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【安倍政権考】「冷遇」ではなく真意測れない 沖縄問題で苦悩と期待の官邸
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山口俊一(しゅんいち)沖縄北方担当相(右)と握手する翁長雄志(おなが・たけし)沖縄県知事=2014年12月26日、東京都千代田区永田町(共同) 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐる安倍晋三政権と翁長雄志(おなが・たけし)沖縄県知事(64)の亀裂は、いまだ深いままにある。翁長氏は安倍首相(60)や、沖縄基地負担軽減担当の菅義偉(すが・よしひで)官房長官(66)との面会を模索するが、2人は応じようとしない。仲井真弘多(なかいま・ひろかず)前知事(75)とは蜜月関係を築いていた官邸側は、翁長氏の政治手法に強く不満だからだ。
2015年度予算案が閣議決定された14日夕、翁長氏は知事就任後、初めて首相官邸に足を踏み入れた。会談相手は事務方トップで政府の沖縄連絡室長を兼ねる杉田和博官房副長官(73)。首相や菅氏ではなかった。
「私も選挙で訴えてきたことがあるので…」
翁長氏は、政府が5年ぶりの減額となりつつも、3339億円の沖縄振興予算を計上したことに謝意を示した。同時に、辺野古への移設反対を強調することも忘れなかった。杉田氏は「機会を設けて真摯(しんし)に意見交換しましょう」と引き取ったが、会談時間は10分程度だった。
翁長氏が知事として上京するのは、これで3回目。閣僚では山口俊一(しゅんいち)沖縄北方担当相(64)が面会に応じているが、首相サイドは翁長氏との話し合いは「事務的にやるしかないので、事務方が応対すればよい」というスタンスを取っている。
これに対し、沖縄の地元2紙は社説で政権の姿勢を激しく非難する。
「知事との会談拒否 県民との対話閉ざすのか」(琉球新報)
「続く沖縄冷遇 品位のない対応を憂う」(沖縄タイムス)
両紙は、首相らが翁長氏と会わないのは、辺野古移設に反対する翁長氏への「嫌がらせ」などとして県民世論をあおり立てている。ちなみに、菅氏は一昨年4月、沖縄2紙を含む地元のメディアを個別訪問した。安倍政権への理解を得るねらいがあったが、現状を見ると成果はないといわざるをえない。
翁長氏が官邸に約束を取り付けないまま上京しても、首相や菅氏が面会しない限りは「沖縄冷遇」となる。「翁長氏は地元紙の報道を意識して、政権を一方的に悪者に仕立て上げる政治的なパフォーマンスをしている」と政府関係者は憤りを隠さない。昨年12月の前回衆院選で、自民党公認候補は沖縄の全4選挙区で敗れた。翁長氏は辺野古移設に反対する野党候補の支援に回っていた。
官邸サイドの翁長氏への不満はそれだけではない。辺野古移設に反対といいながら、普天間の危険性除去についての言及を避けている。
菅氏は、昨年の県知事選の前から「どういう形で危険除去をするのか県民に説明する義務が当然ある」と翁長氏を批判していた。今月9日のBSフジ番組では翁長氏と会うタイミングについて「政治判断が必要なときは会わなければまずいと思うが、今はまだその段階ではない」と語った。「危険性除去」の回答を出すのが前提という立場だ。
また、政府は仲井真氏の埋め立て承認を受けて、辺野古移設に向けた工事を粛々と進めることにしている。だが、政府筋が「知事と官邸が反対を向いていても解決しない」と指摘するように、普天間問題を進展させる上で、翁長氏との関係を放置できないのは事実だ。また、翁長氏はかつて、自民党県連幹事長だった。
官邸サイドには、翁長氏に強く出られない苦悩と、翁長氏の「転向」への期待とが交錯している。要は翁長氏の真意を測れずにいるのだ。官邸サイドが沖縄に足を運ばないと進展は期待できないのか。逆に反対派を勢いづかせ、事態を膠着(こうちゃく)させるリスクはないのか。沖縄問題の司令塔を担う菅氏は、ただ座しているだけではないだろうけれど…。(峯匡孝/SANKEI EXPRESS)