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国際
対キューバ 「テロ支援国」指定解除通告 オバマ氏「遺産」作りへ 議会対策
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ホワイトハウスで行われたイベントで、ゴスペル音楽への感謝と敬意を述べるバラク・オバマ米大統領=2015年4月14日、米国・首都ワシントン(ロイター) オバマ米大統領は14日、米政府が1982年に行ったキューバに対するテロ支援国家指定を解除することを米議会に通告した。議会が拒否しなければ通告から45日後に発効する。米国からキューバへの経済援助禁止や武器禁輸、金融制裁などの一部が解除され、両国の国交正常化に向けた動きが加速することになる。
オバマ氏は議会に対し、キューバ政府が(1)過去半年間、国際テロを支援していない(2)将来的にもテロを支援しないという保証がある-と指摘し、解除に必要な法的要件を満たしていると説明した。
キューバ外務省のビダル米国担当局長は14日、指定解除は「正しい判断だ」とする声明を発表した。
国務省は先に、オバマ氏に指定解除を勧告し、オバマ氏も承認した。オバマ氏は11日にパナマでカストロ国家評議会議長と会談した際に「数日中に判断する」との意向を伝えていた。
国務省は1982年3月、キューバがスペイン北部バスク地方の分離独立を掲げる非合法組織「バスク祖国と自由」(ETA)や、左翼ゲリラのコロンビア革命軍(FARC)に協力したとして、テロ支援国家に指定した。
キューバの指定解除によって、国務省がテロ支援国家に指定しているのはイランとスーダン、シリアの3カ国になった。北朝鮮はブッシュ前政権時代の2008年に解除された。(ワシントン 青木伸行、 ニューヨーク 黒沢潤/SANKEI EXPRESS)
≪オバマ氏「遺産」作りへ 議会対策≫
オバマ米大統領が14日、約33年間にわたるキューバに対するテロ支援国家指定の解除を議会に通告したことで、今後の焦点は国交正常化交渉におけるキューバ側の出方と、米議会対策に移ることになる。
オバマ氏は、昨年12月にキューバとの国交正常化方針を発表した直後から、国務省にテロ支援国家指定の見直しを命じた。残り任期が2年を切り、イラン核開発の封じ込めと、キューバとの国交正常化を政治的遺産としたいオバマ氏が指定を解除することは、「既定路線」とみられてきた。
国務省の見直し作業と大統領の決定は当初、5月以降にずれ込むとの見方もあった。だが、キューバ側の慎重姿勢から思うように進展しない国交正常化交渉を加速させるため、オバマ氏も決定を急いだようだ。
指定解除に際し議会の承認は必要としないが、議会多数派の共和党が解除を妨害するための何らかの立法措置を講じ、波乱も予想される。このため米国内には、指定解除が発効するまで「国交正常化交渉でキューバは見返りを示さないだろう」(米シンクタンク関係者)との見方もある。
オバマ氏は指定解除を決めた理由として、キューバが「将来的にもテロを支援しないという保証がある」とした。その根拠として政府高官は、カストロ政権がフランス紙襲撃テロを公に批判していることなどを指摘した。
これに対し共和党は14日、根拠が薄弱だとして一斉に反発。とりわけ次期大統領選への出馬を表明したテッド・クルーズ、マルコ・ルビオ両上院議員らは「指定解除は政治的理由によるもので、法的要件に合致していない」「キューバはテロリストを支援し続けており、北朝鮮の国連制裁逃れも手助けしている」などと声高に非難した。
米調査会社「ベンディクセン・アンド・アマンディ・インターナショナル」によると、キューバ系の51%が国交正常化に賛成し、反対は40%となっているが、キューバ生まれや65歳以上、フロリダ在住の者の間では反対が優勢で、キューバ系のルビオ氏や、出馬に意欲を示しているジェフ・ブッシュ元フロリダ州知事氏らはキューバ問題に関し微妙な立ち位置にある。(ワシントン 青木伸行/SANKEI EXPRESS)