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政治
「切れ目ない連携」 島嶼防衛を明記 日米ガイドライン再改定合意へ
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米国訪問の初日となった4月26日、ジョン・ケリー米国務長官(中央左)の私邸前で、出迎えを受ける安倍晋三(しんぞう)首相と昭恵夫人。右端は岸田文男外相。ジョン・ケリー氏と岸田氏は27日、外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)に出席した=2015年、米マサチューセッツ州ボストン(AP) 日米両政府は27日午前(日本時間同日夜)、外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)をニューヨークで開き、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の再改定に合意する。指針改定は約18年ぶり。日本の島嶼(とうしょ)防衛で自衛隊と米軍が共同対処することが盛り込まれるほか、日本が集団的自衛権を行使する分野として機雷掃海や米艦船防護など5分野を例示する。
日米4閣僚は2プラス2終了後、新指針が「より実効的な同盟を促進する」とする共同声明を発表。尖閣諸島(沖縄県石垣市)に関して「日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」との米政府の立場を改めて確認する。
新指針では、日本の安全を確保するための日米協力は、(1)平時(2)重要影響事態(3)日本有事(4)日本以外の国に対する武力攻撃(5)大規模災害-の分野で「切れ目のない形で行う」とする。
このうち「日本以外の国に対する武力攻撃」への対処行動は、自衛隊が集団的自衛権を行使することを想定。具体的には、(1)米艦船などのアセット(装備品など)防護(2)捜索・救難(3)機雷掃海や艦船護衛などの海上作戦(4)ミサイル防衛(5)後方支援-での協力を例示する。
また、地理的制約が事実上課せられていた周辺事態法を「重要影響事態法」に改正することを念頭に、日本有事以外で対米後方支援が必要となる事態は「地理的に定めることはできない」とする。(ニューヨーク 加納宏幸/SANKEI EXPRESS)
≪日本 対中抑止強化へ主導≫
日米両政府が27日に合意する新しい「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」は、日本が主導する形で再改定の作業が進められてきた。中国が経済成長と軍拡路線を続ける中で、米国から「見捨てられる恐怖」の比重が大きくなり、対中抑止への米国の関与を強化する狙いがある。
日本有事に関しては、中国の海洋進出に伴い強化が必要となっている島嶼防衛で、自衛隊と米軍の特殊作戦部隊が「作戦実施中、適切に協力」するなど米軍の関与を明記する。漁民に偽装した中国軍特殊部隊が尖閣諸島などの離島を占拠するケースも念頭に置いているとみられる。
空域作戦構想では新たな脅威として中国が配備を進める「巡航ミサイルによる攻撃」を挙げる。また、米側が海上自衛隊による南シナ海などでの対潜哨戒活動に期待していることを踏まえ、平時から有事に至るまで警戒監視・偵察(ISR)分野で協力することも盛り込む。
指針見直しが初めて日米間の政治課題となったのは、民主党政権下の2012年8月。その後、自民党政権下で日本側の安全保障法制に関する与党協議が遅れたため今月27日まで持ち越されていた。
日米両政府が再改定のスケジュールを遅らせてまで、安保法制整備にこだわったのは、日本の役割拡大が法的に担保されなければ、実効的な日米協力強化が図れないからだ。「今回のガイドラインの見直し作業は終始、日本国内の事情に合わせて進められた」(政府関係者)といえる。
≪米 地球規模の支援に期待≫
オバマ米政権は「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」再改定で強化される日米同盟を「アジア太平洋地域における同盟ネットワークの中心」(ローズ米大統領副補佐官=国家安全保障問題担当)と位置付け、集団的自衛権の行使を通じた日本の役割強化に期待している。軍事的な野心を強める中国、北朝鮮に対抗することが狙いだ。
米政府は2国間の同盟関係に加え、日韓、日豪など同盟国間の関係強化を重視する「同盟の近代化」(メデイロス米国家安全保障会議=NSC=アジア上級部長)を進めてきた。
米政府はアジア太平洋地域における戦略の中核を担う沖縄、グアム、ハワイ、韓国の米軍基地、米空母が攻撃される事態に懸念を強めている。中国の空母保有、対艦弾道ミサイル開発、北朝鮮による核弾頭の小型化といった戦略環境の変化は、1997年の現行ガイドラインを時代遅れのものにしており、共同作戦のための訓練や情報収集・共有が重要性を増している。その意味で、米政府は今回の再改定を受けた法整備で、自衛隊が米軍に後方支援を実施する「周辺」という地理的制約を外すことを強く期待している。
米国防総省高官は「現行ガイドラインで日本周辺に限られてきた日米協力の地理的制約が取り除かれ、地球規模に拡大することは極めて重要だ」と述べた。具体例として、米艦防護、米本土に向かう弾道ミサイルの迎撃、国連平和維持活動(PKO)などの分野での協力を具体例に挙げた。(ニューヨーク 加納宏幸/SANKEI EXPRESS)