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「食べる幸せ」届けるサークル(下) 学生の食育普及へ「発信力」高める

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「食べる幸せ」届けるサークル(下) 学生の食育普及へ「発信力」高める

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子供たちと一緒に野菜スタンプのランチョンマットを作るメンバー=2014(平成26)年(お茶の水女子大_「Ochas」撮影)  【Campus新聞】

 私は大学1年の時から他の食物栄養学科の学生と同じように、Ochas(オチャス、お茶の水女子大学の学生有志による公認サークル)に所属していた。ただ、「食べる幸せを届ける」というサークルのテーマとは裏腹に、自身の学びの場にとどまっていた。活動の対象が主に学内向けだったこともあり、積極的には取り組んでいなかった。2年になってからは環境問題に取り組むNGOの活動にやりがいを求めたり、他の食育活動に参加したりした。

 そうした外部での活動の中で、多くの人たちが「食」に対する問題意識を持ち、さまざまなアプローチで活動していることを知った。自分の活動の原点も「食」にあると再認識すると同時に、栄養学や食育について学んでいるにもかかわらず、実践で生かせていないと痛感した。そんな2年生の秋、Ochasの副代表をやってみないかとの誘いがあった。

 渉外役で手応え

 それまで積極的に活動してこなかった私に貢献できることは何だろう。学外の他団体とのつながりを作る「渉外」なら役に立てると考えた。

 学外には、Ochasのような栄養学的なアプローチだけでなく、農業援助や食育フリーペーパーの発行といった多様なアプローチで活動を行っている団体が数多くある。学外の団体を知っているOchasのメンバーは少なく、外部との懸け橋や踏み台になればと思い、まずは他団体の情報をメンバーに紹介することから始めた。最初はメンバーの反応はあまり良くなかったが、最近は外部との連携に積極的になってきた。同じフィールドで活動する学生らと交流することが刺激となり、自分たちの活動を再確認する機会にもなっている。「外部のことを知ってもらうことは正解だった」と手応えを感じている。

 1年生も販売員経験

 副代表に就任した直後、2014年5月に新宿高島屋で開かれる「大学は美味しい!!」フェアへの出店が決まり、統率を任された。フェアへの出店は3年ぶりで、ほとんどゼロからのスタートだった。

 Ochasは食物栄養学科の学生はほぼ全員が参加しているうえ、他のサークルの活動に力を入れているメンバーも多いため、胸を張って「Ochasに所属している」と言える学生は少ないように感じていた。活動の幅広いこともあり、Ochasで開発した商品について詳しく説明できる学生はそれほど多くはないというのが実情だった。

 そのため、フェアではなるべく多くのメンバーが携われるように心がけた。下級生に準備作業を割り振り、入学間もない1年生にも当日の販売員を経験してもらった。その時の気づきを次の販売員に引き継いだり、さらに来年へとつなぐ機会を設けたりして、下級生が主体性を持って取り組めるようにした。

 その結果、商品への愛着が深まったはずだ。「また出店したい」。メンバーからそんな意欲的な声があがり、意識向上という点でも大成功だったと感じている。

 まだまだ偏食多い

 これまで学外にばかり目を向けていたが、足元の学内での取り組みの大切さを痛感している。最近気づいたのだが、お茶大の女学生にも食べ物が偏っている人が多い。学食ではガッツリな丼ものがズラリと並ぶ。

 Ochasのメンバー150人の意識を高め、さらに学内2000人に食べることの大切さや楽しさといったメッセージを伝えることができたら、それこそ十分な学生に対する食育の普及活動になるのだと気づいた。そこから、大学がある地域へと広げていくことができればと考えている。

 そのためにも、「実践」に加え、「発信」が重要になる。メンバーの伝える力を高める取り組みがこれからの課題だ。

 外部にはSNSを通じた発信をさらに積極化。学内向けでは、「食のプレゼン」の聴講や学食での「TFT活動」への参加を呼びかけるなど、メッセージ性のある活動に取り組んでいきたい。

 Ochasはあくまでサークルであり、社会の問題解決を目指す学生団体ではない。そのため、自分たちの学びを深め、経験値を増やすことが一番の目的だといえる。そこに付加価値を付けて多くの人たちに伝えることができれば、それこそがOchasの目標である「食べる幸せを届ける」につながるはずだ。他大学の栄養学科サークルにはない規模を生かし、その先駆者になれたらと思う。(今週のリポーター:お茶の水女子大 「Ochas」副代表 広瀬悠/SANKEI EXPRESS

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