡大、米政府はウクライナ軍への殺傷能力のある武器供与の検討を始めた。

 メルケル氏はフランスのオランド大統領と「ウクライナへの武器供与に反対し、紛争の外交的解決を目指す」立場を再確認。1週間でウクライナのキエフ、ロシアのモスクワ、米ワシントン、カナダ・オタワを訪問。ミュンヘンの安全保障会議にも出席後、オランド氏とともにミンスクでの4カ国首脳会談に臨んだ。

 メルケル、オランド両氏を突き動かしたのは、冷戦終結後に形成された欧州・ロシアの安全保障の枠組みが崩壊することへの危機感だった。

 第二次大戦後、「不戦の誓い」に基づき平和裏に統合を進めてきたEU諸国にとり、米国がウクライナへの武器供与に踏み切り、対抗してロシアが軍事介入を本格化させ戦火が拡大するという事態は絶対に避けねばならない悪夢だ。

 ミンスクでの16時間に及んだ協議を終えたメルケル氏は12日、合意は「わずかな希望」と述べ、合意事項は「実際の行動」による裏付けが必要だと慎重な姿勢を崩さなかった。

 親露派歯止め狙う

 今回の合意は「ウクライナの主権と領土保全を尊重する」としながら、ロシアが併合したクリミア半島には触れておらず、独仏の真の狙いは「ロシアに支えられた親露派の進撃に歯止めをかけ、ウクライナ東部の紛争を『凍結』すること」(英紙フィナンシャル・タイムズ)との見方が欧米メディアに出ている。

 ロシアは欧米による厳しい経済制裁と、主要収入源である原油の価格急落のダブルパンチで経済苦境に陥った。ウクライナでの軍事行動拡大は大きな財政負担で、紛争凍結はプーチン政権にとっても望ましいはずだ、とのメルケル氏の読みがあるようだ。

 ウクライナ紛争の拡大を阻止した上で、ロシアに対する経済制裁圧力を維持し、辛抱強く、時間をかけてロシアの軟化を促す。これがメルケル氏の描く戦略とみられる。(共同/SANKEI EXPRESS

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