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政治
岸田外相 カストロ兄弟と会談 素早い「キューバ詣で」 関係強化へ
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ラウル・カストロ国家評議会議長(右)と会談する岸田文雄外相=2015年5月2日、キューバ・首都ハバナ(外務省提供・共同) キューバを訪問した岸田文雄外相(57)は2日午後(日本時間3日午前)、首都ハバナでフィデル・カストロ国家評議会前議長(88)と会談し、核兵器の恐ろしさに関する認識で一致した。岸田氏がハバナで記者団に「核兵器廃絶について思いを共有できた」と語った。
健康問題も抱え2008年に引退した前議長が、親しい左派指導者以外の外国政府要人と会談するのは異例。これに先立ち、岸田氏は弟のラウル・カストロ議長(83)とも会談した。
議長は「歴史的訪問を心から歓迎する。経済関係など2国間関係を強化したい」と表明。米国との国交正常化交渉に触れ、人権問題を含め「米国とどんな問題でも話す用意がある。(両国間に)差異はあるが相互尊重が大事だ」と述べた。4月にパナマで首脳会談を行ったバラク・オバマ米大統領について「誠実だと思っている」と評価した。
会談は国家評議会で約50分間行われ、債務問題やキューバの経済改革についても話し合った。
外務省などによると、前議長は自宅で岸田氏と約45分間会談。岸田氏の出身地でもある広島を03年に訪れた経験に言及、核兵器の悲惨さについて岸田氏と意見交換した。岸田氏の身内の原爆による被害についても尋ねた。岸田氏は、前議長が広島を訪問した際に撮った写真を手渡したという。
前議長は「日本人は勤勉で日本製品は優秀だ。日本とは常に友好関係にあった」と指摘。防災、農業、野球なども話題に上った。
岸田氏は両氏との会談に先立ち、閣僚評議会(内閣)のカブリサス副議長とも会談。日本の企業関係者でつくる使節団の20人以上が同席した。岸田氏は2国間の経済関係を強化する上で、租税や雇用制度の改革、二重通貨制廃止などのビジネス環境の整備を要請。これに対し、副議長は前向きな意向を示した。
岸田氏は2日、ロドリゲス外相とも会談、キューバと米国との国交正常化を見据え、政府開発援助(ODA)を拡充する考えを伝達した。(共同/SANKEI EXPRESS)
≪素早い「キューバ詣で」 関係強化へ≫
キューバを訪れた岸田外相は、フィデル・カストロ国家評議会前議長、弟のラウル・カストロ議長らの歓待を相次ぎ受け、関係強化へ一歩踏み出した。米国との国交正常化交渉開始で各国がキューバ詣でを始めるなか、出遅れを警戒していたが、素早い訪問が奏功した。ただ正常化交渉が滞るリスクや債務問題を抱え、大規模な経済協力の表明は持ち越しとなった。
「日本人に深い敬意を抱いている。次はもっと時間を取って話したい」。岸田氏を自宅に迎え入れたフィデル氏は、日本人の勤勉さをたたえた。健康不安説もあったが、帰り際にいすから立ち上がり、岸田氏を見送った。
会談後、岸田氏は記者団に「お会いできたのは、キューバが私の訪問を高く評価してくれたからだ。日本のキューバへの期待が高いと同時に、キューバの日本への期待も高い」と述べ、関係構築に自信をのぞかせた。
天然資源や観光名所に恵まれるキューバに秋波を送るのは各国とも同様。2月にトルコのエルドアン大統領、3月に欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表がキューバ入りした。5月には、フランスのオランド大統領も訪れる。
日キューバ関係筋は「両国には長い友好関係がある。ケリー米国務長官が訪れる前になんとか岸田氏を訪問させたかった」と満足げに振り返る。
だが注目された経済援助の拡充は無償資金協力による医療機器提供の検討にとどまった。これまでの1件原則1000万円以下の「草の根無償資金協力」と比べれば拡大だが、数億円規模にすぎない見通しだ。経済関係の諸課題を議論する「官民合同会議」の新設で合意したものの、こちらはほとんど予算を伴わない協力だ。
日本政府筋は「米議会は対キューバ強硬派の共和党が優位。突っ走ると国交正常化交渉が頓挫した時に後戻りできなくなる」と背景を説明する。
さらにキューバが先進国との間で抱える債務問題もブレーキをかける。
日本などの債権国と協議を進めているが、中長期債務は約615億円に上る。解決の見通しが立たない限り、円借款などは開始できないのが実情だ。
「債務の多くを放棄してくれて感謝している。着実に返済しており、今後もしっかり返済していく」。ラウル氏は会談で岸田氏にアピールした。(共同/SANKEI EXPRESS)