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渦巻く闇から浮かび上がる愛の形 宮藤官九郎、麻生久美子 舞台「結びの庭」

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渦巻く闇から浮かび上がる愛の形 宮藤官九郎、麻生久美子 舞台「結びの庭」

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「宮藤さんはいい意味で軽さがある」「麻生さんは自由にやっている」と笑い合う宮藤官九郎さん(右)と麻生久美子さん=2015年3月12日午後、東京都世田谷区(宮崎裕士撮影)  劇作家の宮藤官九郎(くどう・かんくろう、44)が久しぶりに舞台に主演する。岩松了の作・演出による新作「結びの庭」でサスペンス仕立ての恋愛劇。「舞台俳優は一番の基本。出るのが当たり前」と話す宮藤はエリート弁護士役。その妻で、謎めいた令嬢を演じる麻生久美子(36)は「何かが渦巻いている感じの芝居。2人の切ない関係を描きたい」と意気込む。

 ゆがんだ夫婦関係

 「結びの庭」は、弁護士の慎一郎(宮藤)が、恋人を殺したとされた瞳子(麻生)の弁護を担当して無罪を勝ち取り、程なく結婚。新婚生活を送る2人の前に現れた男(岩松)の不審な行動から、次第に明らかになっていく過去の闇を描く。岩松は、穏やかに見える日常の水面下に潜むドラマを描くことで定評があり、時代設定は現代ながらも、昭和の香りも漂う。

 ベースにあるのは成り上がり弁護士と令嬢の「純愛」だ。慎一郎は妻を守ろうと、ありとあらゆる行為に手を染める。ゆがんだ夫婦関係を、観客が「のぞき窓から見ているよう」(宮藤)に追っていくうち一つの愛の形が浮かび上がる。

 宮藤は「いまどき『奥さんがすごく好き』というドラマは、そうそうない。岩松さんの書く話は複雑で、思っていることを言わないまま、裏側にあるものが見えたりする。それが一回りするとシンプルな夫婦愛に行きつく印象」とみる。

 麻生は「本当の私は令嬢のイメージとは真逆です(笑)。渦巻いている闇が途切れないよう、ミステリアスに感情をつないでいくのが大事と思う。2人の関係が切なくて泣きそうになる」としみじみ話す。

 売れっ子としての悩みも

 宮藤はNHK「あまちゃん」をはじめ、脚本家として多くのヒット作を持つが、所属する劇団の「大人計画」の舞台に出演するなど俳優としても積極的に活躍。主演は2011年12月に東京で上演された岩松作・演出の舞台「アイドル、かくの如し」以来となる。「前回は芸能プロダクションの社長で今回はいわば『上流階級』の人。僕がやるという違和感、ミスマッチから何かが生まれる」と笑う。

 とはいえ、売れっ子作家としての悩みも深い。「舞台の本番中に、次のドラマの脚本を書かなくてはならないこともある。周囲は年中、芝居をしている俳優さんたちでなかなか追いつけない。稽古中は『俺、何やってんのかな』と思うとつらい。初日までに、踏ん切りをつけて自分の居場所を見つける。見つからないこともあるけど」と苦笑い。今回の舞台で作・演出に出演もこなす岩松を「人間として先輩と思っている」という。

 最近は自作のドラマの映像を、小学生の長女と一緒に見ることが増えたという。「見せる作品は選んでます。『これはまだ早い』とか」。創作はまだまだ意欲的。「自分で全部は見切れないくらい、作品を作って昇天したい。(自分が紹介されている)ウィキペディア(フリー百科事典のサイト)に載り切らないほど書いて、『似たような作品、いっぱい残したんだな』って思われるのが夢ですね」と笑う。

 麻生は幼い長女(2)を育てる母親でもある。舞台は今回が3作目。「毎日が『いっぱい、いっぱい』ですけれど忙しい方が元気になれる。舞台は苦手ですが、定期的に出演して自分を追い込んで、少しずつ目標をクリアしていきたい」と母として、女優としての素顔をのぞかせた。(文:藤沢志穂子/撮影:宮崎裕士/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 3月5日~25日、東京・本多劇場。<問い合わせ>森崎事務所 M&Oplays。(電)03・6427・9486。大阪、愛知、宮城など地方公演あり。

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