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【花緑の「世界はまるで落語」】(30) 三人会 絶妙なバランス
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9月の「松竹落語会」で桂米團治(かつらよねだんじ)師匠(中)、林家正蔵(はやしやしょうぞう)師匠。写真右は柳家花緑(やなぎやかろく)さん。この後、米團治師匠はちゃんと寝ぐせを直して高座へ=2014年(柳家花緑さん提供) “三人寄れば文殊の知恵”という言葉がありますが、落語会でも三人寄って行われる「三人会」というのがあります。ですが文殊の知恵では困るんですね、このことわざの意味は「特別に頭の良い者でなくても 三人集まって相談すればよい知恵が浮かぶ」。
なんか下手(へた)な噺家(はなしか)が三人集まってやってる会みたいですから、これではいけません。いい三人会は三者三様、それぞれが力を発揮できる会です。誰かが独り勝ちしたり、一人負けする三人会は、あまりいい会ではありません。
私はおかげ様で好評な「三人会」を二つ演らせて頂いております。
一つは『柳の家の三人会』柳家喬太郎師匠、柳家三三(さんざ)師匠と私の会。実力者のお二人を相手に演る会で、いつもチケットはおかげ様で完売状態。一回に1000人のお客さまがお集まりくださいます。皆、同じ柳派の一門です。
柳家さん喬師匠のお弟子さんである喬太郎さんは、師匠譲りの丹精な古典落語に加え、独創的でリアリティーのある新作落語も得意で、場に応じてさまざまな印象をお客さまに与えられます。柳家小三治師匠のお弟子さんである三三さんは、師匠譲りの江戸の風が吹いてるような古典落語が得意です。つまり二人共、うまいの!
その二人の後に私が、先輩であるがゆえにトリを取らせていただくんですが、まぁ~大変! ほんの少しでも気を緩めたらアウトです。もちろんいつでも緩めず演っているつもりですが、お二人の演目と全然違うものをその場でチョイスしなくてはいけない。しかもうまくて面白い落語を二席聞いた後お客さまに聞いて頂くのです。大きなチャレンジの場を頂いてるなと思います。
もう一つは『松竹落語会』桂米團治(かつらよねだんじ)師匠、林家正蔵(はやしやしょうぞう)師匠と私の会です。大阪・上方落語の人間国宝・桂米朝(かつらべいちょう)師匠のご子息である米團治師匠。そして昭和の爆笑王と呼ばれた林家三平師匠のご子息である正蔵師匠。そして私が五代目小さんの孫です。つまりお坊ちゃん三人会! これがなんとも、ゆるそう~な会です。
ですから、この会は若旦那たちが気を抜かないように他の落語会にはない工夫が施されております。実は当日の演目も出番順も決めずに、まず三人高座へ上がります。大きなサイコロをお客さんの前で振り、その場で順番を決めるのです。だれがトリを取るのかガチですから毎回全然分からない。
この会は歌舞伎でおなじみの松竹さんが主催してくださり、全国色々な場所へ出向いて行っております。
どちらの会も今後も続いていくと思います。やはりバランスが悪いと“船頭多くして船山に登る”になってしまいます。このことわざの意味は「指図する人が多過ぎるとかえって統率がとれず意に反した方向に物事が進んで行く」。だったら一人で演る独演会がいいということになります。バランスが大事なんすね。
これは料理と一緒ですかね、最初はオードブルから始まって、真ん中は次への期待も持たせつつ満足させて、トリのメインディッシュに持っていく。もちろん、三人会は三人が主役ですからトリに遠慮はいりません。でも全員がトリネタを、つまり、鰻のお重に天丼にカレーライスが出てきたらお客さんはおなかいっぱいで苦しいです。少しずつ削るんです。鰻は白焼きか酢の物にする、ご飯を抜いて天ぷらだけ。最後はカレーライスでも良い、でも場合によりご飯少なめにするとか!
全体のバランスの取れた会。僕はそれこそがいい三人会だと思います。きっとお客さまも「今日の落語会は三人共みんな良かった。また行こう!」そう言ってくださると信じています。見せ方の大切さをこの頃よく感じています。(落語家 柳家花緑/SANKEI EXPRESS)