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演劇部員の心の葛藤 より丁寧に描き出す 舞台「幕が上がる」 ももいろクローバーZ

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演劇部員の心の葛藤 より丁寧に描き出す 舞台「幕が上がる」 ももいろクローバーZ

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人気アイドル「モモイロクローバーZ(ももクロ)」主演の舞台「幕が上がる」(本広克行演出)=2015年4月30日(阿部章仁さん撮影、提供写真)  人気アイドル「ももいろクローバーZ(ももクロ)」主演の舞台「幕が上がる」が24日まで東京・六本木で上演されている。関東近郊の高校の弱小演劇部の部員5人が悩みながら成長していく青春群像劇で、作家、平田オリザ(52)が2012年に発表した同名小説をももクロ主演でまず映画化。舞台はその中のエピソードを深掘りして新しい要素をプラス、5人の心の葛藤がより浮き彫りとなる展開となっている。演出は映画でも監督を務めた本広克行、脚本は平田。

 映画では学生演劇出身の吉岡先生(黒木華(はる))のもと、部長のさおり(百田夏菜子(かなこ))ら演劇部員たちが、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をモチーフにした作品で、高校演劇の地区大会を勝ち進んでいく様子が展開される。吉岡先生は女優を志すことを理由に突然退職。舞台では残された部員たちの心の葛藤が描かれる。

 役柄に素顔を投影

 クローズアップされるのは演劇の強豪校から転校してきた悦子(有安杏果(ありやす・ももか))にまつわるエピソードだ。舞台でせりふを言えなくなってしまう悦子の事情は、映画では語られなかった。実は岩手県で東日本大震災に遭い、生き残った自分に対する後ろめたさがあったため。被災地の高校生が実際に感じていたであろう心情を、悦子が打ち明ける場面は秀逸だ。

 岩手県は宮沢賢治の故郷でもある。舞台では悦子を軸に、岩手県と震災という新しく加わった2つの要素がポイントとなる。かつて平田は「銀河鉄道の夜」をフランスの児童向けに再構成して、「友人の死を受け止めながら成長していく子供の物語」という視点を浮かび上がらせた。10年から震災後の11年にかけて現地で上演。その後、日本語版も制作して、被災地を含む全国で上演した。今回の舞台にはそうした背景が生きている。

 部長のさおり役は、吉岡先生が去った後の部をまとめなければいけない姿が、実際にももクロのリーダーである百田の実像とかぶる。ダンスのうまいがるる(高城れに)も「本人そのもの」との評があるなど、ファンには役柄に、5人の素顔を投影する楽しみもある。

 勘がよく柔軟性もある

 演技の経験がほとんどなかった5人を平田は映画の撮影前、自ら主宰する劇団のワークショップに参加させた。「勘がよくて柔軟性がある子たちでずいぶんうまくなった」といい、舞台稽古も「人気絶頂のアイドルにしては、相当な時間を割いてもらった」という。実際、演劇部の看板女優ユッコ役の玉井詩織は「演技はやればやるほど深いものだと感じた」と話し、下級生の明美役の佐々木彩夏は「チャンスがあればもっと」と、各自が芝居への興味を膨らませている。

 「幕が上がる」は5人が今後、どのような活動をしていくかを考えるターニングポイントの作品となる。平田はももクロの今の姿を人気グループ、SMAPが駆け出しだった時代とだぶらせる。「当時のメンバーも模索して、いろいろなことに挑戦して今がある。僕は玉井さんが一番、舞台に向いている気がする。彼女は上がり症だけれど、実はそういう人の方がいい。後は本人次第」

 客席の90%が男性。カーテンコールではペンライトの光が飛ぶなどコンサートさながらの風景。滑舌がいま一つであるなど課題は多いが、5人の今後の可能性を感じさせる舞台となっている。(藤沢志穂子/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■舞台「幕が上がる」 5月24日まで、東京・Zeppブルーシアター六本木。当日券あり。千秋楽公演となる24日午後6時の回は、全国40の映画館でライブビューイングを予定。問い合わせはパルコ(電)03・3477・5858。

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