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小児がん専門医療施設「チャイケモ」(上) 家族と生活「当たり前」を病院でも
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神戸市中央区の神戸ポートアイランドに日本初の小児がん専門医療施設「チャイルド・ケモ・ハウス」(略称「チャイケモ」)がある。小児がんの子供とその家族が、自分の家にいるのと同じように一緒に暮らしながら治療を受けられるのが、最大の特徴だ。チャイケモで小児がん経験者としたサポート活動をした経験のある高千穂大学経営学部1年、佐藤崇宏さん(21)が、学生記者として取材で訪ねた。
□今週のリポーター 高千穂大学 有志学生記者 佐藤崇宏さん
2013年3月、神戸ポートアイランドの一角に、日本で初めての小児がん専門医療施設が完成した。名前は「チャイルド・ケモ・ハウス」(以下チャイケモ)。チャイケモは小児がんの子供と、その家族のQOL(Quality Of Life=生活の質)に配慮した施設だ。
「チャイルド・ケモ・ハウス」の「ケモ」は、化学療法を示す単語「Chemotherapy(ケモセラピー)」に由来している。化学療法とは、抗がん剤を投与して、がん細胞を減らす治療だ。それぞれの患者に合わせた治療計画が組まれるが、現在ではいずれかの段階で化学療法を行うことがスタンダードになっている。その治療は最低でも半年、長い場合だと2年以上入院して行われることもまれではない。
その治療は、患者の子供にとって「我慢」の連続だ。多くの病院では入院中、ベッドとその周囲にわずかなスペースしかない狭い病室での生活を強いられる。家族と一緒に過ごすことも制限される。大部屋では、カーテンで仕切られただけのすぐ隣に他の患者がいて、プライバシーなどほとんどない。ここに挙げた我慢は、ほんの一部に過ぎない。長期に渡る入院生活の中で、患者の子供たちは治療しながら、育っていかなければならない。
チャイケモが従来の病院と根本的に違うところは、患者の子供とその家族がともに過ごすことを前提にしている点だ。チャイケモの病室は、一般的なマンションの部屋のようだ。自分の家と同じように料理ができるキッチンがあり、冷蔵庫も備え付けられている。家族が24時間滞在できるスペース、ユニットバス、トイレ、そして、ふかふかのベッドが全19部屋のそれぞれに完備されている。病室か家かと問われれば、誰もが迷わず家と答えるだろう。
それぞれの部屋には2つの入り口がある。一つは病院施設につながるドア。そしてもう一つは、病院の外とつながるドアだ。家族は、このドアからいつでも気兼ねなく出入りすることができる。
父親や母親が仕事を終え、一般的な病院であれば面会時間を過ぎているような遅い時間でも、「家」に帰宅し、子供の顔を見ることができる。会えないから会いたくなる。いつでも会えるということが、子供と家族の精神的な負担を大きく減らす。自分の家で当たり前にできることを、チャイケモでも当たり前にできる。安心して治療を受けられる病院と、自由に暮らすことができる家の両立を目指した施設がチャイケモなのだ。(今週のリポーター:高千穂大学 有志学生記者 佐藤崇宏/SANKEI EXPRESS)