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英王子母校、中国へ出前講座 オンラインで指導者育成 巨大教育市場に食指

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英王子母校、中国へ出前講座 オンラインで指導者育成 巨大教育市場に食指

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授業の合間にイートン校の構内を歩く生徒たち。黒い燕尾服、チョッキ、ピンストライプのズボンに白いタイは、何世紀も変わることがない伝統の制服で、中国人の多くが憧れている=2015年6月9日、英国・首都ロンドン西郊(ロイター)  英国の各界指導者を輩出してきた名門「イートン校」が、9月から中国の高校生を対象にしたオンライン講座を開講すると発表した。リーダー育成を目的とした内容で、まず中国の約10校と提携し、英国の本校からも教師を派遣するという。背景には、イートン校やハロー校といった英国のパブリックスクールと呼ばれる男子全寮制の中高一貫私立校が、中国の富裕層にとって「子供を一番通わせたい学校」となってきている事情がある。また、世界的にインターネットを利用した教育システムが拡大する中、巨大教育産業市場として中国が持つ魅力に、超名門校がひかれたという側面もあるようだ。

 首相19人輩出の名門

 イートン校は、ロンドン西郊のバークシャー州イートンに位置し、英国王ヘンリー6世によって1440年創立された。生徒は13歳から18歳の約1300人で、英国紳士を育成することで知られるパブリックスクールの中でも筆頭格とされる。卒業生の大半は英2大名門大学であるオックスフォード大かケンブリッジ大に進学し、これまでに現在のデービッド・キャメロン首相(48)を含めて歴代19人の英首相を輩出してきた。英王室とも縁が深く、ウィリアム王子(33)とヘンリー王子(30)の母校でもある。

 学費は年3万ポンド(約580万円)ほどで、ほとんどの生徒が上流階級の子弟だ。規律を重んじた厳格なエリート教育で世界的に知られる。

 中国からの入学希望者が増え、留学生のうち約3分の1が香港を含む中国人だが、入学できるのは一握りだ。

 学費は1学期13万円

 英BBCなどによると、イートン校は19日に、中国向けオンライン講座の概要を発表。オンライン教育を手掛ける新会社イートンXを設立し、まず9月から「現代リーダーシップ論」1講座を開講するという。

 中国の大学を経ないで直接英国の大学への留学を希望する生徒が多い高校を10校ほど選んで提携。1000人ぐらいの受講生を想定している。

 受講生は双方向性のあるオンラインシステムで講座(英語)を受講し、時折、所属する高校で英国から派遣された教師からアドバイスを受けることもできる。講座の回数は、3学期制で各学期12~15時間。受講料は1学期700ポンド(約13万6000円)となっている。

 オンライン講座の担当責任者のパーシー・ハリソン氏は「現地に学校を開設するのではなく、英国から配信する形を取ることで教育の独自性を保ち、イートン校の伝統も守れる。受講料は、生徒たちの親御さんにとっては楽器を習わせるような感覚の出費ではないか」と話している。

 また、中国を対象とした理由については「まずイートン校に関心を持ってくれている人が圧倒的に多いこと。そして、中国が行っている知識偏重、丸暗記型のエリート教育はイートン校の思索重視の教育とは対極にあり、中国の高校生は私たちの教育に触れればバランスが取れ、優れたリーダーが育つと確信するからだ」としている。

 無料が世界的潮流

 ちなみに、リーダーシップ論の授業では「軍の出動により反乱者25人が死亡した。君は首相である。凶暴な反乱者を鎮圧するためにはなぜ軍が必要で、唯一の選択肢であったのか論理的に説明せよ」などといった課題が出されるという。

 オンライン講座は、米国のハーバード大やマサチューセッツ工科大なども人気授業を対象に行っており、世界的潮流だが、原則として無料でイートン校のケースとは異なる。ハリソン氏は「次は起業家育成講座を開き、徐々に講座数も受講生も拡大していきたい」と抱負を話している。(SANKEI EXPRESS

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