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日米首脳会談 「新時代の同盟関係」共同声明発表へ 首相「積極的国際貢献」 にじむ決意

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日米首脳会談 「新時代の同盟関係」共同声明発表へ 首相「積極的国際貢献」 にじむ決意

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バラク・オバマ大統領(右)とともにリンカーン記念堂を訪れた安倍晋三(しんぞう)首相=2015年4月27日、米国・首都ワシントン(ロイター)  安倍晋三首相(60)は28日午前(日本時間28日深夜)、バラク・オバマ米大統領(53)とワシントンのホワイトハウスで会談。自衛隊と米軍の新たな役割分担を定めた「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の再改定を踏まえ、東アジアで軍事的緊張を高める中国をにらんだ連携を確認し、強固な同盟関係を示す。両首脳は、アジア太平洋地域や世界の平和構築に向けた関係強化で一致する見込みだ。

 会談後に戦後70年の節目に「新時代の同盟関係」を掲げた共同声明を発表。声明では日米関係について「かつての敵対国が不動の同盟国となり、ルールに基づく強固な国際秩序を構築することに寄与してきた」と評価。ガイドラインに関しては「海洋安全保障を含む事項についてより緊密な形で取り組む」と表明する。

 同時に、中国などを念頭に「力や強制により一方的に現状変更を試みることで主権や領土一体性の尊重を損なう国家の行動は国際秩序への挑戦」と強調し、日米が協力して対応していくとの認識を共有する。

 会談では、日米両政府が合意している米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古への移設を推進する方針も改めて確認する。同時に、沖縄の基地負担軽減策を加速させるよう要請し、辺野古移設に反対する翁長雄志(おなが・たけし)沖縄県知事らに配慮を見せたい考えだ。

 経済分野では、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の早期妥結を確認する。日米協議が最終局面を迎えていることを踏まえ、決着を目指すことで一致する見通しだ。

 首相は第2次政権発足後の2013年2月にオバマ氏とワシントンで初めて会談し、昨年4月にはオバマ氏が国賓として来日した。両首脳の会談は昨年11月に訪問先のオーストラリアで開いて以来。(ワシントン 峯匡孝/SANKEI EXPRESS

 ≪首相「積極的国際貢献」 にじむ決意≫

 安倍首相は2012年12月の政権復帰から急ピッチで安全保障の強化策を打ち出してきた。中国の軍事的圧力と覇権主義に対し、日本の安全保障体制があまりにも脆弱(ぜいじゃく)だったからだ。「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」再改定で自衛隊と米軍の相互性を高め、首脳会談でオバマ氏とその意義を確認し合うことは、その一里塚となる。

 対中脅威隠さず

 「中国の南シナ海や東シナ海の振る舞いに、日本を含めアジアの国が懸念を持つのも事実だ。軍事費の拡大もそうだ」

 首相は27日午前(日本時間27日夜)、米東部のハーバード大学で、学生たちを前にアジアが抱える対中脅威を隠さなかった。ハーバード大で対話の機会を得たのも、将来世界にちらばって政財官界で有力な立場を占めるトップエリートに、日本の立場を説明するだけでなく、大幅な軍拡を進める中国の現実に目を向けるよう促したかったようだ。

 首相は政権復帰から2年4カ月間で、国家安全保障戦略(NSS)の策定、国家安全保障会議(NSC)の設置、特定秘密保護法の制定-と次々に安全保障上必要な法整備に取り組んだ。昨年7月には集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈の見直しにも踏み切った。いずれも国民の生命と財産を守るための措置だが、歪曲(わいきょく)された批判もあって一時的にせよ内閣支持率も下落した。

 貧困や災害対象に

 これに呼応したのが米国だった。オバマ政権は今回の首相訪米を国賓級として迎え、リンカーン記念堂を首相とともに散策する形で個人的な関係を内外に示す演出をしてみせた。米議会が日本の首相として初めて上下両院合同会議で演説する機会を与えたのも、米国内に広く根付く韓国系住民の反発を承知のうえだ。

 これは首相がアジア太平洋地域の平和と安定に米国とともに積極的な役割を担おうとすることと決して無関係ではない。相対的な国力、軍事力の低下が予想される米国にとって、日本の役割に頼らざるを得なくなっている現状もある。

 首相はさらに先を見据えている。先の学生との対話で「日米同盟はグローバルイシュー(地球規模の課題)との戦いに、その価値を見いだすときが来た」と明言した。

 日本が得意とする援助分野である貧困や災害といった普遍的な課題を日米同盟の対象に取り入れ、日本がより積極的に国際貢献を果たしていく首相の決意といえる。(ワシントン 峯匡孝/SANKEI EXPRESS

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