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【安倍政権考】拉致問題 北の「はぐらかし」続く

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【安倍政権考】拉致問題 北の「はぐらかし」続く

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12月8日、拉致被害者の早期救出を願う政府主催のコンサートが開かれ、横田滋さん(右端)、早紀江さん夫妻や曽我ひとみさん(左端)らも駆け付けた=2014年、東京都渋谷区(栗橋隆悦撮影)  安倍晋三首相(60)が衆院選の遊説で全国各地を奔走する中、政権が最大の政治課題と位置付ける拉致問題に関する動きもひそかにあった。北朝鮮側は11月下旬、北朝鮮で埋葬された日本人遺骨問題の進展を図るため日本国内で開催されるシンポジウムに研究者を出席させることを検討し、拉致に関与した疑いのある「よど号」犯からの聴取も実施した。ところが、日本側からすれば、これらは拉致問題解決への誠意ある対応と受け取れるものではなかった。

 遺骨巡る日朝攻防激化

 10月下旬の2日間、平壌で行われた日本政府代表団と北朝鮮の特別調査委員会との協議は計10時間半にわたった。その間、日本は100を超える質問を北朝鮮にぶつけ、いくつかの回答が得られた。政府高官は「マスコミにはほとんど漏れていないが、協議を受け北朝鮮が思惑を持って動き出している」と指摘した。

 日朝関係者によると、現地で遺骨調査を進めてきた朝鮮社会科学院歴史研究所のチョ・ヒスン所長が11月、来日を模索していた。“来日”期間中には、関西地方の大学などでシンポジウムが開催され、終戦前後に現在の北朝鮮で死亡した日本人の遺族による墓参を支援してきた民間団体「朝鮮北部地域に残された日本人遺骨の収容と墓参を求める遺族の連絡会」(北遺族連絡会)が参加者を募っていた。連絡会の活動は朝鮮総連が支援しており、チョ氏の出席が見込まれていたが、結局チョ氏の来日はなかった。

 なぜか。遺骨問題については、外務省の伊原純一アジア大洋州局長(58)が9月下旬、中国・瀋陽での日朝協議で拉致問題解決に向けた“誘い水”として「日本政府の事業で行うことを検討している」と明言。北朝鮮は10月下旬の平壌での協議で「埋葬されている遺骨、埋葬地への全面的調査を実施した」と伝達していた。

 だが、日本政府は北朝鮮に拉致被害者の調査報告を最優先で実施するよう求めており、遺骨問題が進展しても安易に合意できない事情があった。チョ氏の来日を許せば、拉致問題をなおざりにして遺骨問題をクローズアップする北朝鮮のプロパガンダ(宣伝)工作が日本国内で展開される危惧があったわけだ。

 政府は遺骨問題の議論が衆院選に影響を与えることも危惧し、チョ氏の来日ビザの発給を認めなかったとみられる。

 よど号犯聴取は“ポーズ”?

 また、北朝鮮の調査委は11月、日航機「よど号」を乗っ取り、北朝鮮に渡った元共産主義者同盟赤軍派メンバーらを聴取していた。

 北朝鮮には現在、メンバー4人と妻2人が滞在している。このうち魚本(旧姓・安部)公博容疑者(66)とメンバーの妻2人について、日本の警察当局は欧州での日本人拉致事件に関与した疑いがあるとして、結婚目的誘拐容疑で国際手配している。

 日本政府は魚本容疑者ら3人の身柄引き渡しを求めてきたが、北朝鮮は無視し続けてきた。このため、「今回の聴取は、よど号犯が拉致に関与していないということを証明するためのポーズに過ぎないのではないか」との疑念もくすぶる。

 菅義偉(すが・よしひで)官房長官(66)は10月31日の記者会見で、北朝鮮による拉致問題再調査の最初の通報について「常識的には年内」と発言した。だが、平壌での協議で北朝鮮側は期限に関して言及していなかったため、外務省幹部は慌てふためいた。

 そもそも北朝鮮は「夏の終わりから秋の初め」とした1回目の報告をほごにしている。年内報告が実現しなければどうなるか。安倍首相は北朝鮮政策について「対話と圧力」を信条としてきた。拉致問題をはぐらかされれば、理論上は北朝鮮への経済制裁の再発動が現実味を帯びることになる。果たして「圧力」強化に傾くのか、衆院選後の首相判断が注目される。(比護義則/SANKEI EXPRESS

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