ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
政治
【西川農水相辞任】年度内予算成立困難に 与党、早期火消し図る 野党は勢い
更新
衆院本会議に出席し、氏名標を立てる安倍晋三(しんぞう)首相=2015年2月24日午後(共同) 与野党は24日、西川公也(こうや)前農林水産相(72)が自らの政治資金問題で辞任したことを受け、2015年度予算案の審議日程をめぐる攻防を激化させた。この日質疑が見送られた衆院予算委員会は25日に再開することで合意したものの、一段と窮屈な日程になったことから政府、与党が目指す年度内の予算成立は困難な情勢となった。野党は4月の統一地方選をにらみ、閣僚の「政治とカネ」の問題を引き続き追及する構えだ。
自民党の佐藤勉(62)、公明党の大口善徳(よしのり)両国対委員長(59)らは午後、国会内で今後の対応を協議。大口氏は終了後、年度内の予算成立を目指す方針は変わらないとしながらも「タイトな日程がさらにタイトになった」と述べ、3月末までの成立は厳しいとの認識を示した。
自民党の谷垣禎一(さだかず)幹事長(69)は党代議士会で「予算審議で野党の抵抗が予想される。ダメージを最小限に食い止め、一日も早い予算の成立に協力しなければならない」と引き締めた。
これに対し、民主党の岡田克也代表(61)は党常任幹事会で「引き続き西川氏に説明責任を果たすよう求めたい」と述べ、予算委で西川氏の政治資金問題を追及していく考えを強調した。
与党内では「暫定予算を組まざるを得ない状況になりつつある」(自民党幹部)との見方が広がった。昨年12月の衆院選の影響で編成が遅れた予算案は国会提出が今月12日にずれ込んだ。年度内成立が危ぶまれていた中、西川氏の辞任で24日の衆院予算委一般質疑が取りやめとなった。
与野党は24日、安倍晋三首相(60)と全閣僚が出席する衆院予算委の基本的質疑を25日午前9時から午後2時まで開く日程で合意した。25日午後2時からは麻生太郎副総理兼財務相(74)ら閣僚が出席する一般質疑を3時間実施する。27日には予算委で集中審議が予定され、野党の追及は厳しさを増しそうだ。
「政治とカネ」をめぐる西川氏の農相引責辞任を受け、野党はにわかに勢いづいている。安倍首相の任命責任に照準を合わせる野党第1党の民主党は、維新の党との共闘を構築。敵失に乗じ、与党ペースだった国会審議の主導権確保を目指す。与党は、4月の統一地方選をにらみ内閣支持率低下や、予算審議への影響を避けようと火消しを図るが、思惑通り進むかは見通せない。
「国会でしっかり審議した成果だ。首相の任命責任もある」。岡田民主党代表は24日の党会合で、西川氏辞任という“戦果”に胸を張った。
高木義明国対委員長(69)は記者会見で「他の閣僚にも問題が出てくるのではないか」と、首相を挑発してみせた。西川氏の疑惑の追及や他の閣僚の疑惑調査を進め、首相に波状攻撃を加え、ダメージを与えるというのが民主党の戦略。目指すのは、昨年10月に看板閣僚だった小渕優子氏(41)らを「ドミノ辞任」に追い込んだ臨時国会の再来だ。
狙いはそれだけではない。野党再編に距離を置く岡田氏が代表に就いた後、溝が生じていた維新の党との共闘復活だ。細野豪志(ごうし)政調会長(43)は会見で、首相のヤジ問題に触れ「おごりが見える。野党間の協力が非常に重要だ」と秋波を送った。
維新側でも歩調を合わせる動きが出つつある。馬場伸幸国対委員長(50)は「『自民でも民主でもない改革政党』だ」と、一気に距離は縮まらないとしながらも、「ここでは野党の立場を発揮する」と強調した。
反転攻勢へ隊列を整えようとする野党に対し、与党は2015年度予算案審議への悪影響を局限化しようと懸命だ。暫定予算が現実味を増す中、「景気に冷や水を浴びせることは避けたい」(自民党筋)のが政権側の本音。国会運営でつまずけば、内閣支持率に直結し、統一地方選に響きかねないと危惧する声も与党内に漏れる。
自民党の谷垣幹事長は「党を挙げて(国会運営に携わる)党国対委員会、衆院予算委員会の現場を支える」と決意を示した。
だが、与党の思惑通りには進む保証はない。西川氏が顧問料を得た企業のリストが26日に予算委理事会へ報告される。内容次第では、事態がどう展開するかは予断を許さない。自民党幹部は真顔でつぶやいた。「一寸先は闇。本当に何が起こるか分からない」(SANKEI EXPRESS)