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【ネパール大地震】105歳男性、8日ぶり救出
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避難所で米などの配給を受けるため、整然と並ぶ被災者=2015年5月4日、ネパール・首都カトマンズ(早坂洋祐撮影) ネパール中部で起きた大地震で、5月4日付のネパール紙ヒマラヤンは、首都カトマンズの北西80キロの村で105歳の男性が地震発生から8日ぶりとなる3日、倒壊した自宅のがれきの中から救出されたと伝えた。
男性はヌワコト郡のファンチュ・ガレさんで、ヒマラヤン紙に「台所にいたので、小麦粉を食べて飢えをしのいだ」と話した。ネパール警察報道官は、報道を事実だと確認した。
一方、ネパール観光省当局者は4日、大地震の影響で、ヒマラヤ山脈の世界最高峰エベレスト(8848メートル)への今季の登山ができなくなったと明らかにした。拠点となるベースキャンプより上の登頂ルートの修復が当面不可能なためとしている。
今季は358人がエベレストへの入山許可を取得し、地震後も10人が依然、登頂を目指し、ベースキャンプにとどまっている。だが観光省当局者によると、登山ルートの構築を担うシェルパが地震後にルート修復の可能性を探ったが、今季中は不可能と判断したという。エベレストでは、昨年も雪崩の影響でシーズンは途中で終了しており、2年連続の打ち切りとなった。
ネパール警察当局によると、大地震によるネパール国内の死者は4日までに7276人となった。けが人は約1万4000人。近隣国と合わせた死者は約7380人。
外国人旅行者については、3日夕の時点で58人の死亡が確認され、112人が行方不明になっている。死者の出身地の内訳は、インド41、米国4、中国、フランス各3、イタリア2、日本、オーストラリアなど各1。行方不明者はフランス15、ロシア12、カナダ10、アメリカ9、インド、スペイン各8、ドイツ7など。日本は不明者リストに挙がっていない。けが人は日本人1人を含む52人だった。(カトマンズ 岩田智雄/SANKEI EXPRESS)
≪略奪なし 「助け合い」日本に類似≫
ネパール大地震は、5日で発生から10日を迎える。食糧事情の悪化が懸念されているが、目立った暴動は起きていない。無人の商店街では略奪も見られず、テント暮らしの被災者は比較的穏やかに過ごす。東日本大震災でも略奪などはほとんどなく、海外から称賛された。ネパール在住の日本人らは「こちらにも助け合いの精神がある」と両国の類似性を語った。
首都カトマンズ最大規模の避難所となったラトナ公園では約2500人がテントで暮らし、毎日、ネパール軍による配給がある。配給のたびに1000人以上の列ができるが、整然と一列に並び、割り込む人もいなければ、支援物資を奪い合うこともない。
テントで暮らす4人家族のダルマラール・サキアさん(44)は「ここに来れば皆さんが助けてくれる。大変ありがたいことだ。皆で分け合えば、なるようになるし、騒いでも仕方がない」と話す。
ネパールに14年間在住する酒卸会社経営、高田英明さん(48)は「持てる者が持てない者に与える助け合いの精神があり、物を奪ったりした人は強く非難され、その社会で生きていけなくなる。輪廻(りんね)転生の宗教的精神もあり、起こったことに対し悔やむのではなく、あっさりと納得するという気質がある」と説明する。
ネパール在住約20年の日本語教師、坂本みどりさん(64)も「政府の支援に頼るのではなく自ら何とかしようという気概がある」と強調。もともと貧しい国で、インフラも整っていない。半日の停電が当たり前で、不便な生活には慣れているという。豊かさを示す国連の指数で、ネパールは187カ国中145位(2014年版)だ。
カトマンズで医療支援活動に携わる陸上自衛隊の佐藤裕己・二等陸曹(34)は、東日本大震災でも震災直後から約2カ月、被災者の巡回診療をした経験がある。佐藤氏は「被災されたネパール人は、日本人の被災者と同じように結構、表情が明るくて気持ちのよい対応をされる。こちらが逆に元気を分けてもらっている」と話す。
06年のジャワ島中部地震では被災後に略奪や暴力行為が発生するなど、今回のネパール地震と同様レベルの災害では過去、略奪や暴動がニュースになってきた。
ただ、在ネパール日本人会の水橋雄太郎会長(54)=JICA専門員=は「今は無事を親族たちと喜び合うことの方が大事。長期的には、家を失った人や仕事がなくなった人を助けていく必要がある」と継続的な支援の必要性を訴えた。(カトマンズ 天野健作/SANKEI EXPRESS)