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【花緑の「世界はまるで落語」】(32) 5段階の水勢、振り出しに戻る

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【花緑の「世界はまるで落語」】(32) 5段階の水勢、振り出しに戻る

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1回「止」ボタンを押せば「ふつう」に戻り、そこからお好きな水勢にご調整ください!という状態(柳家花緑さん撮影)  おかげさまで全国で落語をやらせていただくので、移動は新幹線をよく利用します。そして最新型の新幹線に乗って、その最新振りにとても驚いて感心したんです。

 写真をごらんください。これは新幹線のトイレの押しボタンです。温水洗浄トイレなんですね今や!そして感心ポイントはこの先です。

 「水勢」と書かれた個所をごらんください。水勢とは、水の勢いをいうのですね、宇宙を飛んでるヤツ(彗星)じゃないんですね。油性じゃないボールペンのことでもないのね。「水勢」です。プラス、マイナスの真ん中に5つの丸があって、さらにその真ん中がグリーンに点灯している。そう水勢が5段階なんです。

 “5段階”…。余談ですが私は5段階と聞くと小学校の通信簿を思い出すんですよ。

 「ふつう」という真ん中を挟んで下は「ややおくれている」→「おくれている」。上は「ややすすんでいる」→「すすんでいる」。つまり「おくれている」が1で、「すすんでいる」が5という5段階評価です。

 私は、いわゆる5教科的な物が「おくれている」に全て丸がついていました。これは小学校から最終学歴である中学3年まで続きました。

 実は、私は「ディスレクシア」という学習障害を持っているようで、特徴の一つに「読み書き障害」というものがあるそうで、漢字が特に苦手なんです。私は小学校1年生から国語で0点を取り続けました。

 ところがです!音楽と図工(中学からは美術)は「すすんでいる」にいつも丸がついていました。どうも脳内で足りない部分があると、他が発達するのかよく分かりませんが、この2つは得意でした。

 だから私は落語が口伝で良かったなぁと思います。口伝えで教わるのが落語なんです。台本がもともとあって、それを読んで覚えなければいけないのであれば、僕は落語家にはなれなかったと思います。そんなことを狭いトイレで思い出しておりました。

 で、話を元に戻しますが…色んな会社の色んな種類の温水洗浄トイレがあると思いますが、皆さんも経験ありませんか?前に入った人がとても成績が良い「すすんでる」状態の“5”で終わっていると、次に自分が入って「おしり」ボタンを押したとき、ブシュー!!!

 のけぞるような刺激がお尻の穴を直撃する、慌ててボタンを押して「すすんでいる」から「ややすすんでいる」→「ふつう」→「ややおくれている」という感じに水勢を下げる、下げ過ぎたなぁと思うと「ふつう」に1つ上げて ああ~ちょうどいい~みたいな!ありませんか?ありますよね?そんな経験。

 ところがですよ皆さん。今一度 写真をごらんください。今は5段階の真ん中「ふつう」が点灯してますよね。私がそこから「おしり」ボタンを押してスタートするじゃないですか、ちょっと弱いなぁ、と思い「ややすすんでる」に1つ上げるでしょ?そして「止」ボタンを押して止めます。

 その次に再度「おしり」ボタンを押せば「ややすすんでいる」から再開ですよね?違うんですよ皆さん。ちゃんと「ふつう」に自動で戻っているんです。何処で終わってもです。

 「すすんでいる」にせよ「おくれている」にせよ、1回「止」ボタンを押せば全てチャラ!何事もなかったかのように「ふつう」に戻り、そこからお好きな水勢にご調整ください!という状態なんですよ。

 これは、私が話題にしないと、きっと世間は当たり前のようにこのテクノロジーの進化を見過ごし、称賛されることもなく日常に溶け込んでしまったかもしれないそんな話題を、今朝はお付き合い頂きました~。(落語家 柳家花緑(やなぎや・かろく)、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■やなぎや・かろく 1971年、東京都出身。87年、中学卒業後、祖父、五代目柳家小さんへ入門する。前座名は九太郎。89年に二つ目昇進、小緑と改名。94年、戦後最年少の22歳で真打昇進、柳家花緑と改名する。古典落語はもとより、劇作家などによる新作落語や話題のニュースを洋服と椅子という現代スタイルで口演する「同時代落語」にも取り組む。ナビゲーターや俳優としても幅広く活躍する。

 【ガイド】

 2014年12月30日(火)18:30開演。第600回「紀伊國屋寄席」。<会場>紀伊國屋ホール。問い合せ:03・3354・0141

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