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首相会談求める翁長氏の真意

 菅義偉(すが・よしひで)官房長官(66)と沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事(64)による5日の初会談は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐって双方が主張を譲らず、「平行線」に終わった。翁長氏は政府の辺野古移設方針をなじり、両氏が一致したのは今後も協議を継続することだけだった。翁長氏はこの場で安倍晋三首相(60)との会談を要求したが、何を見いだそうとしているのかは判然としない。

 官房長官とは「平行線」

 会談が行われた5日午前。那覇市内のホテル近くには数百人規模の辺野古移設反対派が集結していた。

 「頑張れ、頑張れ、翁長」

 翁長氏を乗せた乗用車が反対派の前を通ると、翁長氏は車の窓を開け、手を挙げて歓声に応えた。翁長氏は昨年11月の知事選で、辺野古移設に向けた政府の埋め立て申請を承認した仲井真弘多(なかいま・ひろかず)前知事(75)を破った。その原動力となった辺野古反対派の声援を背に、菅氏が待つ会場に入った。

 会談で菅氏は、日米同盟の抑止力を維持した上で普天間の危険性を早期に除去するためには、「辺野古移設は唯一の解決策だ」と理解を求めた。これに対し翁長氏の態度は苛烈を極めた。

 「危険除去のために(代替施設を)沖縄が負担しろという話をすること自体が日本の政治の堕落だ」

 「官房長官は(辺野古移設の工事について)『粛々』という言葉を使うが、問答無用の姿勢だ」

 これに菅氏は何度も「うん」「うん」とうなずきながら、ひたすら「聞き役」(菅氏)に徹した。そして帰京後の6日の記者会見では、辺野古移設の作業を「粛々と進める」との表現を今後は用いないと明言した。

 辺野古移設「賛成」の民意は

 それでも、安倍政権の方針が辺野古移設と普天間の早期運用停止なのは変わらない。菅氏は6日のBSフジ番組で、辺野古以外に移設先を検討する選択肢は「ない」と断言した。

 一方、批判を繰り広げてきた翁長氏も、菅氏らが求める普天間の「危険除去」についての代案は示さないままだ。森本敏(さとし)元防衛相(73)は同じ番組で「日米安保をどう考えるかは政治、国、沖縄の責任でもある」と指摘した。尖閣諸島(沖縄県石垣市)の周辺は中国公船が執拗(しつよう)に領海侵犯を繰り返し、南西地域は日本政府が防衛を強化する対象になっている。

 翁長氏は昨年の知事選で、仲井真氏との政策の違いは辺野古の「埋め立て承認」だけだったと断言した上で「辺野古反対は県民の圧倒的な考えだ」と政府に迫っている。しかし、仮に翁長氏が主張するように、争点が「埋め立て承認」に限定されたとすれば、仲井真氏に投じた「民意」をどう受け止めるのか。翁長氏の約36万票に対し、仲井真氏は約26万票を獲得した。仲井真氏の得票数は、辺野古移設を望む声が決して少なくないことを示しているとも解釈できる。

 森本氏は「平行線になっている理由は、必ずしも同じ次元で議論がされていないからだ」と指摘する。「抑止(力)をどう考えるのか。国は国、県は県の立場から本音で話し合い、対話の内容がより実質的になるのが期待される。それがこれからの目標だ」と求めた。

 翁長氏が首相との会談を求めた理由は明らかではない。沖縄県では毎年6月23日に沖縄全戦没者追悼式が開催される。首相が主席するのが通例で、これにあわせて翁長氏と会談することが見込まれるが、ただ首相に会い、自らの主張を繰り返すようなら、政治的パフォーマンスとのそしりは免れない。(峯匡孝/SANKEI EXPRESS

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