ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
政治
他国軍支援「例外なき事前承認」了承 国際平和法案 安保与党協議
更新
安全保障法制に関する与党協議会で挨拶する公明党の北側(きたがわ)一雄副代表。右隣は自民党の高村(こうむら)正彦副総裁=2015年4月21日、衆院第2議員会館(酒巻俊介撮影) 安全保障法制に関する与党協議会が21日、国会内で開かれ、国際平和のために活動する他国軍の後方支援を随時可能にする新法「国際平和支援法」について、「国会の事前承認に例外は設けない」とする案を了承した。例外なき事前承認は公明党が求めていたもので、自民党が早期合意を目指し譲歩した。協議会は最大の焦点だった国会承認の扱いが決着したことで、27日に実質合意する方向となった。
協議会では、国会承認をめぐり、自民党の高村(こうむら)正彦副総裁(73)と公明党の北側(きたがわ)一雄副代表(62)が取りまとめた「国会承認の在り方について」と題する案を提示。国際平和支援法に基づく自衛隊の海外派遣では、国会の事前承認を義務付けたうえで「国会閉会中の場合または衆院が解散されている場合であっても、国会を直ちに召集するなど所要の手段を尽くすこととし、事前承認に例外は設けない」と明記した。
ただし、迅速な承認手続きを図るため、衆参両院は首相から承認を求められてから7日以内に議決するよう努める努力義務規定を設けることも盛り込んだ。派遣後2年を超え、活動を継続する場合は再度承認が必要とし、その場合は国会閉会中と衆院解散時は事後承認を認めることとした。
高村氏は協議会後の記者会見で「政府から(事後承認が必要となる事例の)具体的な説明がなかった」と指摘。「説明がない以上、『民主的統制』の重要性の方にバランスを置くべきだと判断した」と述べた。
政府・自民党はこれまで「迅速性を要求される場合がある」として緊急時の事後承認を認めるよう主張していた。これに対し、公明党は「国会による歯止め策を担保すべきだ」として、例外なき事前承認を要求。政府・自民党は日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を27日に再改定することを予定しており、折り合いを付けた形だ。
協議会は27日に実質合意した後、5月11日に具体的な安保関連法案の条文を最終確認する会合を開く予定。政府は5月15日に安保関連法案を閣議決定し、国会に提出する。
≪相次ぐ「歯止め」 運用に懸念≫
21日の安全保障法制に関する与党協議会では、国際平和のため活動する他国軍の後方支援について例外なく国会の「事前承認」を必要とする案が了承された。緊急事態でも迅速な自衛隊派遣が難しくなるため自民党側には懸念も強かったが、歯止めを求める公明党への譲歩を余儀なくされた格好だ。
自民党が譲歩を迫られたのは、国会承認だけではない。2月から一時中断を挟んで続いた与党協議では、自衛隊の活動拡大に「歯止め」をかけようとする公明党に対し、自民党が譲歩し、折り合う場面が相次いだ。
昨年7月の閣議決定では武力攻撃に至らないグレーゾーン事態で米軍が攻撃を受けた場合に自衛隊が防護できるとしたが、政府は協議を通じて米軍以外にも対象を広げる方針だった。
公明党はこうした政府の姿勢に「閣議決定で盛り込まれたこと以外もやろうとしている」と反発。最終案では、物資や情報を提供し合う協定を結んでいる国のみを対象とすることに落ち着いた。このため現段階では米軍とオーストラリア軍のみが防護対象となる。たとえば、日米印3カ国の共同訓練中に米印軍が攻撃を受けた際、自衛隊は米軍のみを守ることになり、インドの信頼を損なう恐れもある。
また、政府は船舶検査活動について、船長の同意がなくても検査できるよう提案していた。これに対しても公明党は「解釈に無理がある」(北側一雄副代表)として難色を示し、政府は撤回を余儀なくされた。現行の船舶検査活動法は対米協力を念頭に置いているが、法改正により幅広い国と協力しながら船舶検査を行うことになる。船舶検査は参加国が海域を分担して行うことが想定されるため、自衛隊の担当海域が船舶検査の“穴”となる可能性も否定できない。(杉本康士/SANKEI EXPRESS)