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【花緑の「世界はまるで落語」】(33) お得感満載の新春興行へどうぞ!

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【花緑の「世界はまるで落語」】(33) お得感満載の新春興行へどうぞ!

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夜の浅草演芸ホール。提灯に明りがともった感じが大好きです=東京都台東区浅草(柳家花緑さん提供)  今年、最初のこのコーナー! 本年もどうぞ相変わらずごひいきに、よろしくお引き立てを願います!

 時間がたつのが早く感じられる昨今。お正月もアッという間に過ぎ去っていった感じでしたが、皆さんはどんな年のはじめを過ごされましたか?

 寄席の世界では、実はまだまだお正月気分を味わえるんですよ! 元旦から今日、1月10日までを初席(はつせき)。11日から20日までを二之席(にのせき)といって各寄席はお正月興行なんです。

 いつもの倍!の芸人出演

 普段の寄席との違いは、出演者が多いということ。「顔見世興行」となっておりますから、お正月にたくさんの芸人をいっぺんに聞くことができます。いや、見ることができると言った方がいいかな。なんせ“顔見せ”というくらいですから、演者が次々テンポ良く出てくるんですね。

 初席の浅草演芸ホールなんかすごい! 朝11時から夜9時まで何百人の芸人を日替わりで見ることができる。通常の寄席は1時間に4人の芸人が出てくる。その内訳は、落語家3人の色物さん(漫才、紙切り、太神楽曲芸など)1人。1時間の構成はだいたいそんな感じなんですが、初席は1時間に8人から出てきますからね! いつもの倍! だから面白さも倍! ですからメリットはたくさんの芸人を見る喜び! お正月しか見られませんからね。

 デメリットをあえて言えば、じっくり噺(はなし)を聞きたいとか言われても、それは無理。そういうお客さまには合わない。だって1人の持ち時間が10分もありませんから、おしまいに出てくるトリを取る師匠方だけが、まとまった時間があるんです。でも、その雰囲気が“初笑い”という寄席の空気なんですね。

 伝統芸能ですから、お正月興行は昔と同じ形でやってるんです。でも、私が生まれる前の寄席とかは雰囲気がまた違っていたと思うところに落語家の人数が挙げられます。

 現在、寄席に出演する落語家は私の所属する落語協会と落語芸術協会があり、両協会を合わせて400人くらい落語家がおります。その昔(昭和40年代以前)は、両協会合わせても100人いない時代があったと思います。

 行きたいと思いません?

 だから顔見世興行でも、出番が今のように窮屈な感じにはならなかったはずです。言いかえれば、落語家の人数は、いまだかつてない程、増えている今の時代にしか味わえないお正月興行なんです。昔の落語ファンが知らないお正月興行。そういうと、何か、どうです? “行ってみたい”と思いませんか? その両協会が10日間ずつ、別々に興行を行っております。

 初席は落語協会が上野にある鈴本演芸場と浅草演芸ホール。芸術協会は新宿末廣亭と池袋演芸場。二之席は、落語協会が新宿末廣亭と池袋演芸場。芸術協会が浅草演芸ホールです。

 上野の鈴本は以前は芸術協会も出演しておりましたが、現在は落語協会専属の寄席なので二之席もその先もずっと落語協会です。ここはいろいろ大人の事情があるので解説できません!

 ですから寄席芸人にとってお正月休みとかないわけ! 普段仕事のない日が休みですから…。お正月は元旦からガンガンやってるわけです。掛け持ちで新年会やら、ホールでやる落語会もあり、あなたの周りにも初笑いの催しは有るはずですよ! 『笑う門には福来る』ですよ~!

 今年も良い年になりますよう、皆様のご来場、心よりお待ち申し上げております。(落語家 柳家花緑/SANKEI EXPRESS

 ■やなぎや・かろく 1971年、東京都出身。87年、中学卒業後、祖父、五代目柳家小さんへ入門する。前座名は九太郎。89年に二つ目昇進、小緑と改名。94年、戦後最年少の22歳で真打ち昇進、柳家花緑と改名する。古典落語はもとより、劇作家などによる新作落語や話題のニュースを洋服と椅子という現代スタイルで口演する「同時代落語」にも取り組む。ナビゲーターや俳優としても幅広く活躍する。

 【ガイド】

 ■「正月二之席」 1月11日(日)~20日(火)。<新宿末廣亭>昼の部 13時ごろ (電)03・3351・2974。<池袋演芸場>昼の部 15時半ごろ (電)03・3971・4545

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