SankeiBiz for mobile

ブーム10年 過渡期の「命名権」ビジネス

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの経済

ブーム10年 過渡期の「命名権」ビジネス

更新

9月に「エディオンアリーナ大阪」に変わる大阪府立体育会館。会館前には「ボディメーカーコロシアム」の案内表示が残る=2015年7月8日、大阪市浪速区(共同)  競技場などの施設にスポンサーや商品の名前を付ける命名権が国内に導入されてから十数年がたち、その市場は過渡期を迎えている。東京都調布市の「味の素スタジアム」といった成功例はあるが、広告効果が薄いという理由で契約更新を見送られたり、名称変更が相次いだりするケースも少なくない。

 「ころころ変えるな」

 大相撲の春場所やボクシングの世界戦が行われる「大阪府立体育会館」は4月に条例上の名称に戻った。命名権を持っていたスポーツ用品会社「BB-SPORTS」(大阪府吹田市)が「金額(年間2500万円)に対する効果がない」として更新しなかったからだ。「ボディメーカーコロシアム」の名で呼ばれることはもうない。

 府は公募に動いたが、応募したのは家電量販店大手「エディオン」(大阪市北区)だけ。年間2100万円の3年契約で、9月に「エディオンアリーナ大阪」に変わる。

 5カ月の“空白期間”が生まれることになり、体育会館を管理・運営する大阪府教育委員会の担当者は「『ころころ名前を変えるな』とおしかりを受けました」と肩をすくめた。ただ新規スポンサー獲得は容易ではない。行政側としては安定収入が欲しいだけに「なるべく長期でやってもらいたい」と切実な口調で話した。

 エディオンは、J1広島の本拠地「エディオンスタジアム広島」の命名権も持つ。石山智昭・IR広報課長は「社会貢献の一つのやり方。大阪府立体育会館は歴史が古い。関西圏の方々への浸透を期待している」と狙いを説明した。

 継続で高い価値も

 第1号として2003年から「味の素スタジアム(東京スタジアム)」の命名権を持つ味の素は、先駆的な取り組みで知られる。サッカーの試合以外に積極的にイベントを誘致し無料開放なども実施。沢田和英・味の素スタジアム駐在専任部長は「サッカーだけに頼っていたら価値は維持できない」と話した。

 周辺施設を含め、年間約200万人(うちJリーグで約50万人)が利用。10年以上が経過し、会社への好感度も向上したという。年間2億円と契約料は高額だが、沢田専任部長は「それ以上の価値がある。継続の結果だ」と胸を張った。

 「BB-SPORTS」の担当者は「施設名称の告知が主催者側に委ねられる」と、このビジネスの課題を挙げた。名称変更に強制力はなく、あくまでも愛称を変えるという扱いになる。命名権に詳しい鳴門教育大の畠山輝雄准教授は「(公共施設の場合は)条例を変更して正式名称にすべきだ。(現行では)住民の混乱を招き、リスクが大きい」と指摘した。

 新国立競技場の資金調達での命名権導入が取り沙汰され、注目を集める。一時の流行で終わらせず、普遍的な価値を見いだすことができるか。味の素の沢田専任部長は「お互い(企業と行政)がかみ合わないとうまくいかない」と実感を込めた。(SANKEI EXPRESS

ランキング