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世界の家庭料理巡り 中東&アフリカ編(上) エジプト国民食と犠牲祭に衝撃

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世界の家庭料理巡り 中東&アフリカ編(上) エジプト国民食と犠牲祭に衝撃

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カイロ大学で日本語学科の学生たちと交流する筆者(斎藤悠輔、左から3人目)=2014年10月2日、エジプト・首都カイロ(獨協大学_有志学生記者、斎藤悠輔提供)  【Campus新聞】

 世界各国の家庭料理のレシピを収集し日本で多国籍居酒屋を開業しようと、世界一周の旅を続けている獨協大学4年の学生記者、斎藤悠輔さん(23)から第4弾のリポートが届いた。北・中・南米、欧州に続き訪れたのは中東・アフリカ地域。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」による日本人人質事件が起き、治安が著しく悪化している国が少なくない。人質事件発生前にエジプト、ヨルダン、イスラエルを訪れた後、一時帰国した斎藤さんは、現地でイスラム教の異文化に直接触れ、これまでの価値観が大きく変わるような衝撃を受けたという。料理を通して見て感じたことを伝える。

 □今週のリポーター 獨協大学 有志学生記者 斎藤悠輔さん

 中東・アフリカ訪問は、エジプトから始まった。入国して最初の朝。コーランの祈りで目が覚め、街にはイスラム教の戒律に従った服を身にまとう女性が歩いている。しみじみと異国情緒を感じた。

 イスラム諸国では、食文化と宗教は切っても切り離せない。ムスリム(イスラム教徒)は、戒律で許された「ハラル」と呼ばれる食べ物しか口にできない。豚肉と酒などは「ハラム」と呼ばれ、固く禁じられている。

 ずらり並ぶ炭水化物

 エジプトの国民食で、“ソウルフード”といえるのが「コシャリ」だ。見た目もかなり衝撃的なこの料理は米、マカロニ、パスタ、レンズ豆、ひよこ豆の炭水化物のオンパレードに、フライドオニオンを混ぜ、トマトソースで味付けしたもの。

 町中にコシャリ屋さんがあり、値段は100円くらいと格安。いろいろな店を食べ歩いてみたが、店によって味が異なる。日本の牛丼のようにテークアウトもできる。

 具とトマトソースをかき混ぜ、さらに店内のテーブルに置かれている調味料のビネガーとチリソースをかけて食べる。ごちゃ混ぜで見た目は良くないうえ、とびっきりおいしいというわけではないが、なぜかやみつきになる。1週間毎日食べ続けたほどだ。ただ、炭水化物が多すぎて消化が悪いからか、辛いチリソースをかけすぎたせいか、下痢が2週間続いた。

 豚肉が禁じられているエジプトで主に食べられているのが、鶏肉料理だ。鶏肉に関しては、日本よりもおいしく感じた。街の精肉店では、その場でしめた鶏の肉を店先に並べている。調理は、炭火焼きが一般的。新鮮な肉を炭火で焼くのだから、おいしくないわけがない。

 酒が禁じられているので、ナイトライフはカフェが中心。メニューは充実していて、レモンミントジュースがお気に入りになった。

 街の道路が血まみれ

 エジプト訪問は、ちょうどイスラム教の宗教的な祝日である「犠牲祭」の時期に重なった。ムスリムは期間中に、羊1匹をいけにえとしてささげるのだが、それぞれの家の前で羊をしめるため、街の道路が血まみれになるという、日本人にはかなり刺激的な行事だ。

 私たち日本人は工場で処理され、スーパーに並べられた肉を買って食べている。単なる食料にすぎないと錯覚してしまうが、私たちが食べているのはまぎれもなく、私たち人間と同じ命ある生き物だ。犠牲祭の光景を見て、改めて命の犠牲によって生かされているのだとつくづく実感することができた。

 エジプトでは、現地の人から「君の宗教はなんだ?」とよく聞かれ、戸惑った。日本の生活で宗教を意識することはほとんどなかったからだ。

 またカイロ大学を訪ね、日本語学科の学生と交流する機会も得た。一緒にフットサルを楽しみ、カフェでさまざまな問題について語り合った。印象に残っているのは、彼らが政治や宗教についてしばしば議論することだ。政治に関心がないといわれる日本の若者に比べ、彼らの政治への意識は格段に高いと感じた。

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