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これがお母さんの気持ちなんだなあ 映画「トワイライト ささらさや」 新垣結衣さんインタビュー
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「一度決めたことを絶対に曲げない頑固なところはサヤとそっくり」と語る、女優の新垣結衣(ゆい)さん=2014年9月23日、東京都港区(寺河内美奈撮影) 若手実力派として着実に地歩を固めてきた新垣結衣(ゆい、26)にとって主演映画「トワイライト ささらさや」(深川栄洋監督)は、きっと更なるキャリアの転機となった作品だろう。新垣は乳飲み子の子育てに一人奮闘する新米ママ役に初めて挑んだ。脚本を読んだ後、果たして「自分にできるだろうか」と一抹の不安も覚えたが、「初めての子育てに戸惑い、最初こそ弱々しく見える主人公のサヤも、人生の荒波にもまれながら少しずつ強い母親に成長していきます。最初からベテランお母さんである必要はないんだと考え直したら、少し気持ちが楽になりました」。今ひとつ実感に乏しい大役に新垣は自然体で臨めたという。
原作は加納朋子(48)のファンタジー小説「ささらさや」。のどかだけれど、どこか不思議な田舎町「ささら」に暮らすサヤ(新垣)はある日、結婚して間もない落語家の夫、ユウタロウ(大泉洋)を交通事故で亡くしてしまう。生まれたばかりの息子、ユウスケを何としても守り抜こうと決意するのだが、身寄りもなければ、近所付き合いもない。早くも万事休すといった状況に陥ったとき、ユウタロウの魂がさまざまな人々の体を借りて現れる。ユウタロウは「サヤとユウスケを残しては、心配で、心配で、成仏もできない」と言い…。
撮影を通して、新垣は今まで味わったことがない気持ちになれたという。身近で母親になったばかりの友達や親戚の子育てぶりを見ていると、「自信をなくしてしまうくらい大変そうな仕事だな。私もいずれ赤ちゃんがほしいけれど、私が母親になるのは無理かもしれない…」というのが正直な気持ちだった。ところが撮影に入ってしまうと、そんなネガティブな気持ちが一発で吹き飛んでしまう心地よい瞬間があった。「抱いていた赤ちゃんが私に身を委ねてくれたとき、私は『この子を守らなければならない』と思わず考えてしまった瞬間がありました。母親と赤ちゃんの関係はこのようにして成り立っているのか…と感心してしまったんです。これがお母さんの気持ちなんだなあと実感できました」
夫婦の愛とは何かを考察する機会ともなった。撮影が進んでいくうちに、新垣は「サヤは実は最初から弱い人ではなかったのではないか。成仏できないユウタロウをなだめ、手のひらの上で転がしていたのは、本当はサヤだったのかもしれない」と思えてきて、心の弱さと強さが同居するサヤの感情表現の濃淡について、さじ加減に気を配るようになった。「とはいっても、サヤは計算してユウタロウを転がしていたわけではありません。思ったことをぶつけ合う。夫婦ってそんな感じなんですかね。その方がうまくいくともいいますし…」
もっともユウタロウは作品の冒頭で早々と死んでしまったため、夫婦の会話といえば、大泉が憑依した人物とばかり。派手なけんかまで繰り広げる異例の経過をたどった。だがリハーサルでは、大泉がみんなに交じって演技をしたので、本番で新垣は大泉独特のテンポを頭に残し、感じながら、うまく撮影に臨めたという。「キャラクターの設定は現実離れしているけれど、扱うテーマはいずれ誰もが経験するに違いない身近で現実的な悩みばかり。見た後、とてもほっこりとして、疲れない作品ですよ」。新垣はごく普通の人間ドラマであることを強調した。
もし誰かに憑依できるとしたら、自宅で飼っている犬とヒョウモントカゲモドキを真っ先に挙げた。「特にヒョウモントカゲモドキはいつも無表情なんですよ。果たして今の生活に満足し、幸せなのか、飼い主として知りたいですね」。11月8日、全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:寺河内美奈/SANKEI EXPRESS)