ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
エンタメ
「昔もいまも人間の滑稽さは変わらない」 舞台「三人姉妹」 蒼井優さんインタビュー
更新
「チェーホフが見て喜ぶようなものを」と三女イリーナ役に挑む蒼井優(ゆう)さん=2014年12月18日、東京都渋谷区(早坂洋祐撮影) 乾いた笑いが持ち味の劇作家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が、チェーホフの四大戯曲を演出する企画の第2弾「三人姉妹」が7日から東京・渋谷のシアターコクーンで上演される。一作目「かもめ」に続いて出演する蒼井優(ゆう、29)は、人の心の奥底をえぐるチェーホフの戯曲とKERAの組み合わせに、「どの時代でもどの国でも、変わらない人間の滑稽さを感じる」と話す。
「三人姉妹」は19世紀末のロシアの田舎町が舞台。将軍だった亡父の赴任地で暮らす長女オーリガ(余貴美子(よ・きみこ))、次女マーシャ(宮沢りえ)、三女イリーナ(蒼井)の生活に、故郷モスクワから陸軍中佐ヴェルシーニン(堤真一)が赴任してきて起きる波紋を描く。KERAは「チェーホフが見て喜ぶようなものにしたい」ととっぴな仕掛けはせず、原作を忠実にたどっている。
モスクワでの恋愛や生活を夢見るイリーナは、試行錯誤を続け、一度は決めた結婚に破れながらも明日にむかって歩いていこうとする。「いろんなことが起きたら、それに合わせていく私とは違うタイプかな」
そう話す蒼井は余、宮沢とは実際の姉妹のような信頼関係で結ばれ、稽古に取り組んでいる。「チェーホフは台本を読むごとに印象が変わる。通常の稽古期間では足りない。『KERAさんの頭の中を超えることを私たちがして、指示を受けて向上していきたいね』と話しあっています」
特に宮沢は、舞台出演がほぼ1年ぶりとなる蒼井に演技をアドバイス。「同性同士では言わないことが多いのに『こう動くともったいない』『今のだと、優がどういう気持ちで言っているのか分かりづらい』など、いろんなことを教えてくださる」。そんな2人を、余は温かく包み込んでいるようだ。
人間関係の機微を描くチェーホフの戯曲は、日本でも繰り返し上演されてきた。根強い人気の背景は「19世紀末のロシアでも現在の日本でも人間の滑稽さは変わらない。私のようなうだつのあがらない生き方をしていても(笑)それが人間なんだと言っているからでは。客席の皆さんと私たちの日常の延長線上に舞台があればと思います」。
蒼井は、俳優ほか各界著名人33人にインタビューした対談集を昨秋に発表。かき氷の名店を食べ歩いたガイドブックも出すなど、さまざまな分野で活躍している。「『人』に対する興味はあります。特にこれっていう才能がないから、いろいろやっている(笑)。女優は、中学で進学校に入って勉強に自分の限界を感じて逃げ道にしたのがこの世界。毎回、辞めようと思うくらい自信がない」
もともと理系で、割り切った答えがない芝居の解釈に苦労。実際に辞めようと数カ月間、仕事を休んだ時期がある。それでも復帰したのは「まだまだ分かっていないことが多い。知らないともったいないという貧乏性から(笑)。芝居を通して人と触れ合えたときが一番『わあっ』て思う瞬間です」。
「人に対する興味」は自分自身にも向かう。「何十年後かの自分は何を見ているんだろう、何ができるようになっているんだろうって」。自分をも客観視できる好奇心は今後、マルチな活動に幅と奥行きを与えていく原動力となりそうだ。(文:藤沢志穂子/撮影:早坂洋祐/SANKEI EXPRESS)
2月7日~3月1日まで。東京・Bunkamuraシアターコクーン。
問い合わせ(電)03・5423・5906 シス・カンパニー。大阪公演あり。