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【花緑の「世界はまるで落語」】(38) ONとOFF 切り替えは大事!
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公園で、素足になってエネルギーチャージ!(柳家花緑さん提供) 落語家である私に、仕事のあるときとない時。いわゆるON-OFFの切り替え的なものが必要なのかどうなのか? そんなことをここで考えてみたいと思います。
お勤めをされている皆さんにとってのOFFの時間って、とても大切な時間だと思います。それは想像がつきます。サラリーマンの経験のない私にはあくまで想像するしかないのですが、そのOFFの過ごし方に仕事への取り組み、自分へのご褒美、その人の生き方が凝縮されているような気がします。
落語は自分にとって仕事ですが、ON-OFFの境目があいまいです。落語を覚えて高座で発表する。ここだけが仕事というのなら分かりやすいのですが、それをするために本、映画、演劇、美術、コンサート、テレビのドラマもバラエティーもドキュメンタリーの番組を見ることも心の栄養、技術の向上、知識が演技を深めていくことにつながっているんです。もし、それらを全く見聞きしないでいたら、今の自分はいないでしょう。
もちろん落語の稽古は一生懸命したでしょうが、教わった通りにやっているだけなら発表会です。きっとその狭い世界観では落語に自分が潰されていると思います。
つまり、お勤めをされている皆さんからみたOFFの行為が、落語家にはONの行為に変わるのです。よく「仕事を家に持ち込まない」というのをスマートだとする仕事術があるかと思いますが、落語家は反対で、家で稽古しますから仕事と年がら年中一緒なのです。もちろん集中力を持つためにダラ~っとした時間をあえて持つこともします。そのダラ~っとした時間をOFFと呼ぶのなら、そこがOFFかもしれません。
他の落語家がどう日常を過ごしているかは、個人業なのでよく分かりませんが、僕は最近、散歩が切り替えポイントであり、OFFの働きをしていると思います。そしてただ散歩だけだと家の近所で完結してしまうので、公園に行くことを目的に家を出ることがあります。
最近は実家に行った行き帰りに、近所のおとめ山公園、野鳥の森公園などに行きました。もちろん都内で行く公園には代々木公園も新宿御苑も入ります。意識して行ってみると公園、庭園は都内に他にもたくさんありますね。東京には緑が少ないという人がおりますが、いやいや、そうして行ってみると東京は緑のたくさんあるすてきな街です。
そして、私のささやかな公園での過ごし方は、はだしになって指の間に風を通すことです。これが気持ちいいんです。そしてはだしで土の上に足を着けることです。なんか大地からエネルギーをもらっているような感じがします。携帯電話が電源からチャージをするようにです。
人間にとってのエネルギーチャージは、食事に睡眠それに、大地に素足で立つことではないのか!と言いたいほど、気分が変わりエネルギッシュになれる気がします。あくまで全てが“気がする”だけですが、そんな気分を大事にしながらはだしになれそうな公園を探して歩いていると、ちょっと出掛けるつもりが何時間も歩き、散歩疲れが出て家に帰ったら爆睡したこともありました。
でもこの時期、涼やかな風に緩やかな日差しの夕暮れ少し前の時間帯、緑の上に座り風で葉の擦れる音、鳥の声を聞きながら瞑想(めいそう)すると、とても気分が落ち着きます。すると、普段の暮らしとのギャップから、まるで旅行で遠出したような感覚も味わえちゃったりして、リフレッシュができて、また稽古に集中できるんです。都内の公園でそんな僕に出会ったら「ああ~今、花緑さんはチャージ中ね」と思ってください! というわけで、落語家にもOFFは大事!(落語家 柳家花緑、写真も/SANKEI EXPRESS)
■みなと毎月落語会「柳家花緑独演会」 6月23日(火)午後7時開演。<会場>麻布区民センター。<問い合わせ>立川企画(電)03・5483・0085