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【日米首脳会談】新たな防衛分担 抑止力強化を確認

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【日米首脳会談】新たな防衛分担 抑止力強化を確認

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ホワイトハウスで、バラク・オバマ米大統領(右)との共同記者会見にのぞむ訪米中の安倍晋三(しんぞう)首相=2015年4月28日、米国・首都ワシントン(ロイター)  安倍晋三首相は28日午前(日本時間28日深夜)、オバマ米大統領とワシントンで会談し、自衛隊と米軍の新たな役割分担を定めた「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の再改定によって「日米同盟の抑止力、対処力が一層強化される」と確認した。

 安倍首相は集団的自衛権の行使容認を含む新たな安全保障法制について「精力的に作業している」と説明。オバマ氏は「支持する」と応じた。両氏は尖閣諸島(沖縄県石垣市)が米国による日本防衛義務を定めた、日米安保条約5条の適用対象とすることも改めて確認した。

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古への移設では、安倍首相が地元の翁長雄志(おなが・たけし)知事が反対していると伝える一方で移設を進める考えを改めて表明、オバマ氏は「沖縄の基地負担軽減に引き続き協力する」と応じた。

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に関しては「地域の経済的繁栄のみならず、安全保障にも資する戦略的意義を持つ」と確認した。また、軍事的拡張を続ける中国に対しては「いかなる一方的な現状変更の試みにも反対する」と一致。中国主導の「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」に関して、オバマ氏は参加に厳しい見方を示した。

 会談後の記者会見で、安倍首相は慰安婦問題について「非常に心が痛む」と述べ、河野洋平官房長官談話を継承する考えを示したが、首脳会談で歴史認識が取り上げられることはなかった。(ワシントン 峯匡孝/SANKEI EXPRESS

 ≪「世界の中の日米同盟」アピール 中国を牽制≫

 戦後70年の節目に行われた28日の日米首脳会談は、「世界の中の日米同盟」を高らかに宣言する舞台となった。中国の覇権拡大という構造的な変化への対応を、アジア太平洋地域における最大で共通の戦略課題とする両首脳が、リバランス(再均衡)戦略と積極的平和主義との融合を図った形でもある。

 お互いのために

 「相互依存、敬意、責務の分担…。『お互いのために』が日米同盟の本質であり、この同盟には世界へ向けた教訓が含まれている」

 共同記者会見に臨んだオバマ大統領は、「お互いのために」という日本語を交え、こう強調した。

 前日、第二次大戦などの戦没者が眠るアーリントン国立墓地で、安倍晋三首相が献花したことに触れ「過去は克服でき、かつての敵は最も緊密な同盟国になりえ、未来を共に築くことができる」とも語った。

 日米は戦後、民主的な価値観を共有するパートナーとなり、同盟関係をアジア太平洋地域と世界で、より大きな責任と役割を担うものへと変容させる-。オバマ氏が使った平凡な日本語にこそ、戦後70年の節目に安倍首相を迎え入れた狙いが秘められている。

 第1に、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の再改定による日米同盟の強化は、リバランス戦略の中核を成し、主に中国に対する牽制(けんせい)と抑止につながる。日米同盟は戦後長らく、東西冷戦構造下で対旧ソ連を主眼とした。冷戦終結後は対北朝鮮に重心が移され、近年は対中国へと移行しており、日米同盟の変遷は国際軍事情勢の変化に敏感に適応している。

 リバランス戦略を推進するうえでの日米同盟強化の重要性を、オバマ氏は「リバランスは、日本との(安保)条約などに基づく同盟を土台にしている」という言葉で、端的に表現した。

 民主主義のモデル

 第2に、歴史問題をめぐり日本と対立する韓国と中国に、過去を克服し「未来志向」の関係を築くよう促す意味合いもある。

 第3に、日米関係とは時代背景、情勢がまったく異なるが、オバマ政権はベトナムやキューバなどに民主主義の価値観を一定程度注入するうえで、日本は「モデル」だとの認識がある。

 日米同盟の強化は、国際社会における米国の指導力の相対的な低下を部分的に補いうるものでもあり、オバマ大統領にとり首脳会談は成功だったといえる。(ワシントン 青木伸行/SANKEI EXPRESS

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