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アマゾン無人機、米を「脱出」 遅すぎる認可にいらだち 当局批判

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの経済

アマゾン無人機、米を「脱出」 遅すぎる認可にいらだち 当局批判

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米ニューヨーク上空を飛ぶ無人機。アマゾンは小型無人機による配送サービスを計画しているが、厳しい規制のため、米国での実用化は視界不良が続いている=2015年1月1日(ロイター)  小型無人機(ドローン)を使った“空の宅配”構想を掲げる米ネット通販大手アマゾン・コムが、無人機の屋外試験飛行の認可が遅すぎるとして、規制当局である米連邦航空局(FAA)を厳しく批判している。試験飛行の認可まで半年以上かかった上に、操縦者が目視できる範囲に飛行を限定するなど規制がきつすぎて、このままでは実用化が困難なためだ。無人機飛行のルールを定めた正式法案の成立は2年以上先になるとみられ、幹部の口からは英国などへの脱出も公然と語られ始めている。

 試験飛行に半年超

 ロイター通信や英紙デーリー・メール(電子版)などによると、アマゾンがFAAから屋外試験飛行の認可を受けたのは19日。しかし、アマゾンのグローバル公共政策担当副社長、ポール・マイズナー氏は24日の米上院小委員会で、認可を受けるまでに半年以上かかったため、認可を受けた無人機が時代遅れになったとFAAの対応を批判した。

 マイズナー氏は「われわれは既に許可を受けた無人機の試験飛行は行っておらず、英国など海外でさらに進んだデザインの無人機を試験飛行させている」と指摘。さらに「米国以外の国では試験飛行を始めるのに1~2カ月以上待たされることはない」「米政府のこの低レベルの対応とスローペースは、他国の規制当局の努力に比べて適応力に欠ける」とののしった。

 「空の宅配」不可能

 アマゾンが2013年にぶちあげた“空の宅配”サービス「アマゾン・プライム・エア」は、GPS(衛星利用測位システム)を機体に積んだ小型無人機を使い、顧客の注文を受けてから30分以内に商品を届けるというもので、FAAによる無人機の商用利用解禁に合わせてスタートさせる手はずだった。

 ところが試験飛行の認可に半年以上かかった上、試験飛行は日中だけで、高度は約120メートルに限定。さらに無人機の操縦者には民間パイロットの免許などを義務付け、飛行区域は操縦者が目視できる範囲に限定するなど厳しい規定が設けられた。

 このため、アマゾンの“空の宅配”構想はコスト増などから今のままでは実現不可能とみられており、FAAを厳しく批判するのは、こうした思惑外れが続いたいらだちも背景にある。FAAは年内に新しい規制案をまとめるとしているが、今回のアマゾンの批判には、規制当局の対応が無人機の技術の進展に追い付いていないという米産業界の不満を代弁している側面が強い。

 欧州勢は期待

 FAAのスローペースな対応を喜んでいるのが英国などの欧州勢だ。インペリアル・カレッジ・ロンドンでロボット工学を教える上級講師、ラビ・バイデャナサン博士は英BBC放送に「(無人機の)商業利用の動きが活発化すれば、英国で試験飛行を行う企業も増え、英国として(さまざまな)機会を提供できる」と語り、無人機ビジネスの進展による経済効果に期待を寄せた。

 実際、オーストラリア、カナダ、フランス、英国は、無人機の商用利用に向け、空域の統合を進めているほか、欧州の国々では計約1000人に商用無人機の操縦免許を付与。オーストラリアも185の事業者に商用無人機ビジネスを認可している。

 米国だけでも開始から3年で約140億ドル(約1兆6700億円)、10年で820億ドル(約9兆7700億円)もの経済効果を生むと言われている無人機ビジネスだが、このままでは欧州勢に米国が大きく後れを取る事態になりかねない。(SANKEI EXPRESS

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