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【花緑の「世界はまるで落語」】(29) 「素直」が大事

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【花緑の「世界はまるで落語」】(29) 「素直」が大事

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先日、福岡県行橋市(ゆくはしし)に行った時、北九州空港での一枚。素直な気持ちで撮りました(柳家花緑さん撮影)  私は素直な人が好きです。友達にしても、弟子にしても、仕事仲間やお客さまでも。もちろん、お客さまは、どんな方でもお客さまですから人格は関係ありません。好き嫌いを述べる対象ではなく感謝をする対象です。でも「素直な人」って誰もが好きなんでしょうか?

 つまり、頼りないとか、物足りないとか、嘘くさい…などと思う人もいるかもしれない。思い切って言いますが素直嫌い!?の人と僕はなかなか気が合わないと思いますね。基本的に私は素直な自分でいることをモットーとして生きています。

 質問する前に真似る

 世の中は合わせ鏡。人は他人を通して自分自身を見ていると思うんです。自分に許せない部分があれば、他人のその部分も許せない。その反対も同じ。失敗を経験したり、意識が開いたことにより、自分の認識が広がってくると、他人や物事を受け入れられるようになる。だから逆を言えば、私自身も素直じゃない人を受け入れれば、自分の意識が一つ広がるのかもしれないということですが…。

 師匠であり祖父である故・五代目柳家小さんの教え、座右の銘も“万事素直”でした。なぜ素直でいることが大事なのか? 師匠は「素直な人間は芸が伸びる」と口癖のように言っておりました。「はい!」と返事をして、その教えを軽んじないで取り組める人が良い。「いや」とか「でも」と言って言われたことをやってみることもなく、自分の理屈を並べたてている人は良くないと。特に師弟関係の場合、師匠の提案する課題に取り組めない人は伝承芸には不向きでしょう。問答無用という言葉がありますが、歌舞伎や能狂言も基本はそれで、伝統芸能のスタートはまず“学ぶこと”=“真似(まね)ること”から始まるのです。質問する前に演(や)ってみること。これが大切なんですね。そして素直な人はスッとふところへ飛び込んでいけますから、どんどん吸収していきます。

 反対に素直さのない人は、真似ができないので土台、基礎がなかなか身に付きません。そしてそれを教える師匠の小さんももちろん素直な人でした。おおらかで優しくて、あの丸顔が円満さを表しているようでした。

 謙虚と感謝がお友達

 以前、素直について考えていたらこんな言葉が浮かびました。「素直は、謙虚と感謝がお友達!」。ひらめきのような感じで浮かんだ言葉ですが、皆さんはどう思いますか?

 また「素直」という漢字をみていくと“素に直につながる”と読み解けます。「素」は素粒子の“素”です。物質の根本ですね。そして「直る」とは、もとの良好な状態に戻るという意味。2つの漢字はなんとなく似た意味であることがわかります。「素直」は元々本来の自分自身に回帰する。原点回帰なのかもしれませんね。

 自分というフィルターを通して見ているこの世界を曇りなき目、つまり素直な意識で見て生きれば、人とのいさかいやトラブルは自然に減っていくのではないかと思いますが…。まぁ、言うほど簡単ではないのがこの世界。一番大切なことは知識よりも実践だと思っております。この文章を書きながらも日々、反省することが多いですねぇ!(落語家 柳家花緑、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■やなぎや・かろく 1971年、東京都出身。87年、中学卒業後、祖父、五代目柳家小さんへ入門する。前座名は九太郎。89年に二つ目昇進、小緑と改名。94年、戦後最年少の22歳で真打昇進、柳家花緑と改名する。古典落語はもとより、劇作家などによる新作落語や話題のニュースを洋服と椅子という現代スタイルで口演する「同時代落語」にも取り組む。ナビゲーターや俳優としても幅広く活躍する。

www.me-her.co.jp/karoku/

Twitter @yanagiya_karoku

 【ガイド】

 ■「にっかん飛切落語会」 2014年9月26日午後6時30分開演。イイノホール(東京都千代田区)。落語会事務局(電)03・3547・0900

 ■「花緑ごのみ」Vol.31 11月28日午後7時、11月29日午後1時。イイノホール(東京都千代田区)。9月27日よりチケット発売。サンライズプロモーション東京(電)0570・00・3337

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