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ウィスパーDIVA おしゃれにディズニー 歌手 クレモンティーヌさんインタビュー
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「若い人たちは思いきって海外へ。人生はそう悪くない」と話す、音楽アーティストのクレモンティーヌさん=2014年12月9日、東京都港区(宮川浩和撮影) 人気アニメ「天才バカボン」の主題歌を、おしゃれなシャンソンに生まれ変わらせて多くのファンを魅了した歌手、クレモンティーヌが新作アルバム「クレモンティーヌ・シングス・ディズニー」を発表した。今年、大ヒットした「レット・イット・ゴー」(アナと雪の女王)やスタンダードの「ビビディ・バビディ・ブー」(シンデレラ)の仏語バージョンのほか、ディズニーをイメージしたオリジナル曲を集めた全13曲。ささやくように流れる歌声は心地よく、小粋なパリジェンヌの明るさにあふれている。
「ディズニーがいつまでも色あせず、世界中の皆さんに愛されているように、いつも側に置いてもらい、子供から大人まで、聴くことで心が癒やされる作品になってほしい。クリスマスパーティーのBGMにもぴったり」と話す。
「レット・イット・ゴー」は世界中の著名な歌手が競作している。「これまでは声を張り上げて歌うイメージの曲が多かったように思うけれど、私はしっとり心の内面に入るように歌いたかった。アレンジのジュリアン・リボーが美術分野出身のセンスを生かして、一つ一つ音を構築するように仕上げてくれて、いい形になったわ」
個人的にもディズニーへの思い入れは強い。ジャケットは「子供の頃大好きでシールを集めていた」というアニメ映画「おしゃれキャット」の子猫マリー。収録曲には「バンビ」をイメージしたオリジナル「栗毛色のお姫様」がある。「4歳の頃映画館で見て、母鹿が死ぬシーンに大泣きしたのよ。子供にとって『死』は重いテーマで、いろんなことを教えてくれる映画ね」。ジュリー・アンドリュース主演の「メリー・ポピンズ」は最近も見返したほど好きな映画で、劇中歌「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」の仏語バージョンも収録した。
もともとジャズ出身の歌手だが、仏カンヌの音楽見本市で日本のレコード会社の目に留まったことで日本デビューが決まった。これまでにもオリジナルのほか、アニメや日本の楽曲のカバー作品を多く発表している。
パリのエスプリを感じさせつつ、日本人の心にすっと入って来る歌声の背景には、父親の転勤でメキシコに長く住み、ほかにもアメリカやギリシャ、スペイン、イタリアなど世界を転々として暮らした「コスモポリタン」としてのライフスタイルがある。
「日本とは何かのフィーリングが合うのでしょう。両親が日本文化が好きだった影響もあると思うわ。最初に日本に触れたのは13歳のとき、父の書斎にあった三島由紀夫や谷崎潤一郎の小説を読んだことだったわ。いまや人生の中でフランスの次に滞在期間の長くなった、とっても大事な国よ」とほほ笑む。
長女(21)と長男(15)がおり、ミュージシャンとして活躍しながら子育てをこなしてきたライフスタイルに憧れる女性ファンも多い。「両親のほか、周囲に助けてくれる人たちがいたので」と笑う。
ただ欧州はいまも不景気で、子供たちの世代の若者たちの将来には不安を抱く。「フランスでは大学を出ても、希望する仕事になかなか就けない人が多いの。そんな若い人たちには、くすぶっていないで外国に行くことを薦めたい。異なる文化や考え方の違う人を否定しないで、受け入れることができるようになれば『人生はそう悪くない』と気がつくはずよ。
日本に多いという『フリーター』の人たちにも同じことを薦めたいわ」 いつか必ずいいことがある。クレモンティーヌの歌は、希望を感じさせる歌でもある。(文:藤沢志穂子/撮影:宮川浩和/SANKEI EXPRESS)