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【第3次安倍内閣発足】「最大の壁」安保審議へ多難の船出

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【第3次安倍内閣発足】「最大の壁」安保審議へ多難の船出

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官邸に入る中谷元(なかたに・げん)・元防衛庁長官。江渡聡徳(えと・あきのり)氏に替わって防衛相に起用された=2014年12月24日午後、首相官邸(早坂洋祐撮影)  安倍晋三首相(60)は24日、第3次内閣を発足させ、憲法改正を視野に入れた長期安定政権に向け、再び歩みを進める。衆院選で与党を圧勝に導き、順風満帆な再出発を切ったかに見える首相だが、眼前には国内外の政治課題が山積している。首相は前途多難の荒波にどう立ち向かうのか。

 原発再稼働に批判

 「勝利の喜びに浸るのは今日で過去のものとしなければならない。道は平坦(へいたん)ではない。困難な課題も待っている。しかし、力を合わせれば必ず乗り越えていくことができる」

 衆院本会議の首相指名選挙の前に開かれた自民党両院議員総会。首相は衆院選圧勝の余韻を振り払い、挙党一致で事に臨むよう所属議員に呼びかけた。

 首相が直面する最大の壁は、来年4月の統一地方選後に訪れる。集団的自衛権の行使容認を含む安全保障法制の国会審議だ。首相は今年7月1日の閣議決定で憲法解釈の見直しに踏み切ったが、自衛隊の行動を定める自衛隊法や朝鮮半島有事を想定した周辺事態法など関連法を改正しなければ、自衛隊は動けず実効性を伴わない。

 対する民主党など野党は閣議決定の撤回を強く求める構えだ。事実を歪曲(わいきょく)した批判にさらされ、内閣支持率を一時的に急落させた特定秘密保護法の二の舞いにならないよう手立てを講じなければならない。

 衆院選で国民の信任を得た政権の経済政策「アベノミクス」も正念場を迎える。4月の消費税率8%引き上げ以降は、景気のもたつきが深刻になっている。7~9月期の国内総生産(GDP)改定値は年率換算で実質1.9%減と市場予測を大きく下回った。

 首相は2017年4月に消費税率を10%に引き上げると明言している。待ったなしの財政健全化には避けて通れない消費税再増税だが、それに耐えられる強い経済に立て直すことができるのか手腕が問われる。

 また、九州電力川内原発など原発再稼働の判断も相次いで予定されるが、いかに安全性の重視を強調したところで、反対派から批判を浴びることは避けられない。

 外交でも課題山積

 首相が得意とする外交も一筋縄ではいかない。北朝鮮による拉致被害者らの再調査については「年内」(菅義偉(すが・よしひで)官房長官)としてきた北朝鮮側の報告時期は見通しが立っていない。このまま北朝鮮側が交渉を引き延ばせば、政権へのダメージが生じかねない。

 今年11月に中国の習近平国家主席(61)とは首脳会談を実現させたものの、対中関係は微妙なままだ。韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領(62)は対日批判を繰り返し、関係改善にはなお紆余(うよ)曲折が予想される。ウクライナ情勢をめぐり、日米欧が経済制裁を発動しているロシアとの北方領土返還交渉も課題として残っている。

 こうした難問山積の情勢を踏まえ、首相は円安対策を柱とした経済対策や2015年度予算案の編成を円滑に進めるため、全閣僚を再任するつもりだった。だが、9月の内閣改造で防衛相兼安全保障法制担当相に起用した江渡聡徳(えと・あきのり)氏(59)の中谷元(なかたに・げん)・元防衛庁長官(57)への交代を余儀なくされた。

 江渡氏は調整力が高く、防衛省内の信頼も厚かった。自身の抱える政治資金問題については「どう説明すれば野党は納得するのか」とたびたび周囲に漏らしていたが、「安保法制論議に遅滞があってはならない」と再任固辞を決断。首相は慰留したが、江渡氏の意志は固かった。江渡氏の周囲は「首相に迷惑をかけるわけにはいかないからだ」と推し量る。

 首相周辺も「大事を控え、つまずきは事前に取り除かれるべきだ」と解説した。(峯匡孝/SANKEI EXPRESS

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