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政治
林文子・横浜市長に直撃インタビュー(上) 仕事の基本は「人」 民間も行政も同じ
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学生記者のインタビューを受ける林文子(はやし・ふみこ)横浜市長=2015(平成27)年、神奈川県横浜市(中西裕人撮影)
統一地方選挙の前半戦が(2015(平成27)年)4月12日投開票日を迎えた。若者の政治に対する、特に地方自治に対する関心の低さを背景に、投票率の大幅な低下が懸念されている。そもそも市町村の首長は私たちの生活に直結する最も身近な存在だ。大学生向けの実践型ビジネススクール「高師塾」の学生記者2人が、民間企業での経験を生かして地方自治の変革に挑んでいる横浜市の林文子市長に直撃インタビューを行った。
□今週のリポーター 有志学生記者 山本聖(慶応大学2年)さん、石川俊さん(日本大学3年)
――多くの学生が、「市長」の仕事について知らないのが現状だと思います。いったいどんな仕事なんでしょうか。民間企業から市長になって驚いたことや、生活面で変わったことも含めて教えてください
「私は高校卒業後、18歳で働き始め、市長に就任する前の10年余りは民間企業の経営に携わっていました。市長になってまず驚いたのは、その業務の奥深さ、幅広さ、そして分刻みのスケジュールです。自治体の仕事は、ごみの収集や保育所の整備といった福祉や教育など、市民の皆様一人一人の生活に密着したきめ細かな事業から、世界の潮流をいち早く捉え、都市の成長戦略を描き実行していくといったダイナミックなものまで、多岐にわたっています。そのトップとして、繊細かつ大胆な判断と都市経営のセンスが求められ、大きなやりがいと醍醐味(だいごみ)を感じています。さらに市長になって実感したことは、職員のやる気を引き出し、チームとして最大の成果を挙げていくというマネジメントの基本は、民間も行政も違いがないということです。すべての基本は『人』であり、トップと職員の間に信頼と共感がなければ組織は成り立ちません」
――民間と行政で違う点はありますか
「文化の違いには戸惑いました。そもそも、自治体の仕事は法律や条例にのっとって進められるので、公平性や正確性を期するあまり、感情豊かに生きる『人』に寄り添う意識が弱いとも感じました。そして、市役所の仕事はできて当たり前。スポットライトが当たることも少ないですし、お褒めの言葉をいただくことも多くありません。そこで、私はできる限り現場を回り職員とコミュニケーションを取ることを大切にしてきました。職員のモチベーションを高め、組織を活性化し成果を挙げる、リーダーシップが重要だと実感しています」
――企業経営との違いはありますか
「民間企業は社会のニーズを読み取り、お客さまにより良い商品やサービスを提供することで収入を得て、次なる投資につなげていきます。これに対し、自治体は、先に想定される歳入があり、それをどのように配分し、執行していくかという考え方が基本です。計画(Plan)を立て、実行(Do)し、想定通りの成果が得られなかった場合、なぜできなかったのか、どうすればできるのかをきちんと検証(Check)し、次の行動に生かす(Action)という、PDCAサイクルが民間より弱いと感じました。そこで、役所の『待ち』の姿勢を改め、PDCAサイクルを回すマネジメント手法を取り入れました。そして、相手のニーズや要望に寄り添い、職員自らが積極的に現場に出ることで、市民をはじめ、企業や団体の皆様とより良い関係をつくるようにしています。
私にとって『営業』は、現場に出て、信頼関係をつくること。それまで行政にはなかった営業マインドを持ち込み、『現場主義』『おもてなしの行政サービス』を徹底しました。行政の良いところを尊重しつつ、私が民間企業で培った経験を生かしていくことは大きなやりがいです。職員が課題に前向きに取り組み、『市長、何とかやり遂げました』と報告してくれる瞬間は、言葉では言い表すことのできないほどうれしいです」(今週のリポーター:有志学生記者 山本聖(慶応大学2年)、石川俊(日本大学3年)/SANKEI EXPRESS)