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政治
TPP合意に追い風 フロマン氏「自信」 米TPA法案、下院委も可決
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4月23日、米首都ワシントンで、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉について講演する米通商代表部のマイケル・フロマン代表(左)=2015年(共同) 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の合意に向け追い風が吹いてきた。合意の前提とされる米国の大統領貿易促進権限(TPA)法案が23日までに、米上下両院の委員会で可決され、本会議での成立に向けて前進した。交渉参加12カ国の首席交渉官会合も同日、米ワシントン近郊で開幕。TPA法案の審議進展で、知的財産など難航分野の協議に弾みが付くことが期待される。
米下院で通商政策を管轄する歳入委員会は23日、TPP交渉の合意に不可欠とされるTPA法案を、25対13の賛成多数で可決した。一方、米通商代表部のマイケル・フロマン代表(52)は23日、ワシントン市内での講演で、TPA法案審議の前進を踏まえ、農産物や自動車をめぐる日米協議に関し、「残った溝を埋める自信がある」と述べた。下院歳入委での審議では、共和党の全23議員と民主党の2議員が賛成した。
TPA法案は政府に通商交渉の権限を一任し、政府が合意内容を議会に諮る際、議会による修正を禁じる内容。上院では財政委員会が22日に法案を可決済みだ。TPP交渉では米議会が合意内容を覆すことへの懸念が阻害要因になっており、今後、法案審議は上下両院の本会議に舞台を移す。
ただし下院本会議での投票では、自由貿易協定が雇用の海外流出につながるとの見方が強い民主党の大半が反対することは確実。多数派の共和党は賛成に回るが、オバマ政権に交渉権限を一任することに慎重な一部議員は反対するとみられ、「TPA法成立には超党派の支持が必要」(ベイナー下院議長)とされる。
この日の下院歳入委での採決で、民主党からの賛成がわずか2議員にとどまったことは不安材料といえ、今後の審議には曲折も予想される。(ワシントン 小雲規生/SANKEI EXPRESS)
≪知財分野で妥協点探る 首席交渉官会合開始≫
米ワシントン近郊で23日に始まったTPP交渉の首席交渉官会合は、日米と新興国の対立で難航する知的財産分野などで妥協点を探る。26日まで4日間の日程で、5月下旬にも開催が見込まれる参加12カ国の閣僚会合に向けた道筋をつけるのが狙いだ。甘利明(あまり・あきら)TPP担当相(65)は24日の記者会見で、今回の首席交渉官会合について「非常に重要な会議だ」と強調。TPP交渉の現状に関しては、日米などの2国間が中心の関税協議に比べ、12カ国全体で話し合う知的財産や国有企業改革などルール分野の交渉が遅れていると指摘。「ルール分野が足を引っ張ることになってはならない」と述べ、進展に期待を示した。
最も難航している知的財産では、新薬データの保護期間をめぐって、有力な新薬メーカーを多く抱える米国が保護期間を10年以上にすべきだと主張し、日本も8年以上と訴えている。これに対し、ベトナムやマレーシアは保護期間の終了後に販売される安価な後発薬の普及が妨げられると反発。保護期間を3~5年に抑えたい考えとみられる。
対立解消の鍵を握るとみられるのがTPA法案だ。法案成立で合意内容が覆される懸念がなくなれば、合意機運が高まり、難航分野でも一定の歩み寄りが期待できる。
鶴岡公二首席交渉官は会合前、記者団に「TPA法案の審議の進展は歓迎すべきことだ。交渉に好影響を与えることを強く期待している」と語った。
≪5分野の関税死守要請 JA全中会長≫
全国農業協同組合中央会(JA全中)の万歳章(ばんざい・あきら)会長(69)は24日、甘利明(あまり・あきら)TPP担当相と林芳正(はやし・よしまさ)農林水産相とそれぞれ面会し、日米首脳会談を前に、TPP交渉で重要農産品5分野の関税維持を求めた衆参両院の農林水産委員会の決議を守るよう改めて要請した。
万歳会長は、両大臣に対し「(コメの輸入枠拡大などの)報道で現場は非常に心配している。(国会の)決議をきちんと守っていただきたい」と要請した。これに対し甘利氏は「これからも日本の国益を踏まえ、衆参の農水委員会の決議をしっかり受け止めながら交渉をしていきます」と説明。林氏も「決議を守ったと評価してもらえるよう、全力を尽くす」と応じた。
会談後、万歳会長は記者団に、TPP交渉で日本が検討しているコメの輸入枠の拡大について「1万トンでも2万トンでも米価変動に影響する」と述べ、反対する姿勢を強調した。(SANKEI EXPRESS)