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社会
絆つなげ 宮城の「今」を聞く(上) 被災地に根差し復興に貢献
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海中のがれきの撤去活動を続けるダイビングショップ「High_Bridge」の高橋正祥さん=2013(平成25)年3月9日、宮城県石巻市(中央大学_有志学生記者撮影)
2011(平成23)年3月11日の東日本大震災からまもなく4年。大学のキャンパスでは、震災直後に被災地でボランティアの担い手となった学生たちのほとんどが卒業してしまうことになる。被災地以外での震災の風化が大きな問題となるなか、大学でも後輩たちに被災地との「絆」をどうつないでいくかが課題になっている。中央大学FLPジャーナリズムプログラムの松田ゼミに所属する学生記者たちが宮城県を訪ねた。
□今週のリポーター 中央大学 有志学生記者
≪「High Bridge」経営 高橋正祥さん 美しい海取り戻し、遺族に見てほしい≫
「水中のがれきは、まだ100分の1も片付いていない」。そう語るのは、宮城県石巻市でダイビングショップ「High Bridge」を経営する高橋正祥さん(35)だ。地震や津波による被害が甚大だった石巻の街も今では、がれきは見受けられない。しかし、海に潜ると、今も多くのがれきが放置されたままになっている。昨年(2013(平成25)年)8月にも車が6台発見された。
高橋さんはダイビングを教えながら、作業ダイバーとしてがれきの撤去活動を続けている。きっかけは震災直後にがれき撤去のボランティアに参加したこと。地元の宮城県の復興に少しでも貢献したいと、2014年4月に実家のある仙台市から石巻市に移り住み、ダイビングショップを起業した。
震災から4年近くがたち、国の復興予算が十分ではなくなり、がれきを見つけて撤去しても処理をしてくれないなど、行政や法律の壁が、障害になっているという。一方で、民間の手で海をきれいにしていこうとする態勢が整いつつある。震災以前、地元にはダイバー資格取得者が少なかったが、今では高橋さんの下で学び、毎年約30人の資格取得者が誕生している。地元ダイバーの育成は、震災以前の海に戻すことを助けるだけでなく、ダイバー同士や密漁を心配する地元漁師とのコミュニティーの形成につながり、長期的な海の再生への一歩を踏み出した。
親潮と黒潮の出合う宮城沖の海は、「世界三大漁場」の一つである。震災直後は真っ黒で、ほとんど魚がいなくなった石巻の海も、ボランティアの地道な努力でがれきを撤去できた場所には藻が生え、魚も戻ってきたという。
「美しい海を取り戻し、海で亡くなった犠牲者の遺族に見てもらいたい。今はまだ恐怖で海に来られない人が克服できたとき、きれいな海だと言ってもらいたい」。高橋さんは、そんな強い信念を持ち、活動を続けている。
≪「ISHINOMAKI 2.0」代表理事 松村豪太さん 関係強めて「バージョンアップ」≫
石巻には震災後にボランティアとして訪れ、それが縁となって移住した人もいる。石巻を震災前に戻すのではなく、新しい街にバージョンアップさせるというコンセプトで活動している「ISHINOMAKI 2.0」の代表理事、松村豪太さん(40)は「石巻の人の魅力が影響しているもしれないですね」と話す。外部の人を歓迎する雰囲気があるというのだ。しかし、もともと外部の人をもてなすことが得意な街だったわけではない。震災をきっかけに街の人が変わったという。
「震災後の最初の1年間で、石巻だけで延べ28万人のボランティアが来てくれた。献身的に見返りを求めず、泥だらけになって助けてくれたから、街の人も外部の人とうまく付き合えるようになったんじゃないかと思います」
それでも、石巻に移住する人の数は、街を出ていく人の数に追いつかないのが現状だ。震災前に16万人だった人口は、15万人を切った。街を活性化し復興を進めていくには、石巻に人を呼び込む必要がある。ただ、石巻には足を運んでもらえるほどの名所や名産品が少ないのが現状だ。
そこで松村さんは、石巻を“観光地”ではなく“関係地”にすることを目指している。「昨年行ったあそこは今年はどうなってるかなと思ってもらえるような、繰り返し来てもらえる場所にしたい」と言う。そうした「関係」を強くする上で資源となるのが地元の人たちだ。「街のことを自分たちが積極的に自慢できるような雰囲気になったら、外の人も行ってみたいと思う街になる」
住宅の建設といった面で石巻の復興は当初の計画より大きく遅れているという。それでも、「今までいなかった人が街を歩くようになっているとか、今までは出てこなかったような発想が街の人から生まれたりとか。そういう面では、復興どころか進化していると思う」。震災をきっかけに、石巻は確実にバージョンアップしている。(今週のリポーター:中央大学 有志学生記者/SANKEI EXPRESS)
中央大学 有志学生記者
〈取材・記事・写真〉
印南夏子、赤木美日、島村裕美、甲斐稔理、平塚瑞穂、田中瑞穂、宮澤絵理、高木伸代