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いろんな役に挑戦し引き出し増やしたい 映画「0.5ミリ」 女優、安藤サクラさんインタビュー

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いろんな役に挑戦し引き出し増やしたい 映画「0.5ミリ」 女優、安藤サクラさんインタビュー

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女優、安藤サクラさん=2014年10月16日、東京都渋谷区(野村成次撮影)  結婚して2年半。そろそろ新婚気分も抜けてきたとみられる女優、安藤サクラ(28)に料理の腕前を聞いてみると、開口一番、「実はとても上手なんですよ」と胸を張った。「本当に何でも作れますよ。まずキッチンに立って、包丁で野菜などを刻みながら何を作ろうか考えます。冷蔵庫の中にある食材、スーパーで売っている食材、旬の食材を頭に思い浮かべるんです。もちろん栄養のバランスや味もちゃんと考えますよ。そうした作業自体がすごく好きなんですよね」

 そんな安藤が料理はもちろんのこと、文句なしの家事能力と巧みな話術を武器に、複雑な事情を抱えた孤独な老人たちを次々ととりこにし、生きる力を授けていく凄腕の介護ヘルパーに扮(ふん)した主演映画「0.5ミリ」(11月8日から全国順次公開)で熱演した。俳優、奥田瑛二(64)の長女、安藤桃子(32)が監督を務め、妹のサクラを主演に起用した。本作は、桃子監督が身内の介護経験に着想を得て、サクラをモデルに書き下ろした同名小説を映画化したものだという。

 主人公は監督との分身

 ある日、介護ヘルパーの山岸サワ(サクラ)は派遣先の家族からとんでもない相談を受ける。「冥土の土産におじいちゃんと寝てほしい」。その当日、サワはとある騒動に巻き込まれ、家も金も仕事も失い、ホームレスになってしまう。そこでサワは一計を案じる。道すがら、わけありの老人を見つけては介護を申し出る「押しかけヘルパー」になろう…。

 映画のサワは、桃子監督とサクラを融合させた分身らしい。「姉が作ったキャラクターを私が体現しました。それこそ2人で作り上げたものだから、2人の分身と言えますね」。桃子監督はサクラ自身も思わず驚くほど表情豊かな顔を引き出してくれたそうで、サクラは「生まれてからずっと私を見てきて、私のことを熟知している姉だからこそ、あまり自分の感情を表に出さないサワを演出できたのかもしれません」と考えている。

 サワは表情で何かを物語る役どころ。心の奥底をしっかりとつかまなければ演技にならない。ところが、彼女の内面をもっと知りたいと思えば思うほど、しっかりとつかみきれず、サクラは少しずつフラストレーションをためていった。一方で、サワは自分の分身でもあり、当然、自分と似た部分を持ち合わせていた。「例えば、道ばたや銭湯で、まるで知らない人に話しかけたり、逆に話しかけられて、楽しく世間話をすることにまったく抵抗がないんですよ。サワちゃんもそのようにして大勢のおじいちゃんのハートを射止めてきたわけじゃないですか。そこに関しては無理なくできました。まったく知らない人に対して恐怖感がなく、人見知りしないんですよ」

 老いへの心構え考える

 今まで出演した映画やドラマの中でもっとも多くの身内が関わったそうだ。監督・脚本は姉の桃子監督、エグゼクティブプロデューサーは父の奥田、老人役の共演者は義父の柄本明(65)、フードスタイリストは母の安藤和津(66)。現場では彼らとなれ合いになることはなく、むしろ大げんかをしたくらいだ。「父と姉とはよく衝突しましたね。なぜそれほど強くぶつかり合えるのかといえば、家族だからでしょう。相手が家族ならば、率直に言いたくなることもあります。いい映画を作ろうという志は同じでもあるし、包丁を持ち出す事態となっても、最後は大丈夫だろう-という確信がありますから、私は思い切りぶつかっていきました」。ちなみに、身内ではない人と仕事をする場合、サクラは黙々と仕事をこなすタイプだそうだ。

 母方の祖母を自宅で介護した経験がある。祖母はサクラが学生時代に倒れ、息を引き取るまで自宅で過ごした。おばあちゃん子だったサクラは、忍び寄る老いへの心構えを考える機会が多かったようにも思える。「『死ぬまで生きよう、どうせだもん』。これは『0.5ミリ』のキャッチコピーでもあるんですが、私の大切な言葉です。私はそんなふうに過ごせたらいいなと思うし、きっとこの映画はそう思わせてくれるはずですよ」

 サクラは今、もっといろんな役に挑戦して、役者としての引き出しを増やしたいとの思いを強めている。「拳銃が似合う女とか、もっと言えば、俳優さん」。男性になりたくて、いつも男を見ては憧れているそうだが、それはないものねだりというもの。「女なので、とても悔しいです…」(文:高橋天地(たかくに)/撮影:野村成次/SANKEI EXPRESS

 ■あんどう・さくら 1986年2月18日生まれ。東京都出身。2007年、父・奥田瑛二監督の映画「風の外側」でデビュー。主な映画出演作は、09年「愛のむきだし」、10年「SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム」、12年「かぞくのくに」、13年「今日子と修一の場合」など。12月には「百円の恋」の公開が控える。母はエッセイストの安藤和津、姉は映画監督の安藤桃子、夫は柄本佑、義父は柄本明。

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