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社会
草原の国・トゥワ 移住女性、手探り日本語教育 露の地方政府、関係強化へ種まき
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ロシア・トゥワ共和国キジルの日本センターで日本語を教える沢田香緒里さん=2015年4月(共同) モンゴルと国境を接する草原の国、ロシアのトゥワ共和国に2月、日本語を教えるセンターが開かれ、2人の日本人女性が奮闘している。2人に教師の経験はなく、教材も不足。授業は手探り状態だが、生徒からは「分かりやすい」と評判は上々だ。
「合唱した曲の意味を勉強しましょう」。首都キジルの名門校、第2番学校に設置された「日本センター」の教室では沢田香緒里さん(33)=埼玉県出身=が、日本地図やミズバショウの絵を示し、尾瀬をテーマにした唱歌「夏の思い出」の意味を説明していた。
現在は小学5年生の約50人を対象に教えている。事業を主導する共和国政府は、日本の高校3年に当たる最終学年まで続ける方針だ。
沢田さんと共に教壇に立つのは、寺田麻央さん(37)=東京都出身。2人は、「ホーメイ」と呼ばれる独特の唱法を用いるトゥワの民族歌曲に魅せられたのがきっかけで、それぞれキジルに移住。家庭を持ちながらホーメイやトゥワ語の研究を続けていたところ、共和国が直轄するセンターの教師として「わずか数人」(日本外務省)の在留邦人の中、白羽の矢が立った。
「説明や生徒とのやりとりはトゥワ語。板書はロシア語も使います」と沢田さん。公用語のロシア語よりトゥワ語の方が文法構造が日本語に近く「教えやすい」という。生徒のアイサン君(11)は「トゥワ語で教えてくれるので分かりやすい」と話す。
日本語教育の専門家に1週間の手ほどきを受けたとはいえ、教師としては素人同然だ。教科書は教師分しかなく、トゥワ人教師がインターネットでダウンロードした日本についての資料なども活用してしのいでいる。
トゥワはモンゴル国境に位置し、共和国政府は「ここがアジアの中心」と対外的にアピールするが、「日本企業との関係は、ほぼ皆無」(日露経済専門家)。これまで交流はホーメイの愛好家や民族学研究者らごく少数に限られてきた。
しかし最近は、日本への関心も高まりつつあるようだ。子供たちに日本のイメージを尋ねるとアニメの「ナルト」「ピカチュウ」といった言葉が飛び出した。ネットでダウンロードして見ているという。第2番学校のナクシル校長も「保護者からは日本語を学びたいとの要望が増えている」と説明する。
日本語教育の音頭を取るビチェルディ教育相は2013年に訪日し「日本にトゥワ研究者がいるのに、トゥワに日本専門家がいないのはおかしい」と感じたという。中国企業がレアメタル(希少金属)採掘をめぐりトゥワに積極的なアプローチを仕掛ける中、「中国と日本とのバランスが重要」と強調。「日本に大学生を送り、最新の学術と文化を持ち帰るのが目標だ」と話した。(共同/SANKEI EXPRESS)