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【米・キューバ国交正常化】キューバ歓迎 疲弊経済の好転願う

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【米・キューバ国交正常化】キューバ歓迎 疲弊経済の好転願う

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米フロリダ州マイアミのキューバ人街「リトル・ハバナ」で12月17日、米国とキューバの国交正常化交渉開始の発表を受けて、キューバ国旗を手に涙ぐむキューバ系米国人=2014年(ロイター)  バラク・オバマ米大統領(53)が17日、キューバと国交正常化交渉を開始すると表明したことを受け、キューバ政府や国民からは歓迎の声が上がっている。交渉進展に伴い、米政府のキューバ制裁が解除もしくは緩和された場合、疲弊するキューバ経済が好転するとの期待があるためだ。一方、ラウル・カストロ国家評議会議長(83)は国交正常化が実現しても、社会主義体制を変更しない考えを重ねて強調している。

 後ろ盾なし

 オバマ大統領がこの日、キューバ政策転換を表明すると、キューバの首都、ハバナの目抜き通りには市民約100人が繰り出し、喜びの声を上げた。行き交う車もクラクションを鳴らし、国交正常化に期待を寄せた。

 カストロ議長も演説で、オバマ大統領に「敬意と感謝」の意を表明。1959年のキューバ革命後、米国の制裁によってキューバ経済が締め上げられる中、早期の制裁解除を期待しているからにほかならない。

 カストロ議長の兄、フィデル・カストロ前議長(88)が率いたキューバは冷戦時代、ソ連から全面支援を受けて国家を運営した。だが、ソ連崩壊後は後ろ盾を失い、キューバは今、「事実上、“自身の足”で立つしかない状況」(外交筋)となっている。

 キューバ政府は2010年から、本格的な経済改革を開始。飲食業や理髪業、自動車洗車業などの職種を民間ビジネスに開放し、個人不動産や自動車の売買も許可した。旅行制限も緩和している。今年6月には新外資法を施行、100%外資企業の進出と営業を認めた。ハバナ西方45キロのマリエル港地域には経済特区を建設中で、その沖のメキシコ湾経済水域には海底油田が眠っている。

 外資に魅力

 キューバ国内では今、欧州諸国やカナダに加え、イスラエルの企業までもがビジネスに乗り出している。キューバは労働賃金が安い一方で、数学を中心に教育水準が高く、IT企業などにとって進出先として有望だからだ。今後、海峡を挟んで144キロしか離れていない米国の制裁が解除されれば、米企業の投資が増大し、経済が劇的に転換するとの期待は高い。ただ抗議デモの制限などは続き、経済と政治のバランスが難しくなりそうだ。

 来年4月に開催される米州首脳会議には、南米諸国の強い要望でキューバが招待されることになっている。オバマ大統領は経済制裁や民主化問題などについて、カストロ議長と直接、この場で意見交換することになりそうだ。(ニューヨーク 黒沢潤/SANKEI EXPRESS

 ≪米与野党から批判「影響力小さくなる」≫

 オバマ大統領がキューバとの国交正常化交渉を始める方針を示したことに、米議会では野党・共和党だけでなく与党・民主党からも批判が噴出。オバマ氏が表明したキューバへの大使館開設には反発が予想されるほか、議会が設定した対キューバ制裁の解除にも影響を与えそうだ。

 共和党のジョン・マケイン(78)、リンジー・グラハム(59)の両上院議員は17日、「独裁者、悪党、敵への融和政策であり、世界での米国の影響力を小さくさせる」と批判した。

 マケイン氏は共和党が上院で過半数を得る1月招集の新議会で軍事委員長に、グラハム氏は歳出委員会で外交予算を担当する小委員長に、それぞれ就任予定。大使館開設の予算審議などに影響を与えうる立場だ。

 キューバからの移民を両親に持ち、2016年の大統領選への出馬が取り沙汰される共和党のマルコ・ルビオ上院議員(43)は声明で、キューバはシリアやイランと同じテロ支援国家で、北朝鮮との武器の違法取引に関わっていると指摘。オバマ氏の決定は「米国の国家安全保障を危険にさらす」と訴えた。

 一方、与党・民主党でもキューバ系のメネンデス上院外交委員長(60)が声明を発表し、オバマ氏の決定を「連邦法や議会を迂回(うかい)するものだ」として非難した。さらに、オバマ政権がキューバのカストロ体制に経済的な命綱を投げ与えることになったとし、新議会で政府側に「劇的で間違った政策変更」についての説明を求める考えを表明した。(ワシントン 加納宏幸/SANKEI EXPRESS

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