ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
エンタメ
加害者は生きるために良心を殺している ジョシュア・オッペンハイマー監督、アディ・ルクン 映画「ルック・オブ・サイレンス」
更新
取材に応じたジョシュア・オッペンハイマー監督(左)とアディ・クルンさん=2015年6月2日、東京都渋谷区(高橋天地撮影) 少し気を緩めれば、あっという間に命を失ってしまう極めて危険な取材もいとわず、米国のジョシュア・オッペンハイマー監督(40)は民兵、マフィア、事件の犠牲者を10年以上にわたって追いかけ、彼らの社会との関わり方を映画というフィールドで検証してきた。
新作ドキュメンタリー「ルック・オブ・サイレンス」でカメラを向けたのは、1960年代のインドネシアで「共産主義者」とレッテルを貼られた100万人もの国民が問答無用で命を奪われた大虐殺の実行者たちだ。
前作「アクト・オブ・キリング」の続編にあたる本作は、殺害の実行者たちに好き勝手に“武勇伝”を語らせる手法をとらず、兄を殺害された弟が殺害の実行者たちを訪ね、真相を語らせようという危険かつ挑戦的な内容だ。
主人公は眼鏡技師のアディ・ルクン(47)。前作を見た彼は、兄をなぶり殺す様子を喜々として語る加害者たちのふてぶてしさに衝撃を受け、2012年にオッペンハイマー監督と接触。「彼らに何としても罪を認めさせたい。そうすることが、死んだ兄や、今も権力者の地位に就く彼らの存在におびえながら暮らしている母のためにもなる」と、自ら加害者のもとを訪れ、真相を問いただすことを提案し、「ルック・オブ・サイレンス」の企画が動き出した。
作品には、大量虐殺に加担した後、現在は多くの犠牲者を出した地域の地方議会議長に上りつめたM・Y・バスランなる人物が登場。「あまり過去を蒸し返すと同じことが起きるぞ」とルクンを脅迫する場面は圧巻だ。
何のおとがめもなしに普通の暮らしを続ける人物、ひいては権力者たちの精神構造とはどんなものなのだろう。オッペンハイマー監督は意外なことを口にした。「彼らは平穏に生きているとは思えません。苦悩を抱えているわけです。自分自身が生きながらえるために、人に嘘をつき、自分をごまかし、自分の中にある良心を殺しているわけです。人によっては、自分が作りあげた嘘やファンタジーにしがみついていなければとても生きてはいけないのです」
そんな彼らは自分の過去の行為を正当化するために、結局は「社会が悪い」と責任を転嫁してしまい、責任の所在は永遠に不透明なものとなる。「若い世代に対してはプロパガンダで(『社会が悪い』『共産主義が悪い』と)洗脳していきます。そうした行為が犠牲者の遺族にどんな影響をもたらすのかを掘り下げたものが、この『ルック・オブ・サイレンス』なのです」。オッペンハイマー監督は力を込めた。
ルクンは「国連安全保障理事会が大虐殺の問題を取りあげることを切に望んでいます」と語ったうえで、本作がベネチア国際映画祭の審査員大賞ほか多くの賞に輝き、米国で公開されることにも言及し、「私たちが望んでいることが実現しつつあり、うれしく思います」と静かに語った。7月4日から東京・シアター・イメージフォーラムほかで公開。(高橋天地(たかくに)、写真も/SANKEI EXPRESS)
※【メディアトリガーplus】マークがある写真にアプリ「メディアトリガーplus」をインストールしたスマホをかざすと、関連する動画を視聴できます(本日の内容は6日間有効です<2015年7月8日まで>)。アプリは「App Store」「Google Playストア」からダウンロードできます(無料)。詳しい使い方はアプリ内の「オプション」→「ヘルプ」をご覧ください。参考記事「メディアトリガーplusを使ってみよう 紙面連動アプリが変わります」