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手狭になり増築、生徒減で授業に特色… アジアの「今」映す日本人学校

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手狭になり増築、生徒減で授業に特色… アジアの「今」映す日本人学校

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ミャンマーの最大都市ヤンゴンにある日本人学校の新校舎。手前は校庭で遊ぶ幼稚部の児童ら=2015年5月(共同)  アジアに展開する日系企業の動向が、日本人学校の姿を変えつつある。在留邦人の増加で規模を拡大する学校がある一方、児童や生徒が減少する学校ではユニークな取り組みも。日本と同等の教育を求める子供たちを支えてきたアジアの日本人学校の今を追った。

 経済発展で日系企業進出

 カンボジアの首都プノンペン。世界で89番目となる日本人学校の開校式が5月末、行われた。小学3年の子供が通うサービス関連業、高井隆司さん(44)も出席。1月から単身で駐在し、4月に家族を呼び寄せた。「日本人学校ができなかったら家族を連れてこなかったかもしれない」

 背景には、急速な経済発展がある。人件費の安さなどから日系企業の進出が相次ぎ、在留邦人は急増。隈丸優次・駐カンボジア大使によると、5年前の約3倍の2300人超となり、日本人商工会加盟の企業も約40社から約180社になった。

 軍事政権から2011年に民政移管したミャンマーも、日系企業の進出が加速。最大都市ヤンゴンの日本人学校の児童・生徒数は今年4月時点で159人と、3年前の倍以上に増えた。

 ヤンゴンの日本人学校は1964年設立で、世界で2番目に古い。ただ民主化要求デモを治安当局が武力弾圧した88年に無期限休校を強いられたこともあり、政情不安の影響を受けてきた。企業活動の停滞などで在留邦人数は伸びず、児童らも数十人にとどまっていた。

 民政移管後は状況が一変。教室不足となり、約1億6000万円かけ新校舎を増築した。萩野幹夫校長(61)は数年後に児童・生徒数が収容可能人数を超過する可能性があるとして「移転も視野に入れ、再び対策を講じなければ」と話す。

 一方、欧米流の教育制度が確立したオーストラリアでは現地校と競合状態にある。この20年余りで進出する日系企業が激減した上、英語教育を重視して現地校を選ぶ家庭が増えているためだ。

 最大都市シドニーの日本人学校関係者によると、最盛期に約500人だった児童・生徒は半数以下に。学校幹部は「生徒が少ないと経営も授業も難しくなる」と一定の規模を維持する重要性を強調、英語や多文化教育に力を入れているという。

 老朽化…現地校に間借り

 親日的とされる台湾では珍しい試みも始まった。高雄市では現地の小学校の1棟を間借りし、120人超の小中学生らが台湾の小学生約1500人と同じ敷地で学校生活を送る。別の場所に独立した校舎があったが、児童・生徒の減少や校舎の老朽化で昨年9月に移転。少子化でできた現地校の空きスペースを有効活用している。

 校舎は渡り廊下で結ばれ仕切りはない。登下校の時間が重なるほか、体育館などを調整して共用。互いの存在は身近だ。高橋友幸校長は「気配りも求められるが、人間関係や国際感覚を学んでほしい」と期待を込めた。(共同/SANKEI EXPRESS

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