SankeiBiz for mobile

言葉が大事 「研ぎすまされた何か」が 岡本健一、南沢奈央 舞台「The River」

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSのエンタメ

言葉が大事 「研ぎすまされた何か」が 岡本健一、南沢奈央 舞台「The River」

更新

 新月の夜、釣りをする男のもとを恋人らしき女が訪ねる。女は暗闇の中で姿を消し、再び現れた女は彼女か、それとも他の誰かなのか-。幻想的なラブストーリー「The River」が、2月19日から東京芸術劇場シアターイーストで上演される。研ぎ澄まされた自然の中での、男と女の濃密な対峙(たいじ)に、主演の岡本健一(45)は「普遍的な、時代や国境を超えた力が確実に存在する作品」と話す。

 「The River」は、英国の新進気鋭の劇作家、ジェズ・バターワースの作品。ロンドンのほか、米ブロードウェーではヒュー・ジャックマン主演で上演された。演出の青木豪がロンドンで観劇して日本での初上演を企画、人間の複雑な内面を表現できる岡本を主演に起用した。時代や地名、名前など余計な情報をそぎ落とした中でのやり取りに、男女関係の機微が浮き彫りになっていく。

 「単純な男と女の話。いろいろな解釈ができる」と、無骨な釣り人を演じる岡本は言う。「自然の中に一人残されると人間の小ささ、自然の大きさを感じる。男と女の会話は言葉が大事になって、普通に生活するより確実に研ぎすまされた何かが詰まっている。男が女と愛を育むことを求めても『頭の中で考えていることは絶対に人には伝わらない』とか」

 回りくどい、私に近い

 南沢奈央(みなみさわ・なお、24)は開放的で無邪気な女を演じる。「最初に台本を読んだときはよく分からなかった」と打ち明ける。「本当に聞きたいことや言いたいことをすぐ出せなくて、回りくどくやって着地するところは私と近いかも」と笑う。

 岡本と南沢はスタッフらとフライフィッシングを体験した。「私は全然ダメで(笑)。でも情景がイメージできるようになりました。すっきり終わるような作品でもない。でも見た後に『あれは何だったんだろう』という気持ちになっていただいてもいいのかな」

 「The River」は、やはり男女の濃密な対峙を描いた英劇作家、ニック・ペインの「CONSTELLATIONS(星座)」とよく比較される。同じくロンドンおよび米ブロードウェーで上演され、「星ノ数ホド」のタイトルで昨年、日本でも浦井健治と鈴木杏の2人芝居で上演された。

 こうした作品がいま注目を集めるのは、遠い世界の話に見えたテロや紛争が身近に迫ってきた現代社会と無関係ではないだろう。インターネットの普及で情報過多となり、人間関係も希薄になっていた反動がある。「だからこそ、自分が愛する人と向き合う時間を費やすことが大切というメッセージが込められているかもしれない」と岡本は言う。

 音楽活動も続けている岡本は「音楽は一瞬で世界を変える。一曲3~5分の印象を舞台で何時間かかけて作るにはどうしたらいいんだろう、と考えます。90歳になっても舞台に立っているのが目標」と話す。

 複数の女性が入れ代わり立ち代わり男のもとを訪れる舞台は事実上、二人芝居で展開されていく。落語が好きで、古典落語の舞台に出演した経験もある南沢は「落語で一人でもやれる自信が付きました」と笑う。

 韓国語も趣味で「韓国でお芝居をしたい」と目を輝かす南沢に、「やりたいことは何でもやりなよ」と励ます岡本。ベテラン男優とフレッシュな女優の顔合わせは、新しい男女の形を見せてくれそうだ。(文:藤沢志穂子/撮影:栗橋隆悦/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 2月19~26日 東京芸術劇場シアターイースト。<問い合わせ>東京芸術劇場ボックスオフィス (電)0570・010・296。ゴーチ・ブラザーズ (電)03・6809・7125

ランキング